第十七話 意見はっきり 匂いすっきり
「やーっと帰ってこれたー、我が家」
長男は真っ先にタクシーから降り、家の鍵を開ける。
「お父さん、お金!」
タクシーから出てきたしんやは車から降りる父くろきに叫ぶ。くろきはすぐタクシーに走り「何円?」と尋ねた。
「えーっと……」
「五千二百円です」
しんやがメーターを見る前に運転手さんが答える。くろきは頭を下げながら財布を出し、カードを出した。
「お父さん。俺、しゅうやと先出とくから」
「うん」
寝ているしゅうやを抱えながらしんやは反対側のドアを開けてもらって外に出た。
「あ、しゅう」
「ん、しんや兄さん」
車庫に停めたくろきの車からしやとしゅうが出てきた。
「あれー? しゅうや兄さん眠っちゃったの?」
「そうなんだよ。足の方持ってくんない? ソファーまででいいから」
「いいよーん」
しやとしんやの会話を聞きながらしゅうは助手席のしゅうとを起こす。
「しゅうと、家に着いたよ」
「ん? もう?」
しゅうとはアイマスクをとって車から降りる。しゅうは車の中のくろきのジャケットを取る。
「あ、ありがとう。しゅうくん」
自分を睨むしゅうとを横目にくろきはしゅうからジャケットをもらう。
「タクシーはもう払えたんですか?」
「うん。みんなはもう家?」
「はい」
くろきは手を差し伸べてしゅうをエスコートをしながら家に入った。
〜六つ子たちの部屋〜
「みんなおやすみ」
「「「「「「おやすみなさい」」」」」」
くろきはみんなして挨拶してくれることに驚いた後、笑った。
「ごめんね。みんな」
〜翌朝〜
「おとうさん。はっきりしてください」
みんな帰ってきて休日の楽しい朝食のはずが。
「パピーの命は僕たちの掌の上ですよ」
くろきは起きたら椅子に座らせられている。手を後ろでおもちゃの手錠で結ばれている。目の前には六人の子供達。
「みんな揃ってどうしたんだい? 日曜日なのに随分早起きだね」
「お父さんが起きるより早く準備したから!」
しゅうやだけがくろきの言葉に明るく返した。だがそのしゅうやは長男が殴ったためもう明るく話すことはないだろう。
「お父さん。僕達は見たんですよ。お父さんの彼女の衝撃的なところを」
くろきは目を逸らす。
……こんな形でバレるなら自分から言うしか。
くろきは決心して口を開いた。
「実はあの人……!」
「既婚者ですよね!!」
「え?」くろきは固まる。
「ん?」しゅうも固まる。
「ちょっと待って。しゅうくん。もう一回言ってくれる?」
「え? はい。あの人は、既婚者ですよね?」
くろきは目を閉じて少し考えこむ。でも目を開けても何も解決しなかった。
「ごめん。なんでその発想になるの? 説明してくれる?」
くろきは後ろの手錠を慣れた手つきで外し、しゅうに向き合う。しゅうはしゅうとに助けを求めるような目を向けたが無視された。仕方なくくろきに話すことにした。
「あの。しゅうとがいったんですけど、あの、女の人。サブリナさん、が。その……お父さんと……キス。してたあとに、僕達がおなじエレベーターに乗ったじゃないですか。その時、サブリナさんがこっそり左手の薬指の指輪を外してポケットに入れるのを見たって。だから、そのひと。既婚者、なのかなって」
なるほど。くろきは納得した。はたから見ればそう見えるのか。
「それは……私が指輪を送ったという考えはないのかな?」
くろきは困ったように眉毛を下げて笑いながら言った。
3「あ、それは考えてなかったです」
しゅうの言葉にみんなが続ける。
1「すっかり忘れてたわ。お父さんが不倫相手かと」
2「無理もない。お父さんは結婚するタイプじゃないから」
4「なーんだ。面白い展開が見れると思ったのに」
5「ん? どういうこと? よくわからないんだけど??」
6「つまり、パピーはサブリナさんに指輪を送って結婚したってこと」
「してません。はい、この話は終わり! パパと朝ごはん買いに行く人!」
くろきの勢いに負けた六つ子たちは顔を合わせる。しゅうが名乗り出た。
「僕行きます」
「シートベルトした?」
「はい」
「じゃあ出発」
しゅうは懐かしい気分になりながらくろきの車の助手席で眠ろうとする。
「ん」
何か気になることがある。何かおかしい。
「くんくん」
しゅうはくろきを嗅ぐ。
「なにやだしゅうくん」
何も気にしないくろき。
しゅうは赤信号になり、くろきの方へ鼻を近づける。
くろきの服から微妙にあの女の人、サブリナの甘い香りがした。
近づくしゅうが自分にキスをしたいと勘違いしたのか、くろきはしゅうの頬に軽く口づけをした。
「やめてくださいよ」
そう言ったしゅうの顔は真顔だった。
次回 相談は学校一の美少女に




