第十三話 ペテン師と詐欺師/騙されるかよNY
「みんなよく眠れたかしら?」
「はい! お父さんが朝早く起こしに来なかったので九時間睡眠出来ました!」
「あら、良かったわね」
ジョージリアは元気に朝食を食べているしゅうやのお皿にトースターで焼いたクロワッサンを置く。しゅうやはお礼を言いながら部屋から出てきたくろきに気付いた。
「お父さん、寝てたんですね」
クロワッサンを頬張りながらしゅうやはくろきを見た。
くろきはしゅうやに返事をせずあくびをしながらしゅうやの隣に座った。
「くろき、昨日頭洗った? ぐしゃぐしゃよ」
くろきの後ろ髪が跳ねているのをジョージリアは気づき、くろき分のクロワッサンも焼き始めた。
「いらない。外で食べてくる」
しゅうやのフルーツまでもつまみ食いしたくろき。母はその光景にため息を吐いた。
「それはしゅうやくんのでしょ? 外で食べるなら早く着替えて行きなさい。……それはしゅうやくんのヨーグルトよ」
「はいはい。お父さんは?」
「仕事よ。大事な商談で早くに北京に行ったわ」
「ふーん」
「ちょっとくろき、なにしてるの! それはしゅうやくんのって言ったでしょ!? しゅうやくんに謝って。あんたは昔っから人のもの取って遊んで……。もう大人でしょ? いい加減お父さんを見習って。そんなだからお父さん以外の所で就職できないのよ。そろそろあの子もあんたに愛想が尽きて離……」
「わかったよ。着替えてもう出るから」
くろきは椅子を立ちお説教が長くなる前に自分の部屋へ戻った。
その様子をいつも通り早起きしたしゅうや以外の兄弟たちがソファーから見ていた。
「お父さんが怒られてる……。動画取っとけばよかった」
絶望した顔でしゅうとがそう言ったのがしゅうには聞こえた。
「んじゃ行ってくるー。君たち、いい子にしとくんだよ~」
六つ子たちのおでこにキスをしてくろきはエレベーターに乗った。
「あんたもいい子にしときなさいよ」
お母さんの忠告を聞きながら。
エレベーターが着いてドアマンに挨拶されながらマンションから出る。
すぐにタクシーを捕まえてカフェまであっという間についた。
くろきを待っていたのはサングラスをかけた二十代後半の女性だった。彼女の髪はブロンドでまとめずにおろしている。服装はアメリカなのに顔は日本人だ。メイクは軽くリップを塗られている程度。
「待たせたね、ベイビー」
「今来たとこよ。昨日は大丈夫だった? 急に家に来ちゃいけないって……何かあったんでしょう?」
心配する彼女にくろきは笑いかける。
「子供たちが私を追いかけて来たんだ。ジェット機でね。びっくりだったよ」
「え、えぇ? 大人になったわね……。ジョーク?」
「んなわけ」
くろきは定員にアイスコーヒーを頼む。彼女にはもうカフェオレが来ている。
「で……何か言われた?」
彼女はサングラス越しにくろきを心配そうに見つめる。
「なんにも」
くろきは来たアイスコーヒーを飲みながら言った。
彼女は髪を耳に掛けながら胸をなでおろした。
「わたしもう行くわ。じゃあねダーリン」
彼女はくろきに軽く口づけをして去っていった。
くろきは何事も無かったようにアイスコーヒーを飲んだ。
「「誰あの女」」
しゅうととしゅうは散歩中に見た光景を疑った。
「しゅうとくん、あの女性は誰だと思います?」
「一択ですな。あれはお父さんの彼女だよ。ハニーダーリン呼びに加え、口づけ? 彼女一択一択」
「え? でもここアメリカだし……奔放なお方も……」
「口にはしないでしょぉ。彼女一択でしょぉ?」
挑発するようなしゅうとの言葉にしゅうは納得した。
あの女性はくろきの彼女一択だと。
次回 嘘とNY




