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おまけ 恋のABC

「ねー、しゅうくん。恋のABCって知ってる?」


 ゆうたは綺麗な赤毛をなびかせてしゅうに振り向いた。


「知らない。けど知ってるよ」


 しゅうは机の横からお弁当袋を取って机の上に置く。


「僕も一緒にいい?」

「いーよ」


 ゆうたは椅子を半回転させてしゅうの机にお弁当箱を置く。


「知らないけど知ってるってどーゆうこと? 矛盾してない?」


 笑いながらお弁当箱を開けるゆうた。


「なに? 矛盾って。僕と喋るなら難しい言葉禁止ー」


 ゆうたはおっかなびっくり。


「え? 矛盾知らないの?」

「知らないよ。あ、ゆうひさん〜! 矛盾がなにか教えてくれません?」


 しゅうは1人でお弁当を食べていたゆうたの従兄弟であるゆうひを自分の机によんだ。

 ゆうひは赤毛を揺らしながらお弁当箱と椅子を持ってくる。


「俺もここで食べていいのか?」

「「いーよ」」


 しゅうとゆうたは一緒にゆうひに返事をする。


「矛盾がなにか?」

「うん。教えて欲しいの」


 ゆうひはしゅうのバカさに驚く。


「教えてやろう。まず、矛盾っていう漢字は書けるな。しゅう?」

「書けない」


 しゅうは卵焼きを頬張りながら答える。


「ん? え? 書けない?」

「うん。書けない」


 ゆうひはゆうたと顔を合わせる。


「わかった。書けないんだな。矛盾っていうのは……こう書くんだ」


 ゆうひはゆうたの胸ポケットからメモ帳とペンを取り出して『矛盾』と書いた。


「あー、見たことある」

「そりゃね」


 しゅうにゆうたが突っ込む。


「この漢字はほこたてという二つの漢字からできてるよな。この二つの漢字は……」

「わかったよ。ありがとうゆうひさん」


 しゅうはゆうひの言葉を遮って強引に話を打ち切る。


「ゆうたくん、恋のABCの話に戻そうよ。ゆうひさんの話も聞きたいし」


 ゆうたとゆうひは顔を合わせてため息を吐く。


「いいよ。恋の話しよっか、いい? ゆうひお兄ちゃん」

「うん。俺もしゅうの恋バナ聴きたいし」


 ゆうたたちは了承した。


「じゃあ。みんな、『恋のABC』知ってる?」


 ゆうたはしゅうとゆうひを見る。


「知らない」しゅうは唐揚げを掴む。

「俺も知らん」ゆうひは素っ気なく言う。


「恋のABCっていうのはね。大人な恋の手順のことだよ。

 まずA、キス。

 そしてB、ペッティング。

 最後にC、それ以上。

 わかった? 2人とも」


 しゅうは顔を赤くしていた。

 ゆうひは気にしていない様子でご飯を食べ続ける。


「で、みんなはどこまでいった?」


 ゆうたは2人に小声で質問する。

 ゆうひはお米を喉に詰まらせたのか咳をした。


「お前は馬鹿かっ! 俺らはまだ高校生でキスも……ましてや恋人なんて! できるはずないだろ!」


 冷静沈着な男、ゆうひが大声を出して立った。

 クラス中がしゅうたちの机に注目する。

 ゆうひは自分の行いを恥じ、静かに椅子に座った。


「意外。ゆうひさんってめっちゃモテるから彼女の二、三人いるのかと思った。初心うぶなんですね」


 しゅうがからかうようにゆうひを見る。

 ゆうたは眉を下げる。


「しゅうくんは? 恋人いるんでしょ。ね、そうでしょ?」

「え。しゅう、恋人いんの? いつから? なあ、いつからだよ」


 ゆうたはからかって、ゆうひはびっくりした顔でしゅうを問いただす。


「……いるよ」


 しゅうが静かに言った。


「「まじか」」


 2人はニヤニヤ顔に変化する。


「ABC。どこまでいった?」

「おい、ゆうた流石に答えさせるわけにはぁ……」


 しゅうはフフンと勝ち誇った顔で口を開いた。


「A!」


 ゆうたとゆうひは固まる。

 そして

「なあんだ! よかったぁ」

「なんだ。びっくりさせるなよお! よかったああ」

 と胸を撫で下ろした。


 しゅうは馬鹿にされた気持ちになり言い返す。


「なに! もうすぐBもCもするもん!」

「いやいや、するなよ?」


 しゅうは思い切り椅子を立つ。

 ゆうひは即座に突っ込む。

 またクラス中はしゅうたちの机に注目する。

 しゅうは余計惨めな気持ちになり静かに椅子に座る。


「しゅうくん、あの後。うまくいったの♡」


 しゅうの肩を優しく叩いたのは学校一の美少女。空上そらがみにじだった。


「あー、うん。うまくいった。この前は相談乗ってくれてありがとう」

「そんなぁ♡全然いいよ。次はわたしの相談、乗ってくれる♡?」


 にじは横目でゆうひを見て、しゅうに可愛く上目遣いをした。

 ……にじちゃんはゆうひさんのことが好きなんだろうな。

 しゅうは確信した。


「うん。いつでも相談してね」

「ありがとう。じゃあ♡。行こっ、かなめちゃん」

「うん。屋上行く? にじちゅわあーん」


 にじちゃんガチ恋のかなめちゃんにはできないからしゅうに相談をするのだろう。

 そうでないとしゅうに相談する理由がない。

 にじちゃんは少しゆうひを見つめてからかなめと教室を出た。


「しゅうはモテモテだな。俺も早く彼女とか欲しい」

「ゆうひさんは大丈夫だよ。もうすぐ最上級に可愛い彼女ができるよ」


 しゅうはニヤつきてゆうひのお弁当から卵焼きを取る。ゆうひはしゅうのお弁当箱からしゅうの卵焼きを奪い、口に入れる。直後、ゆうひは静かにトイレに行った。

 ……ごめんね、ゆうひさん。お父さんが作る卵焼きは不味いんだ。


「え? なんでゆうひお兄ちゃんに彼女ができるの? ねえ、しゅうくん」


 ゆうたは納得しないと言わんばかりにしゅうを掴む。


「えーっと、ゆうひさんに想いを寄せている人がいるってこと」


 しゅうはゆうたのお弁当からも卵焼きを取った。


「そーいうことでも、無理じゃない? お兄ちゃん、これまで何度も告られてるけど全部断ってるし」


 ゆうたはしゅうに最後の卵焼きをあげる。

 しゅうはお礼を言う。そしてすぐにそれを頬張る。


「いや、相手はゆうひさんが断れないぐらいの人だよ」


 ゆうたは少し考える。


「そんな人、にじちゃんぐらいしか……にじちゃん!?」


 ゆうたは自分の声が大きすぎたと思いすぐ、口を手で押さえる。


「そうなんだよ! にじちゃんなんだよ!」


 しゅうは静かに叫ぶ。


「にじちゃん、ゆうひお兄ちゃんのこと好きなの??」

「わかんないけど、たぶん」


 しゅうとゆうたが顔を合わせているとゆうひが帰ってきた。


「なんだ、急に静かになって」


 顔色の悪いゆうひは椅子に座り、ご飯を再開する。しゅうを睨みながら。


「お前のせいでトイレに行くハメになった。謝れよ」


 しゅうは思い出した。

 自分のお弁当から卵焼きを盗んだゆうひがあまりの不味さに吐き気を覚え、トイレに駆け込んだことを。


「ごめんなさい。でも盗んだのはゆうひさんで……」

「お前が俺のを先に盗んだんだろ!」

「はあ? やり返すとか子供すぎっ」

「はああああ?」


 しゅうとゆうひは睨み合う。


「俺は4月生まれだよ! 俺の方が大人だ!」

「んー!!」


 しゅうはゆうひに勝つのを諦めた。


「なにしてんの。2人とも」ゆうたがお弁当箱を閉じながら2人を笑う。「あと。結構みんなに見られてるよ」


「えっ、うそお」


 しゅうは周りを見渡して手で顔を覆う。

 ゆうひはなんともないと言う顔でお弁当を片付ける。


「そういえば、なんで今日はしゅうくん以外の兄弟みんないないの?」


 ゆうたは黒板の『欠席者:しん、しんや、しゅうと、しゅうや、しや』を指差して言う。


「あー、にじちゃんに振られたのが十回目記念で休んでる」

「どんな休みだよ」


 しゅうの言葉にゆうひが突っ込む。


「ほんと。どんな休みなの。ってか、しゅうくんたちのお父さんはそれ了承してんの?」


 ゆうたはお弁当箱を袋に直すしゅうに問う。


「いや、5人は仮病を使ってたから」


 しゅうは手を合わせながら言う。


「最悪な奴らだな」


 ゆうひは椅子と共に自分の席に戻ってしまった。


「あーあ。ゆうひお兄ちゃん怒った」

「僕のせいかな?」

「どうだろね」


 ゆうひは関係ないと言わんばかりに椅子を半回転させて元の向きに戻す。


「急に嫌われちゃったよ」


 しゅうは口を尖らせる。


「しゅうくんが言ったんじゃん。『周囲に友達として見られるように振る舞って』って」


 ゆうたは結構な声で言った。

 クラス中が注目する。


「言ったよ。言ったけど。ゆうたくん、声大き……」

「そして、ニセ友人作戦は『ご飯を食べるお昼休みだけでいいから』って言ったよね?」


 クラスの前を通っていた生徒たちまでもが注目しだした。


「もうやだー」

「ごめんってー。しゅうくん」


 しゅうは机に伏せる。

 ゆうたはしゅうの髪を触る。

 しゅうのことが可哀想になり、みんなしてしゅうから目を逸らした。


「ねえ。しゅうくんのキスの相手って、男の人でしょ」

「えっ」


 ゆうたはしゅうの耳元で囁いた。

 しゅうはゆうたがわかるとは思ってもいなく、戸惑う。


「ん、ナわ、ケ、ない、じゃン? 僕の相手はふつーの人ダヨ」


 しゅうは作り笑顔で嘘をつく。


「あはは。しゅうくん嘘下手すぎー」


 ゆうたは笑いながら席を立って自分の席に戻った。


 しゅうはまた机に顔を伏せる。

 ……なんでばれたんだ! それも唯一の友達、ゆうたくんに!

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