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スキル教管理派1

 街の様子はともかく、英霊の墳墓へ向かうため消耗品を補充して今日の宿を確保しないと。


「すみません、宿と商店はどこにありますか?」


 トラベラーが街の住民であろう男に話しかけると、そいつはギロリと彼女をにらみつける。まるで親の仇を見るような目だ。

 男はこっちに聞こえるよう露骨な舌打ちをして立ち去る。排他的でよそ者を嫌うにしても敵意が不自然に強すぎる。

 結局俺たちは自分の足で宿と商店を探さした。その間、街中から敵意がこもった視線を向けられた。なんなんだよ。

 ともかく俺たちはどうにか用事を済ませて宿をとった。


「お部屋はどうされますか? 数に余裕があるので男女別に出来ますよ」


 それを聞いて俺はホッとした。ここまでの間、いくつかの街で宿を取っていたが、なぜかいつも部屋数が足りなくて相部屋だったんだ。


「なら、そうして……」

「相部屋でお願いします」


 ようやく隣を気にせず眠れそうだと思った時、トラベラーが突然割り込んで相部屋にするよう言ってきた。


「トラベラー?」

「お金だって限りはあるんです。可能な限り節約しましょう」


 もっともらしい事を言うが、そもそも前々から部屋を別にしたいと言ってたのはトラベラーの方だ。一体どういうつもりだ?

 しかも宿主が用意した部屋はシングルベット二つでなく、ダブルベッドだった。俺たちを恋人と勘違いしたらしい


「明日は早いのですから、体力回復のためもう寝ましょう」


 トラベラーは全くためらうこと無くベッドで横になった。


「どうしたんですか調月さん」

「いや、流石に同じベッドには」

「今更でしょう。ほら、早く眠りましょう」


 ええい、ままよ! ここは覚悟を決めるしか無いか。

 耐えてくれよ、俺の理性!



 夜、寝静まった頃。俺たちの部屋の扉が静かに開いた。

 すると全身黒ずくめの人間が二人入ってきた。顔を完全に隠していて性別はわからない。

 足音は全く聞こえない。訓練された足運びだ。

 二人は黒塗りの短剣を取り出し、ベッドに眠る俺とトラベラーめがけて全く同じタイミングで振り下ろした。

 だが、予めベッド下に隠していた自動捕縛ケーブルが起動し、あっという間に襲撃者達を縛り上げる。


「トラベラーが言ってたとおりだな」

「念の為のつもりだったのですが、まさか本当に襲ってくるとは……」


 あんなに嫌がってた相部屋をあえてトラベラーが選んだ理由がこれだ。

 敵の襲撃があるかもしれないから、同じ部屋にいたほうが良い。それが理由で彼女は嫌がっていた相部屋を選んだんだ。


「で、いったい何で俺たちを襲ってきたんだ?」


 縛り付けた襲撃者を詰問すると、やつは血走った目で言ってきた。


「当然、スキルを持たぬ異端を排除するためだ!」


 異端? ってことはもしやスキル教の管理派か。

 トラベラーはもちろんのこと、俺もC.H.E.A.T能力はこの異世界の技術では検知できないのでスキルを持たない人間となっている。

 しかもAAA(トリプルエース)級に昇格したのもあって、それなりに名前が売れてしまっているだろう。

 むしろそういう襲撃が今までなかったことのほうが幸運とすら言える。


「ここは復活された聖女様が治める真の信仰の街。神薬の加護を得た聖なる冒険者がお前たちを必ず殺す!」


 それを聞いた俺とトラベラーは一瞬だけ目を合わせると、迷わず部屋の窓から飛び出した。

 わずかに遅れてさっきまでいた部屋が爆発する。魔法による攻撃だ。


「なんて奴らだ。自分らの味方がいたのに!」


 やったのは外で待ち構えていた敵だ。

 通りの両側から別々のパーティーがいる。おそらくこの街の防衛を担うAAA(トリプルエース)級パーティーだろう。


「みんな! 信仰(クスリ)示す(キメる)ぞ!」


 連中全員が鼻から神薬を吸う。

 神薬の効果でスキルを強化された奴らは異様な興奮状態となって俺たちに襲いかかろうとした。

 俺とトラベラーは手近な建物の屋根に飛び移る。俺もトラベラーも活性心肺法の肉体強化で10メートル程度のジャンプなど余裕だ。

 しかもトラベラーはジャンプすると同時に、下方へ何かを投げる。

 それが地面に当たると破裂音とともに黄色い煙が一気に広がった。


 ヤルリンゴで強引に勧誘してきた冒険者に使った催涙煙幕弾か!

 下から阿鼻叫喚の悲鳴が聞こえてくる。

 今のうちにここから離れよう。

 俺とトラベラーは屋根の上を走りながら相談する。


「で、どうする」

「もちろん、戦います。この街を支配しているのが管理派の言う聖女なら、見過ごすわけには生きません」


 俺たちはマーティンから第二の魔王軍について詳しい話を聞いている。

 奴らが言う聖女。それはスキル教の聖女として尊敬を集めながらも、その正体は管理派であり、人の自由を奪う暗黒管理社会実現のために魔王側についた。

 スキル教ではその名を口にすることすら憚れる人類の裏切り者。

 最悪の醜聞ホリー・ホワイトがこの街にいる!


●Tips

スキル教管理派

 スキルを根拠とした適材適所こそが社会を豊かにするとする分派。しかしその実態は、人生選択の自由を一切認めない暗黒管理社会の実現である。

 元から過激思想として危険視されており、管理派だったホリー・ホワイトが人類を裏切って第二の魔王軍となった際、スキル教の上層部を殺害したことで、管理派は完全なテロリストとして扱わている。

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