第二十三話 舐めるなP.T.A.
私の名前は三神 くろき。このクラスに六つ子の息子たちがいる。
今日は息子たちのクラスで参観日があった。参観日は何事もなく終わり、生徒たちが帰った後は保護者の時間が始まる。
「このクラスの保護者様はこちらの紙に子供の名前をお書きください」
担任とは違う女性教員が黒板に紙を貼る。
くろきは黒板に人が群がるのを見て少し待つことにした。
「お、三神じゃないか」
後ろからくろきを呼ぶ声がした。
振り返るとそこには息子たちと仲良くしているゆうひくんの保護者がいた。その隣にはゆうひくんの従兄弟のゆうたくんの保護者もいる。
「どうも、アカイさん。もう名前書きに行きました?」
くろきは笑顔で対応した。
「まだだ。それよりお前はPTAでやりたい役職は決まったか?」
くろきは首を傾げた。
「やりたい役職……ですか? まだです。役職は自分で決めるんですね」
「あぁ。毎年委員長の押し付けあいだ。誰かが立候補してくれれば話は早いんだけどなぁ」
ゆうひ父は演技っぽく大袈裟に言った。
くろきはめんどくさいと思ってしまった。
「あ、名前、書きに行きます?」
くろきは話題を変えた。
「みーかーみー、しーんー、っと」
くろきは紙に長男の名前を書いた。
「一人でいいのか?」ゆうひ父が横から覗く。
「どうでしょう。六人全員、書いたほうがいいですかね」くろきは黒板から離れて適当に椅子に座った。
ゆうひ父はくろきの隣に座る。ゆうた父は反対側のくろきの隣に座る。ゆうひ母とゆうた母は二人で世間話をしながらくろきの後ろに座る。
くろきは包囲された。
「いやー今年もいなさそうだな。委員長になってくれそうな人。この学校に通うこの親は皆、仕事に忙しそうだ。ところで三神は何の仕事を?」
「たしかに、僕も気になります。三神さん、何のお仕事を?」
ゆうひ父に続きゆうた父もくろきに聞く。
くろきはゆうひ父とゆうた父を見た。
「……お二人はどのようなお仕事を?」
「僕は警察官をやっています」
ゆうた父はさらりと答えた。
しかしゆうひ父は答えない。
「お前が言わないのなら私も言わない」
「そうですか……」
くろきは興味なさそうに言った。
「なんだ、誇れる職業じゃないのか?」
「いえ、普通に言いたくないだけです」
ゆうひ父は「?」という顔になり、スマホを操作し出す。ゆうた父は「やめようよ、893とかだったらどうするんだ……」と呟いている。
「ここの役員か?」
ゆうひ父がスマホをくろきに向けた。
そこには“三神グループ”と書かれたホームページ。
くろきは目を見開く。
「当たりか?」
「まあ……。それで、アカイさんのお仕事は?」
沈黙が流れる。
保護者が全員集まったのか、教員が保護者会を始める挨拶をし出す。
しかし、先ほどのホームページを映したスマホをチラチラと見せてくるアカイに気を取られ、くろきは教員の話を一言も聞いていなかった。
……きっと彼はSだろう!
くろきはアカイを睨む。
するとアカイのスマホの画面が変わっていた。
“副委員長は任せたぞ”
「は……」
「では委員長になりたい方はいらっしゃいますか?」
アカイが手をあげる。
「では委員長はアカイ様で決定します。……副委員長になりたい方はいますか?」
アカイがこちらを見ている。
誰も手をあげない。
くろきは渋々手をあげた。
……舐めるなよ、アカイ。
立派に副委員長、やってやろうじゃないか!
「では今年の委員長はアカイユウザブロウさん。副委員長はミカミクロキさん。その他委員はいまからお配りする紙にありますので、確認お願いいたします」
くろきは配られた紙を見て仕事の多さに落胆した。
……やるんじゃなかった、PTA。
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