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スキル教管理派6

 それにしても眼鏡を外したトラベラーの顔は、なんだか今までと随分印象が違うな。


「何か?」

「いや。お前ってそういう顔だったんだなって」


 いやいや。俺は何いってんだ。眼鏡越しとはいえ短くない期間をずっと一緒に過ごしていたんだぞ。なんで今さら初めて素顔を見たような気分になるんだ?


「あの眼鏡は認識阻害機能を持っていますからね。調月さんは私の顔を初めて正しく認識しています」

「なんだってそんなもんを使っているんだ?」

「いわゆる、別の世界の自分と遭遇したときの対策があの眼鏡だったのです。姿も声も全く同じ人物がいたらいらぬ混乱を引き起こします」

「ふーん」


 なんだか随分心配性だな。別に、もう一人の自分が必ず並行世界に存在するわけでもないのに。前にそういうことがあったのかな?

 素顔を見る限りトラベラーは日本人だと思うから、こういう異世界にはそもそもいないと思うけどな。


「無駄話はここまでにしておきましょう。ホリーを拘束して王国軍に引き渡します」

「でも自動捕縛ケーブルはさっき引きちぎられたぞ。目を覚ましたら不味いんじゃないか?」

「自律性を持たない代わりに強度の高いものを使います。こちらは5千トンまで耐えられるので問題ないでしょう」


 そういってトラベラーは一見すると普通のワイヤーのようなものでホリーをぐるぐる巻きにして縛り上げた。

 それから夜が明ける頃になると、ちょうどルドルフが軍を率いて街にやってきた。


「遅くなって済まない。転移魔法陣がクヴィエータになかったので隣町からの出発となった」


 転移魔法陣は個人が使う転移の魔法よりも遥かに多くの人と物を遠くへ転移できるが、その反面、予め設置された魔法陣の間でしか移動できない。


「転移魔法陣はどの街にも有るわけじゃないだろう。隣町から来れただけでも運が良いほうだ」

「そう言ってもらえると助かる。それにしても、さすがコウチロウ殿! 姫様が勇者ジンヤの再来と言われただけのことはある」

「いや、俺はしくじって何も出来なかった。ホリーを捕まえたのは全部彼女のおかげだよ」


 俺は少し良心が痛む。今回は油断したせいで大事なところは全部トラベラー任せになっちまった。

 借り物のチートで粋がった挙げ句、このザマだ。冒険を通じて少しは人間的に成長したと思っていたが、どうやら思い上がりのようだ。


「そんなに気落ちする必要はあるまい。人間、いつか何処かでしくじるのだ。それを助け合ってこその仲間だろう」

「そうだな。そのとおりだ」


 ルドルフに励まされて少し気分が持ち直した。

 そうだな。俺が今まで読んだ異世界ファンタジーの主人公たちもそうだったじゃないか。無敵のチート能力を持っていても、失敗したり苦境に立たされたりする。そこから立ち直るのはいつだって仲間のおかげだ。


「ともかく、ホリーを引き渡す。今は気を失っているが、こいつはスキルで作った薬で魔族を超える怪力を手に入れた。普通の牢屋では逃げられると思う」

「わかった、注意しよう。コウチロウ殿とトラベラー殿は英霊の墳墓の調査を頼む」

「任せてくれ」


 ルドルフは気絶したホリーを連れて去っていく。


「トラベラー、今回はありがとうな。次はこんなことが無いよう注意する」

「そうしてください」


 冷たい口調のようで、すこし優しさを感じたのは俺のうぬぼれだろうか?

 後ろから拍手の音が聞こえた。俺たちが振り向くと兵士の格好をしたアカシックがいた。


「今回もとても楽しかったわ。やっぱり主人公だけじゃなくて、恋人役(ヒロイン)が活躍する回は必要ね」

「私は助手役(サイドキック)です」


 トラベラーが不快感をあらわにするが、アカシックはそれを無視する。


「第二の魔王軍は後3人ね。応援しているわ」


 アカシックはポンポンと俺の肩を叩く。


「ところで、第二の魔王軍の蘇生法を教えてもらえるってのは駄目だろうか?」


 正直なところ教えてもらえるか望みは薄いと思っている。

 アカシックは能力を散々利用された。きっと、正義や道徳を盾にして彼女を従わせようとした連中は数え切れないほどいるだろう。

 それでもダメ元で聞いたのは、少しでも早く第二の魔王軍に対処したいからだ。俺はこの異世界にとって部外者だが、でしゃばった以上、やるべきことはやらないと。


「教える必要は無いわ」


 バッサリと切り捨てるように言うと、アカシックは兵士達の中へ紛れていった。


「やはり英霊の墳墓に行くのが正しいようですね」

「ああ。俺たちが無駄足を踏むのはアカシックにとっても損になる」


 アカシックの目的は俺を通じて本物の異世界冒険を見て楽しむことだ。なんの手がかりをつかめず完全な無駄足だったなんて展開は白けてしまうだろう。

 だから”教える必要ない”と言ったんだ。このまま英霊の墳墓に行けば、蘇生法の秘密がわかるから。

 街の壁の向こうから光が指す。夜明けだ。

 俺たちは街を発った。


●Tips

 アドル王国軍

 アドル王国は大陸統一国家でなおかつ他の地域と断絶状態にあり、5年前の魔王侵略を除けば、戦争経験はない。基本的に軍は警察としてに役割を担う。

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