召喚獣 その1
「やった、成功したぞ!」
最初に聞いたのは、喜ぶ青年の声でした。
「おめでとうございます」
「ありがとう」
目の前に、見慣れぬ格好をした青年と老人がいます。まるで、異世界転生系の話に登場するファンタジーな姿をしています。
これは、私も転生したのでしょうか?赤ん坊ではないみたいなので、召喚かもしれません。
「我が名は、エーデル・ラ・カラード。英雄よ、その名を教えてくれないか?」
「英雄?」
青年が、私に向かってそう言いました。私は、英雄と呼ばれる存在ではありません。
「異世界で、賞賛を浴び、数多くの勲章を得た存在を召喚したのだ。英雄で無いければ、何というのだ?」
言っている事は、理解できません。
「若様。人の召喚に関しては、相手も混乱しております。まずは、説明をすべきでしょう」
「召喚獣は、我がしもべ。その必要は無い。我の言うことに、答えれば良い」
「召喚獣?」
異世界召喚では、無いのでしょうか?定番の、ステータスと言うのはあるのでしょうか?
試しに、心の中で、ステータスオープンと念じて見ます。
名前 柳龍一 レベル1
種族 人 年齢 20
体力 100 魔力 100
力 10
精神 10
器用 10
運 10
ギフト 玩具工房 CAT(封印中)
装備 普段着
見れるものですね。数値が一律10と言うのは不思議です。年齢も、私は40歳だったのに、若返っています。腰痛がなくなっているので、嬉しい限りです。
ギフトと言うのがあり、一つが封印中というのも気になります。
玩具工房というのも、何となく使い方は解りますが、実践しないと何ができるか解りません。
青年と老人は、何か言い合っていましたが、青年がこの部屋から出て、行って言い合いは終わりました。
老人は、この家の執事で、色々と事情を説明してくれました。
先程の青年は、エーデルといい、このフォレス王国の貴族だそうです。
公爵家の長男という事なので、かなり位の高い人物だと思います。
この世界は、魔法があり、その中に召喚術と言うのがあるそうです。召喚石というものを使い、異世界から色々とした物を呼び寄せる術。
それによって発展した世界らしいです。勿論、良くないものを召喚して、酷い災害が起きたこともあるようです。現在、この国は、魔界と呼ぶ世界と戦争中だそうです。
何故戦争をしているのかという事は、教えてもらえませんでした。
ただ、召喚獣そ言う存在に関しては、色々と衝撃でした。
条件を込め、召喚石を使用するとこで、異世界からの存在の複製を作る。
召喚石のランクで、呼べる存在が変わり、その結果も変わる。
同じ存在を望んでも、同じ結果が得られるとは限らない。
下級の、魔物召喚石だけは、同じ存在を呼び出せるが、それ以外は違う結果になる。
今回、召喚石のランクはSランクの貴重な物を使用したらしいです。望んだ事は、世界的に多くの賞賛を得て、多くの表彰を得た人物。1億人を超える回数の賞賛をえた人物。という条件らしいです。
それだけの賞賛をえるというのは、この国では軍人で武功を立てた人、英雄という認識みたいです。
私は、戦った経験はありません。ゲームの中ではありますが、実戦はないです。ただ、SNSなどで、多くの賞賛を得た経験はあります。
趣味のプラモデル、ネット上で賞賛されました。コンテストに入賞したことも多数あります。これが、条件に該当したみたいです。
馬鹿ですね。
聞けば、王家継承の儀式で、4つの家の代表が、お互いの召喚獣で戦うらしいです。そのために、私は召喚されたみたいです。
「私は、複製という事らしいのですが、どういう意味でしょうか?」
「ヤナギ殿が、一番戦いやすい年齢で、この世界に作られたのです。人造人間に、仮初ではない魂を宿す。それが召喚獣の極意です」
「私の、人権は保障されるのですか?」
「人権?」
そういった瞬間の老人の目を見て、私は悟りました。完全に、こちらを見下しています。
「召喚獣は、召喚獣というものです。若様のために、戦うだけの存在です」
「私には、戦う能力はありません」
「しーえーてぃと言うのは、そちらの世界で何を意味するのかな?」
「CATといえば、猫でしょう」
封印中となっているギフトです。
「猫ですか・・・。解りました。戦うしか、ありません。明日より、迷宮に行ってもらいます。武器などはこちらで用意します。今日の所は、ここで休んでください」
そう言って、老人は出て行きます。改めて、部屋の中を確認すると、粗末なベットがありました。
似たような設定のゲームを、昔やった記憶があります。人工生命体に、魂を宿す。あの老人は、言っていないのに名前とギフトを知っていました。こちらの情報を見る手段があるのでしょう。
元の世界に戻りたいという考えが、浮かびません。言葉が通じるのは、そう言う風に作られたのでしょう。
この辺りは、そう言うものだと強引に思い込みます。色々と、言いたい事はありますが、異世界転移をしたと思うことで、割り切ります。
条件は、かなり悪い事も理解しました。あの老人の態度と、青年の様子から、良い印象を持たれてはいないでしょう。最策、処分される可能性もあります。
生き残る為に、まずは自分のできる事を確認しましょう。
もしよろしければ、ブックマークや評価をしてもらえると嬉しいです。
ポイントを入れてもらえると、励みになります。