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第十六話 なりきりCA パイロットの隣で

 日本に帰るジェット機にて。


「ねー、しんや。ここにいるキャビンアテンダントさんってここ専用の人なのかな」

「どうなんだろ。お父さんに聞いてみれば?」


 前の席の長男しんと次男しんやは雲しか見えない窓に飽きて談笑する。


「おい、しや。しゅう知らね?」

「え? しゅう兄さんもいないの? しゅうや兄さんもいないんだけど……」


 しゅうとは前の席のしんたちを睨みながら隣のしゅうがいないことを後ろのしやに聞く。しやも隣を見ながら首を傾げている。


「なんで二人もいなくなるかなぁ。……お父さん知りません?」


 しやは後ろを見て言う。しやの後ろには父くろきがいた。


「しゅうくんはトイレじゃないかな。しゅうやくんは……前に行ってた気がするけど」


 くろきは付いてあるモニターの停止ボタンを押しながら答えた。


「しゅう兄さんはトイレ? 意外。あの人行く前僕とトイレ行ってたのにー」


 しやはそう言いながら前を向く。


「しん兄さーん、前にしゅうや兄さんいるー?」


 しやは他の乗客もいないので気にせず大声をあげる。しばらく返事は返ってこない。しゅうとがもう一度しやと同じことを言ったらしんやから返事が返ってきた。


「しゅうやはいないよ? あとしん、寝てるから」


 どうやらはしゃぎすぎて長男しんは寝てしまったらしい。自由な男だ。自由でいいのだが。


「あ、そう? じゃあ二人でトイレ?」

「んなわけ」


 しやの意見にくろきが反対する。しやは納得のしない顔のままだ。


「じゃあしゅうや兄さんはどこ行ったって言うんですか?」


 くろきは自分に問いかけられていることに焦ったが、しんやが「あ!」と悲鳴の声を上げた。


「どうした、しんや」


 くろきが前の席に駆けつける。しんやは操縦席の前で尻もちをついている。しんやに手を差し出しながらくろきはため息を吐いた。


「しや、しゅうやを見つけたぞ」

「え! どこー?」


 しやも前の席に行く。


「しゅうやはパイロットの隣で講義を受けてるぞ」

「はああぁ?」


 くろきの言葉に信じられないと言わんばかりにしやは操縦席を確認する。


「わぁ! ほんとだ!」


 しゅうやは副操縦士の席でメモを取りながら操縦士と話をしていた。


「なんでもありかよ。しゅうや兄さん」


 しやの呟きに誰もが頷いた。




「で? しゅうは?」

「しゅうはトイレでしょ?」


 くろきの言葉にしゅうとが目を合わせず答える。くろきは納得して自分の席に戻った。



「お茶いかがです?」


 前の席のしんとしんやに女性のキャビンアテンダントさんが飲み物を配っている。しゅうととしやは自分の番が来た時のため、何をしようかと悩んでいる。

 くろきも映画を見るのをやめた。


「なににします?」


 くろき所にもキャビンアテンダントさんが来た。くろきは目線が下に行く。キャビンアテンダントの服がズボンだった。帽子を深くかぶっている。


「リンゴジュースをお願いします」


 くろきの言葉にCAさんは返事をして押しているワゴンからリンゴの小さいパックを取って、くろきに渡す。


「ありがとうござ……ん?」


 くろきは貰ったパックがリンゴじゃない事に気が付く。これは牛乳だ。


「すみません。リンゴジュースを……」


 パックを返そうとCAさんの目を見たくろきの目が大きく開かれた。


「なにやってんだよ。しゅう」


 そこにいるのはCAの服を着たしゅうだった。くろきの隣に座って優雅に(渡す予定だった)リンゴジュースを飲んでいる。帽子を少し上げる。見えずらかったのだろう。


「気づかれちゃったー」

「そりゃ気付くでしょ。まんましゅうくんだもん」


 くろきは意外なしゅうの恰好に見とれる。


「んふ。その割には気づくの遅かったですよ」

「それは、帽子がね」


 言い訳のように聞こえるくろきの言葉にしゅうは笑う。


「あー、この服手に入れるのに苦労したー」

「え? コスプレじゃないの?」


 しゅうは怪訝な顔をしてため息を吐く。くろきは反省するように服の素材を見て触る。確かにちゃんとした物だ。


「まさか、盗んだのか?」

「まさか。そんなことしません」


 くろきは首を傾げてジェット機のCAさんたち思い出してみる。くろき一人の時は男性一人。みんないるときは男性女性一人ずつの体制だった気がする。ということは姿の見えない男性CAの服がもぎ取られたのではなかろうか。


「しゅうくん、男性の人知らない? いないねえ」

「あ、その人なら腹痛でトイレに。服が汚れたら困るからって、僕に預けて……」


 くろきはなんとなくわかった。きっと世間話と称して何時間もお茶をしたのだろう。お腹が緩くなるようなお茶ばかりで。なんと酷い。


「どうですか? 僕のCA姿。興奮しま……」

「するか! 早く返してこい」


 くろきはしゅうの太ももをペチンと叩いてトイレに押しやった。


「「うわー。やっぱトイレだった」」


 しゅうととしやの呟きを耳にしながら。


「ほんとウチは大変だな。しゅうはCAの真似事。しゅうやはパイロットと一対一講義だなんて」


 くろきは自分の家の大変さをよく理解した。

次回 意見はっきり 匂いすっきり

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