都市伝説好きな少女が背負うランドセルの秘密
個室トイレに入った瞬間、私こと鳳飛鳥は怪しい声に呼び掛けられたの。
「赤い紙いるか、青い紙いるか。」
−13日の金曜日の午後4時44分、児童公園の女子トイレの4番目の個室へ入ると悪霊に質問される。
巷で囁かれている都市伝説は、どうやら真実だったみたい。
「赤い紙いるか、青い紙いるか。」
私が返事をしないので、同じ質問が繰り返されたの。
無視して帰ろうとしても、無駄な事だよ。
何しろ個室トイレのドアは、固く閉ざされて開かないからね。
これも噂通りだけど、物理干渉まで行うとは大した悪霊だよ。
ここで焦って返事をしたら大変だよ。
何せ赤い紙を選べばトイレ内に血の雨が降り、青い紙を選べば貧血で青ざめて倒れちゃうんだから。
だから、この場はこう答えるのが正解なの。
「どっちもいらない!」
すると先程まで微動だにしなかったドアが、何事も無かったようにアッサリ開いたんだ。
都市伝説の確認も出来た事だし、ここからは私なりに楽しませて貰うよ。
「所で君は、仏教と神道ならどっちが好きかな?」
「なっ?何を言って…」
どうやらトイレに潜む悪霊は、自分が質問されるのに不慣れみたいだ。
「答えないなら私が決めるね。ここは神道式で行かせて貰うよ!」
そうして私は赤いランドセルを開け、準備に取り掛かったんだ。
御幣はリコーダーケースに隠しているし、祝詞の折本は時間割表の裏に隠しているの。
親や先生に見つかると面倒だからね。
仮に悪霊の側が仏教を選んだとしても、般若心経の経典も忍ばせているから大丈夫なんだ。
「祓え給い、清め給え!」
「ば、馬鹿な!お前は何故、そんな用意を…」
御幣を振りつつ祝詞を唱える私に、悪霊が苦しみながら問い掛けてくる。
分かり切った事を聞かないで欲しいな。
護身用に決まってるじゃない。
今時の小学生なら、防犯ブザー位は持ってて当たり前だよ。
まして私はクラスで評判のオカルト少女だもの。
魔除けや御祓いの準備もなしに、心霊スポットに丸腰で突っ込む訳がないじゃない。
「これで終わりだよ、急々如律令!」
「うわああっ…!」
やがて凄まじい断末魔の叫びを残して、悪霊は消滅してしまったんだ。
敵の消滅を確認した私は、御札を貼り付けて公衆トイレを後にしたの。
このトイレも今後は安心して使えるよ。
気掛かりなのは、私の貼った御札が人々にどう解釈されるかだね。
‐児童公園のトイレに不気味な御札が貼ってある。
そんな感じで、新しい都市伝説の題材になっちゃいそうだよ…