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第二十五話 彼には言えない僕の計画

「仕事頑張ってください、お父さん! いってらっしゃい!」

「行ってきます。見送りしてくれるのはしゅうくんだけだよ。じゃあ、お昼には帰るから」


 そう言って父くろきは休日出勤した。

 しゅうは鍵を閉めて二階に行き、他の兄弟たちが眠っているのを起こす。


「うぅーん。まだ寝てるじゃん、しゅう最低」


 長男しんは起きず。しょうがない。いつものことだ。


「やめろよばか! まぶしい!」


 次男しんやは布団を剥いだら目を開けていたがすぐに布団を掛けなおし、しゅうに悪態をつく。これもいつものことだ。気にしない。


「起きてるから。うん、起きてる。やめて?」


 四男しゅうとは口だけで起きようとしない。いつものことだ。


「むーん、むにゃ、むにゃあ」


 五男しゅうやは何をしても起きない。しゅうは諦め、次に移る。


「ちょっとぉー、やめてよしゅう兄さん~、眠いのぉ」


 六男しやはアイマスクを取られても起きようとはせず、布団にもぐる。


 一人ずつ部屋を回り、起こそうとしたが無駄だった。

 誰一人起きないとは。しゅうは最低でも二人は起きると思っていた。まあ、起きたところで何ということもないのだが。しゅうは映画を見ながらソファでゴロゴロする方が楽しい。

 朝ごはんもくろきと一緒にごろぐらを食べたし、洗濯物もくろきが済ませてくれた。


 よって兄弟たちが起きなくともしゅうには支障がない。が、寂しい。

 しゅうはまあまあな寂しがり屋である。いつも父と一緒か、兄弟の誰かといた。

 十歳で一人部屋になった途端、くろきと寝始めたぐらいだ。いまでも時々くろきと寝る。


 兄弟全員で寝ることもたまーにあるが、兄弟たちは互いのいびきにうんざりしていた。最近は思春期に入り、みんな一人部屋で過ごすのでしゅうはくろきといる時間が長くなる。


 しかしくろきは社会人だ。仕事があると仕事を優先する。

「仕事と私、どっちが大事なの!?」

 ということがカップルにはあるが、しゅうは仕事をしていないくろきは好きになれない。なのでそんな質問はしないし、仮にしたとしても即「仕事」と答えられる気しかしなくて怖い。


 しゅうはテレビを付けてソファーに横になる。


「何観よ……」


 しゅうがNetflixの人気作品を見ていると階段から誰かが降りてくる音がした。


「しんや兄さん!」


 降りてきたのは寝起き眼の次男しんやだった。


「おはよう、しゅう。朝ごはんある?」

「自分で作ったら? 冷凍ワッフルもあるし、ごろぐらもヨーグルトもあるよ。あ、でも、フルーツ冷蔵庫にキウイがなかったよ。一緒買いに行く?」


 しゅうはテレビを消してしんやを見る。


「俺キウイきらーい」


 しんやは洗面所に向かった。

 しゅうはムッとしてスマホを取り出し、くろきにメッセージを送る。


 気づいたらしんやが台所のテーブルでスマホ片手にアップルパイを食べていた。


「それいつの?」


 しゅうはソファーから身を乗り出して聞く。


「さあ。冷凍だし賞味期限とかないっしょ」


 しんやは冷たく言った。

 しゅうは静かにしんやに近づきスマホ画面を見る。


「うそ! しんやが女の子とメールしてる!」



「じゃあ話を聞こうか」


 しゅうの悲鳴を聞いた直後、兄弟たちは皆降りてきた。そしてしんやを椅子に磔にして尋問モードに入る。

 長男しんが最初に聞き出した。

 しんやは口周りにアップルパイの汚れが付いたまま手も足も縛られ、一ミリも動けない。挙げ句の果てにしゅうやにスマホを奪われて過去のメッセージを見られている。


「うわー! しんや兄さん、このメッセージは気持ち悪いよ!」

「ほんとだ。ウケるw」


 しゅうやとしやが兄たちにスマホを向ける。


「えー、『早く子猫ちゃんに会いたい♡チュ♡』? うえー! キッモ! ゲボ出るわ!」


 しんは拘束中のしんやの太ももを何度も叩く。しんやは顔が真っ赤になり、下を向いた。


「あーあー、可哀想に。それもこの子と会ってないみたいだね」


 四男しゅうとはしゅうやから取ったスマホをスクロールし続ける。


「うわこれ見て」


 しゅうとがスマホを見せる。


 しんやは彼女から「顔写真見せて!」と言われ、プリクラの写真を送っていた。それも写真に写っているのはしんやではなく、しゅうとの写真だった。


「ねえ、しんや。なんで俺の写真なの? ねえ、なんでかなぁ? 俺の顔が羨ましかったのかなあ?」


 しゅうとはスマホをしんやに向けて笑いながら聞き続ける。


 ……プリクラだし兄弟だしそんなに顔変わらないでしょ。

 しゅうは呆れる。それと同時に恐怖を覚えた。


 もしくろきとの交際がバレたら、僕も……。


 しゅうは怖くなり、自分のスマホを開く。

 そしてくろきとのメッセージを次々と消す。


 バレたらまずい。



「ただいまー」


 残業なのか、飲み歩いていたのか、くろきは真夜中に帰ってきた。

 しゅうを除いてみんな眠っていたが、くろきは知らない。


 ……お父さんは帰ってきてすぐスマホを充電する。手洗いと着替えの時間で僕とのメッセージを全て消さないと。


 しゅうはキッチンの棚に隠れてスマホを充電して洗面所に向かうくろきを見ていた。


 今だ!


 しゅうは棚から出てくろきのスマホを充電ケーブルから外す。そしてロックを開ける。


「6、3、3、1、と……あれ?」


 ロックは開かない。


「えー? 番号違うかな」


 しゅうはもう一度同じ番号を打ってみる。やはり開かない。


「どうしよ、お父さん今手を洗い終わったし……時間ない」


 しゅうは番号の順番を変えて何回も試すが開かない。

 もうだめだ。


 しゅうは諦めてスマホを戻し、洗面所に向かう。


「あれ、しゅうくん起きてたの? それとも起こしちゃった?」


 くろきは着替え終わり鉢合わせになる。


「……僕とのメッセージ、消してくれません?」


 しゅうは今日あったしんやのことを全て話す。


「それはしんやくんが可哀想だね。でもメッセージなんか消さなくても大丈夫だよ。番号教えてないし」


 くろきは笑って台所に向かう。


「そうですか?」

「心配ないよ。大丈夫。しゅうくんだって番号わからないはずだよ」


 現にしゅうには番号がわからなかった。


「そうですね。心配しすぎました」

「うん。それより、みんな酷すぎない? しんやくんはただ女の子とやり取りしてただけだよね?」


 くろきはお茶を淹れる。


「はい。でもネットで知り合った子みたいで……あとしんやのメッセージがキモかった」

「しゅうくんまで……。明日じっくりしんやくんと話すよ。しゅうくんももう寝な」


 お茶を飲むくろきは階段を指差した。


「僕、一人で寝たくない」


 しゅうは口を尖らせて下を向いた。


「じゃあ先に僕の布団で寝てていいよ。お風呂入ったらすぐ行くから」

「わかった」


 しゅうは大人しく二階に上がる。くろきはその様子を見てスマホをとり、電話をかける。


「ベイビー、突然の電話ごめんね。起きてるかい?」

『こっちでは朝よ。何の要?」

「別に。声を聞きたくて」

『そう。これから仕事だから、もう切るわ。次はわたしから電話するから』

「あぁ、おやすみ」

『……おやすみ、ダーリン』

次回 time to go

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