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第二十話 20までにとうるさくて

「パパね、一回大学落ちたんだ」


 父くろきの説明は衝撃的な言葉で始まった。


「別に難しいとこでもなくてね。すぐそこの大学だよ。

 自分より頭が悪いって思ってた親友が受かってて。だから別の大学に行こうと思って。

 うち、大学は絶対に20までってうるさくてね。

 そこでお父さんが行ってた海外の大学に入ったんだ。次の年の九月に」


 説明を聞いたしゅうは「コネ……」と静かに呟いた。

 くろきは眉を下げて笑った。


「ね。コネだよね」


 しゅうは少し考える。


「お父さんは僕たちが小学四年生の時から中学一年生までいませんでしたよね。もしかしてその時大学に?」


 くろきは頷いた。


「じゃあ年齢も嘘ついていたんですか」


 くろきは唇を噛みながら目を泳がせた。


「そんなあ」しゅうはあからさまな父の態度に落胆する。「ほんとは何歳なんですか? 30歳じゃなかったんですか!?」


「ホントは25ダヨ」


 くろきは目を逸らしていった。


「うそお……5歳も嘘ついてたなんて。まいっか。サバ読むよりましか」


 しゅうは納得したように頷いてくろきを見つめる。


「それより運がいいですね。お父さんが浪人してなかったら、僕たちの面倒を見てくれるくろきおばさんが大学院卒業してなかったもん。小学三先生にしてキッズ・サバイバル始まるとこだったー」


 ……何言ってんだこいつ。

 くろきは戸惑う。


「あ、お父さんが大学から帰って来てすぐにくろきおばさん結婚しましたよね。あれは偶然ですか?」

「さあ。偶然じゃないんじゃない?」


 しゅうは「のどの潤いが足りない!」と叫んだと思ったらリビングから移動してお茶を冷蔵庫から取り出す。

 くろきは「パパのもー」としゅうに頼む。


「はいどーぞ」


 しゅうはちゃんと持ってきてくれた。



「次は結婚について教えてくれます? NYで一緒にいた女性と結婚してるんですよね」


 しゅうはズバッと聞く。

 くろきは隠せないなあと呟いて口を開いた。


「うん。結婚してるよ」


 しゅうの顔が曇る。

 当然だろう。

 キスを何度もした相手が既婚者だと知るのだ。

 それ以前に彼は父なのだからその結婚相手が敵だけではなく母になるということでもしゅうの顔はどんどん曇っていく。


「恋愛感情は一切ないよ。お互いね」


 くろきは急いで訂正する。


「え、キスしてましたよね?」


 しゅうは怪訝な顔をする。


「あれは挨拶みたいなものだよ」


 しゅうは納得する。

 ……たしかに! あそこはNY! 情熱的な愛の町! 情熱的なキスの二つや三つは当たり前か!

 しゅうの頭には釘が残っていなかった。


「じゃあなんで結婚したんですか?」


 しゅうの頭にも釘は一本残っていた。


「うちは20までに結婚しろってうるさいんだよ」

「なるほど、政略結婚ですね!」


 しゅうの最後の釘は抜けた。


「あの人はお父さんの会社で働く人なんだ。だからお父さんは認めてくれたし、家でも会社と同じ扱いをしているよ」


 しゅうはほっとした顔になる。


「よかった。お父さんが愛してるのは僕だけですよね」


 くろきはしゅうの頭を撫でて頬にキスをした。

 しゅうは急なことに顔を赤くした。

 くろきはしゅうの耳元で囁いた。


「〝くろき〟って呼んで」


 しゅうはくろきの発言に戸惑う。


「くろき……?」


 くろきはまたしゅうの頬にキスをした。


「くろき」


 しゅうはくろきを押し倒して熱い口づけをした。

次回 第二十一話 キケンなジョージ

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