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第二十二話 参観日

 今日は参観日。

 たくさんの保護者たちが僕たちのクラス、一年A組にも集まっていた。


「あ、しゅうくんたちのお父さんきたよ」


 ゆうたは廊下を見て隣の席のしんの肩を叩く。


「ほんとだ」


 しんも廊下を見ては父に手を振る。

 しかし誰も手を振り返さない。


 しんは首を傾げた。



「ねね、しんや兄さん。あれ、お父さんだよね? ずっと手振ってんのに。誰と喋ってんだろ」


 しゅうはしんやに愚痴を漏らす。


「え、お父さんどこー?」


 しんやは父を探す。


「ほら、後ろのドアのとこ。赤髪のおじさんと喋ってる」

「あれか、綺麗な赤髪ダンディー。ゆうたくんかゆうひさんのお父さんじゃね?」


 しんやは素っ気なく前を向いてしまった。

 しゅうは斜め前の席のゆうたとゆうひを見る。


「どっちの親かなぁ?」



「ゆうひお兄ちゃん、ご両親来られたよ」

「え? 今日は二人とも仕事だった気がするけど」


 前の席のゆうたに肩を叩かれたゆうひは後ろのドアを見る。


「ほんとに来てんじゃん。まだ授業始まんないよな?」

「うん。あと15分あるよ」

「ちょっと話してくるわ」


 ゆうひは席を立ち、父と母の元に向かう。

 ゆうひ母はゆうひに手を振る。


「ゆうひ、おいで」


 母の後ろにいるゆうひ父は六つ子のお父さん、くろきと話していた。


「母親似だな」

「いや、僕とあの子達は血が繋がってなくて……」

「すまん。どうやって引き取ったんだ?」

「えーっと……」


 ゆうひはため息を吐く。


「父さん」


 ゆうひの声にゆうひ父は気づいた。

 ゆうひ父はくろきと話をやめ、ゆうひと向き合う。


「父さん、仕事じゃなかったのか?」

「ゆうひを見るために休んできたぞ」


 ゆうひは仏頂面から笑顔になった。


「そっか。ありがとう」


 ゆうひが笑顔になったと共にゆうひ父から解放されたくろきもまた、笑顔になった。



「赤髪ダンディーはゆうひさんのお父さんだったかー。

 ゆうたくんの親は来るのー?」


 しんやはゆうたに紙飛行機を飛ばしながら聞く。

 ゆうたは見事に紙飛行機を掴み、手を握ってクシャクシャに潰した。


「しんやくん。君もこうなりたい?」


 ゆうたは潰した紙飛行機を手から離した。

 しんやは床から紙飛行機を取って静かに自分の席に戻った。


「あ、もう1組、赤髪のご夫婦来たよ。ゆうたくんのご両親じゃない?」


 しゅうがゆうたに話しかけると、ゆうたは少し暗い顔をした。


「僕の親じゃないだろうね」


「なんで?」


 しゅうとが珍しくゆうたに話しかけた。

 ゆうたは苦しそうに眉間に皺を寄せて口を開いてくれた。


「僕のお母さんは病気で何年も入院中。

 そのお金を稼ぐためにお父さんは家に何日も帰らずに仕事してるんだ。

 だから僕の親じゃ……」


 ゆうたは廊下にいる赤髪の夫婦をチラリと見た。

 ゆうたは固まる。

 その目には涙が。


「お母さん……?」


 赤髪の女性はゆうたの机に近づく。

 ゆうたは号泣していた。

 しかしクラスの誰も笑ったりしない。


「ゆうた」


 ゆうたの母がゆうたの涙をハンカチで拭う。


「お母さん、病気は? 治ったの?」


 ゆうたは涙の残る目で母を心配そうに見つめる。


「大丈夫よ。まだ全部が治ったって訳じゃないけど、今は元気よ」


 ゆうた母はハンカチをバッグにしまいながら微笑む。

 ゆうた父もゆうひ父との会話を終え、合流した。


「ゆうた、いつもごめんな。今日は家族三人で夕食を食べよう」

「うん。僕こそごめん。ほんとに……お母さんが……無事で……よかったあ」


 ゆうたはまた泣き始めた。

 赤ちゃんのように丸くなるゆうたを母親と父親が抱きしめる。


「心配させてごめんね、ゆうた」

「これからは家族一緒だぞ」


「うん。ありがとう、お父さん、お母さん」


 ゆうたも強く家族を抱きしめた。

次回 舐めるなPTA

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