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プロローグ

 ある雨の日。

大通りから外れた小道に段ボールが落ちていた。結構な大きさの。


「段ボール? でかっ」


 まだ学生だった私はそんなことを口にしながら面白半分で箱に近づき、開けてみる。

 そこには信じられない光景が。


「赤ちゃん? いや……」


 箱の中にはまだ歩くこともできないような年の赤ちゃんがいた。それだけじゃなく……。


「いやいや、多くない??」


 複数の赤ちゃんがいるのだ。数えてみると全員で六人。

 赤ちゃんたちに手を伸ばそうとしたところで、箱に紙が貼ってあるのに気が付いた。


『この子達はある事情で育てられなくなった子達です。この子達の違いが分かるように髪を一部染めました。みどりは長男のしん。あおは次男のしんや。オレンジは三男のしゅう。むらさきは四男のしゅうと。黄色は五男のしゅうや。ピンクは末っ子のしや。拾い主様が見分けられるようになったら髪を元の色に戻して下さい。どうかこの子達を育てて下さい。心の優しい拾い主様』


 読み終わると同時に、赤ちゃんを一人一人見る。たしかに髪が染めてあった。


「分かりやすいけど……。六人も引き取る奴なんていないだろ」


 赤ちゃんたちはお腹がすいているのか、ギャンギャン泣き叫んでいる。

 その中で一人だけ泣いていない子がいた。ただただ、私に手を伸ばしている。

 私にはそれが「助けて」という風に見えた。


 拾うつもりなんてない。こんなに面倒を見れるわけない。この段ボールを警察に……。


 私の手をオレンジの髪の子が掴む。キャッキャッ笑っている。

 私も思わず笑ってしまった。


 そのまま気づいたら段ボールの箱を持って行っていた。



「パパ、行ってきます」


 オレンジメッシュのしゅうが通学かばんを持って扉を開ける。他の兄弟たちもしゅうの後を追う。


「行ってきまーす」

「五時には帰ります」

「たくさん勉強しまーす」

「友達百人作ってきます!」

「もー、しゅうや兄さん。お父さん、行ってきますねー」


「あぁ、いってらっしゃい」


 私は作り笑いで見送る。

 言えない。

 こんなこと言えない。

 おかしい。一人だけ愛すなんて。

 親になるんじゃなかったのか?


 なぜ私は……。


 一歩先に家を出る後ろ姿に、私の目は釘付けになっていた。


 なぜ私はしゅうだけを愛しているのだろう。

次回 第一話 この恋は禁断だから燃えるのか それとも相手が貴方だから燃えるのか

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