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預言者ビュワ

 椅子に座り、窓から入ってきた光を浴びながら少女は外を眺めている。けれど、彼女の瞳に光はない。彼女の瞳には黒い闇が広がっているだけだ。 眼下にはネポルの街が広がっている。彼女はその街を捉えることはできない。彼女は街がある、という認識をしているにすぎない。

 彼女の名前はビュワ。盲目の預言者。彼女は今憂いていた。

 自分がソルデの三人の魔法使いによって連れ去られてしまうことが見えてしまったのだ。それも、明日だということがわかった。

 あまりにも時間がなさすぎる。今から軍を呼んでも遅い。首都から来るでは三日はかかるだろう。自分が逃げる――いや、だめだ。逃げた時の未来も見えてしまった。腹いせに、この街が一人の魔法使いによって破壊され、人々が殺される様を。

 自分が大人しく捕まる方が被害が最少だ、ということを理解した。けれど、大人しく捕まることができるだろうか?

 そう思って、隣に立つ長髪の男に意識を向ける。ビュワのボディガードと呼ぶべき存在の男、レオンに。

 彼が強いことはわかっている。並大抵の兵士や魔法使いなら、彼に勝つことはできないだろう。彼の強さに何度も命を救われたことも理解している。ビュワは今まで何度か敵兵に狙われたことがある。その度に、レオンによって救われているのだ。

 しかし、今回は分が悪すぎる。あまりにも強い存在が、彼女に襲いかかるのだ。

「レオン……」

「なんですか?」

 ビュワは、自分が連れ去られることを言うべきか迷った。言ったら自分が連れ去られる際、何もしないでいてくれるだろうか。

 ――レオン、貴方の死ぬところが見えたの。だから、私を助けたりしないで。

 そう言ったからと言って、従ってくれるやつではない。そんなことはわかっている。むしろ、レオンは私を守ろうとするはずだ、と彼女は思った。

「ううん、なんでもない」

 明日になったら、なんとかしてレオンを遠ざけるしか手はない。成功したら、守れなかったことで彼は自分を責めるだろう。しかし、それしかないのだ。それが、ベストの選択なのだろうから。

 ただ、問題はそれだけではない。死のイメージが見えたのはレオンだけではなかった。

 黒いショートカットの少女の死も見えた。対魔法使いと言うべき針師の少女が、自分を助けようとして死ぬ様が見えた。彼女の名前は知らない。彼女は私に会いに来たようだった。そして――死んでしまう。

 自分が大人しく連れ去られれば、誰も死なない。誰も。

 そして、彼女はそのことよりも気にしていることがあった。世界が破滅する、という言葉だった。

 彼女は未来が知ることがある、未来の知り方というべきか――それは二つある。一つは視覚的に彼女が認識するもの。主に夢という形で彼女の中に、未来の映像が入ってくる。

 もう一つは、突然、彼女の声が直接頭の中に響くのだ。おそらく、それは未来の自分の声なのだろう。それは警告として発せられるものがほとんどだ。具体的な言葉で示される。

 何々が起こるから気をつけろ、何々をしろ、といったことを言われる。

 しかし、今回は違った。世界が破滅する――それだけだった。何が起こるかもわからない。それについての未来もまだ見えていない。逆にそれが、彼女を不安にさせていた。

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