ラティへの道中
「あの、ビュワさんについて……知ってたりします?」
ラティまでの道中、アップルは俺達にそう聞いた。
「ん、なんで?」
「私、ちょっとビュワさんに会ってみたくて……」
へぇ、会ったことないんだ。そういえばどこから来たの? と言った会話が展開されていた。アップルは詰まりながら出身地を答えていた。
「ビュワは未来が見える、盲目の少女。預言者、と言うべきなのかな。生まれた時からその力はあったんだけど、この戦争に入ってから注目されるようになったかな」
「盲目、なんですか」
「現実の世界は見えないけれど、未来は見えるのか」
なんだか皮肉なものだな、と思った。
「盲目な分、何か別な方面で力を発揮するということがあるのかもね」
「ビュワさんのは魔法、なんですか……?」
「なんだか、魔法とは違うらしいよ。それに、彼女のは能動的に未来を見るんじゃなくて、受動的に見てしまう、らしいから。まー、能動的に未来を見れたら万能すぎるけどね」
と言ってサキは笑った。
魔法とは違う、何らかの力の存在。もしかして、俺の力もそう言った類なのだろうか。ミズは俺の魔力が他の何かに使われている、と言っていた。ビュワに会えば、俺の力のこともわかるかも知れないと思った。
「ビュワさんは、ええと……確かソルデが一昨年奇襲してきた時、それを預言したんですよね」
「そうだね。そのおかげで被害を抑えることができた。あの時の預言がなかったら、ラティの街はもうなくなっていたかもね」
「他にはビュワさんは何か預言とかしたりしたんですか?」
「んー、そうだね。この戦争で、何度か彼女に救われているそうだよ。と、言ってもあたしは戦争に行っているわけじゃないから詳しくは知らないんだけどね……」
「そうなんですか……」
「彼女の預言が絶対、というわけではないけれど、その的中率は目を見張るものがあるね。そして、彼女は最近、世界が破滅する――と預言したの」
「世界が破滅、なんてするんでしょうか」
「確かに信じがたいものではあるが……」
けれど、俺は信じるしかない。思い出した言葉がそれだけなのだから。
「するとしたら、どうやって破滅してしまうんでしょう……?」
「戦争を早く終わらせようとして、魔力砲を使うんじゃないか、という話だ」
「魔力砲……ですか。確かに魔法使い次第ではありますが、理論上ではありえますね。ですが、流石に国の1、2を争う魔法使いが魔力をすべて捧げるなんて……考えにくい、ですね……。私は、その線はないと思います……あるなら……」
「あるなら?」
とサキは聞いた。
「この世界を保っていると言われる、五つの石……」
「でも、それは神話上の話じゃ……?」
「そうなんですけどね……私の妄想です……忘れてください」
と言ってアップルは微笑んだ。世界を保つ、五つの石……。俺は忘れることができなかった。