第二十六話 time to go!
しゅうは悩んでいた。このままくろきと付き合っていいのか。
聞けばくろきは既婚者。本人たちは互いに行き遅れて籍を入れただけと言っていたが、どんな理由があろうと、くろきが既婚者であることに違いはない。
そしてくろきはしゅうの父。義理の父で血が繋がっていないが戸籍上は親子のはず、だ。
しゅうは日々怯えていた。何らかの罪で捕まるのでは。
近親相姦とか。血は繋がってないけど戸籍上親子の者同士。くろきとの初キス後、しゅうは布団の中で泣きながら来るかもしれない逮捕状に泣いていた。結局なにも来なかったが、ごく稀に布団で怯える。
よって今日でくろきとの関係を終わらせる。
しゅうとてくろきと離れたい訳ではないが耳元でパトカーのサイレンが鳴り響く日々にお別れをする。
物事を決心する前に行動して終わらせるのがしゅう流、初彼との別れ方だ。
「しん君、しんや君、しゅうと君、しゅうや君、しや君、いってらっしゃーい!」
くろきは笑顔で五人を塾に送り出す。五人は思春期なのでくろきを無視して出て行ていく。くろきは少しフリーズして鍵を閉めた。
「二人きりだよ。話って何かな?」
しゅうの頬に口付けをするくろき。しかししゅうは別れ話がしたいので応じずそそくさとソファに座る。
「ここで?」
くろきはネクタイを外しながらしゅうの隣に座る。しゅうは眉間に皺を寄せる。
「あの、そういう気はないんです」
「え?」
呆気に取られるくろき。彼はその気で仕事を早く終わらせうるさい子供達を塾へ送り出した。
「そんなあ〜……」
くろきはしゅうの膝に転がる。
「ちゃんと座ってください! 話がしたいんです!」
しゅうは口を尖らせてくろきを叩く。くろきは返事をしながら座り直す。
「話って?」
くろきは父親スマイルでしゅうの手を握る。
「触らないでください、下心丸見え!」
しゅうはくろきから一歩離れる。くろきは不貞腐れて足を組む。
「聞くよ。話して」
しゅうは一呼吸置いて口を開ける。
「僕と、別れてください」
二人は見つめ合う。くろきが先に目を逸らした。
「なんで?」
しゅうも目を逸らした。
「近親相姦……」
「え? なんて?」
「近親相姦! に、なるから!」
くろきは固まる。
「だから、戸籍上親子の僕たちは別れないと……」
「違う」
「え? 今なんと?」
「戸籍、違う」
「は?」
しゅうも固まる。
「え? ぼ、僕たち、戸籍違うの?」
「うん」
くろきはしゅうに近づく。
「障害は無くなったね。私からもいいかな?」
「え? あ、はい」
「目、閉じて」
しゅうは突然のことに驚きながらも目を閉じてソファの上で正座になる。くろきからの話とはなんだろうか。
「いいよ」
しゅうは目を開ける。
そこには小さな箱を開けて床に膝をついているくろきがいた。
「うそ……指輪?」
しゅうは息を溢した。
「そうだよ。本当はピロートークでもしながら渡そうと思っていたんだが……今しかないと思って」
くろきはしゅうの左手を取って薬指に指輪を付ける。
「ぴったり……でも、指輪なんかしてたら兄弟たちに気づかれるんじゃ?」
「大丈夫」
そう言ってくろきは何もついていないネックレスを出した。
「服の下なら問題ないだろう?」
しゅうから指輪を取ってネックレスに通し、しゅうの後ろに回って付ける。
「似合うよ」
くろきはしゅうのうなじにキスをする。しゅうは指輪を触り口角を上げる。
「ありがとうございます、くろき」
「喜んでもらえて嬉しいよ。愛してる、しゅう」
「僕も。あいしてる」
次回 三神家のお正月2025




