悪魔の迷宮 その1
翌朝、する事もなくボーとしていると、エーデルがやって来た。
「召喚獣は、召喚後に能力が低下する者もあるとわかった。まずは、これを装備するが良い」
昨日と、若干大度が変化している気がします。
「これは、絆リングといって、召喚獣の能力を強化する魔道具だ」
飾り気の無い、腕輪があります。素直に装備する事に、かなり抵抗を感じます。何かの罠だと思うのですが、装備しないと言う選択肢はありません。
腕輪を身に付けると、何処となく変化を感じます。
「今日の所は、迷宮に行ってもらう。後の事は他の物に任せる。あっけなく、死ぬでないぞ」
それだけいうと、エーデルは部屋から出て行く。誰もいなくなったので、ステータスを確認してみる。
名前 柳龍一 レベル1
種族 人 年齢 20
体力 100 魔力 100
力 10 +50
精神 10 +50
器用 10 +50
運 10 +50
ギフト 玩具工房 CAT(封印中)
装備 普段着
絆リング 精神支配ー現在無効-
能力が、軒並み50上昇しています。強化した木刀よりは数値が低いです。大した事ないのかもしれません。ただ、絆リングにマイナス効果があるみたいです。精神支配を無効とあるので、Sランク召喚石のおかげかもしれません。ただ、このステータス、相手が何処まで見ているのか気になります。
エーデルは、あっさり引き下がったので、無効という部分に気づいていないのでしょう。
その後、メイドらしい人が食事を持ってきました。
洋風の、パンがメインで謎の肉とサラダがありました。味は、それなりで美味しかったです。
こちらが食事を終えるタイミングで、別の男がやってきました。
「お前は、どの武器を使うんだ?」
挨拶も無く、いきなりの質問です。
「武器なんて、使った事ありません」
「それで、どうやって戦うつもりなんだ?」
こちらを、馬鹿にした感じがあります。
「敵のこと、戦う場所の事、何も教えてもらっていません。それで、どの武器を使うとか聞くものですか?」
「お前の得意な武器があればいいだろう?召喚獣は、自分の武器があると聞いている」
「私は、戦った経験はありません。素人ですよ」
「召喚獣が、戦えないと言うのか?エーデル様の召喚獣だろ?」
「そうみたいですけどね。事実は変わりません」
「なら、迷宮の入り口に武器庫がある。そこから適当に持っていけ」
「迷宮とは、どんな場所ですか?」
「いけばわかる」
「貴方の役割は?」
「俺は、お前の監視だ。今日一日、お前の事を監視する」
「それは、ご苦労様です」
監視するって、自分で普通言いますか?
「召喚騎士団の2等騎士である私が、なんでこんな任務を・・・」
どうやら、気に入らない任務を押し付けられた様子です。
「エーデル様の役に立つと思えばこそ、受けた任務なのに、なんで召喚獣の面倒を見なければならぬのだ」
「で、どうすればいいのですか?」
「ついて来い」
そう言って、男は私を連れて行きます。部屋を出ると、大きな屋敷の片隅の、小さな小屋にいたというのがわかりました。
そのまま、中庭のような場所を通過して、庭の片隅に移動します。
「この輪の中に入れ」
「これは?」
「転送魔法陣だ。迷宮までのパスは、俺が通す」
いわれるまま輪の中に入ると、次の瞬間景色が切り替わりました。瞬間移動というものなのでしょう。そう言う技術はあるみたいです。
「そこの小屋に、武器がある。好きな物を選べ」
「敵は、どんなのがいるのですか?」
「アンデットと分類される魔物だ。成人男性の姿をした物が多い。動きが遅く、初心者向けの魔物だ」
「弱点は?」
「火属性の魔法、もしくは聖属性の魔法。頭を潰すか、胸にある魔石を破壊すれば死ぬ」
「アンデットなのに、死ぬんですね」
「そう言う魔物だ。死人とは違う」
この男、態度は悪いけど、聞いたことには返事をしてくれます。
小屋の中を見て、槍があったので選びました。剣を振り自信はありません。動きが遅いなら、距離をとって戦ったほうが安全です。
「迷宮の広さは?」
「最初の迷宮は草原だ」
「迷宮なのに?」
「迷宮とは、そう言うものだ」
「中には、他の人はいないのですか?」
「召喚師や、召喚獣がいることもある」
「出会った場合はどうすればいい?」
「基本、無視しろ。敵対した場合は、殲滅。これを身に付けておけば、カラード家の関係者と証明される」
そう言いながら、小さな盾を渡されました。
「槍を持っていると、使えないのですが?」
「背中に背負えばいい」
ベルトがあり、それを調整して背中に背負います。防具関係は皮の鎧があったので、それを装備しています。実戦なんて経験無いので、怖いです。
「ここが入り口だ」
扉があります。扉だけが、何枚も立っている場所です。
「空間魔法使いが、ねじれた空間を固定して、できたのが迷宮である。悪魔の迷宮レベル1がここだ」
こういうのを聞くと、ここはゲームみたいな世界だと思ってしまいます。
「回復魔法とか、ポーションはあるのですか?」
「この迷宮のレベルで、そんな貴重な物は使えない。ここで魔物を100討伐したら任務終了だ」
「解るのですか?」
「討伐数は、記録される。達成したらこの場所に戻ってくる。早く行け!」
「監視では?」
「ここで戻ってくるのを監視する任務だ。待つのは暇なんだ」
男に、押されるようなkんじで、扉を潜ります。次の瞬間、別の場所にいました。
「リアルだと、優しくない世界ですね・・・」
草原らしい場所を、ゾンビみたいに腐食した人らしきものが徘徊しています。腐った匂いも漂っていて、かなりきついです。映像的に、えげつないのですが、色々と受け入れているのが解ります。
召喚獣として作られた影響は、精神を色々と変えている気がします。
「さて、初めての実戦といきますか」
槍を構えて、気合を入れます。この事を、受け入れている時点で、私は変わってしまったのでしょう。
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