4話『稼ぎ場 2』
金曜日の夜。灰はもう一人の仲間を呼び出した。
魔法を発動させると、ガラス細工のように繊細で細身。騎士が現れる。
魔力を消費して現れた騎士の正体は、精霊。
エルフの村で契約した精霊が死んでしまったが、身体を構成していた魔力は循環して他の精霊の一部となって新しく生まれ変わった。
それが今の精霊なのだ。
今は何をするか、というと名づけである。
リベレッサ曰く精霊個人に名を付ける必要性はないが、強力な精霊になれば名を与える事で他の精霊と同じ群衆ではなく個となり、個性も生まれるため名づけは必要だという。
そして、灰が新たに契約した精霊は、元の精霊であるヴァシュマリーの魔力を引き継いでいるため、最初から強力なのだ。
呼んだ精霊に、なんて名付けようか考えていると……。
シュンッ! と消えてしまった。
「はっ!?」
消えた事に、灰は思わず声を出してしまった。そして、
「リベレッサッー!!」
ヘルプを出した。
「もしかしたら、時間制限なのかも。普通の精霊とは違うかもしれない」
先程の事情を説明すると、リベレッサはそのような回答を出す。
「普通の精霊なら、わざわざ呼ばなくてもいるようなものなの。人に例えると、空気みたいな感じ?」
「もしかして、ここにも?」
「うん、いる。だから、やろうと思えば今も使えるよ」
なるほど、そこが俺の精霊と普通の精霊に違いなのか。
「あと長が言ってたけど、灰の精霊はまだ弱い状態らしいの」
「弱い?」
「うん。生まれたばかりの赤ん坊で、戦ったこともないから」
確かに。俺の精霊は契約したばかりだ。
リベレッサの言葉に灰は納得する。
「なら、戦って強くするしかないのか」
呼べる時間、制限時間もある。それも調べないといけないし、一日に何回呼べるかも確認しておきたい。
まずは一日に何度呼べるか試してみたが、再び現れることはなかった。
翌日の土曜日の夜。買い物が終わった後、灰は精霊にどんな名前を付けるか考える。
オリジナルでカッコいい名前なんて思いつかず、元の名前をモジろうとスマホを使って探すと、とある名前に行きつく。
「セラフィム。――天使の名前か」
ただ、灰のは天使ではなく精霊だ。全く違う。
しかし、惹かれてしまった。
「セラフィム。……セラフィム。……セフィラス。……セフィロト」
元ののセラフィムを弄った名前を、ぶつぶつと呟く。
そして、
「……セフィラム」
自分の中で、一番しっくり来た。
よし、と決めた灰は精霊を呼び出す。
「お前の名はこれからセフィラムだ。よろしくな」
名を付けると、細身の騎士の精霊であるセフィラムは、膝を着けて騎士の挨拶でもするように、頭を垂れた。
喋れないからこそ、セフィラムなりの挨拶なのかもしれない。
呼んでから一分後、セフィラムは消えた。
セフィラムの制限時間は一日一回の一分、という僅かな時間だ。
六階層から十階層まで、洞窟のような感じになっている。
ごつごつとした岩肌。幸い、地面は平坦なため転ぶような事はなく、足場はしっかりとしていた。
出現する魔物はスライムに狼系の魔物のハロンドと呼ばれる魔物、二種類だけだったが、新たにオークが追加される。
豚が人のように、二足歩行で移動する魔物であるオークは巨体。人よりも一回り大きく、そしてゴブリンほどではないが一度の戦闘で複数と戦う事になった。
それ故に、直人はパーティーを組んでいるかという助言をしたのだ。
さらにいえば、灰のいる場所は人があまり通らない奥深くであり、そのため魔物の数もかなりいる。
今回出会ったのは、四体のオーク。
武器として、右手に長く丈夫な木の棒を握りしめており、それで撲殺するのだろう。
灰達を見つけたオークは、走って距離を詰めてくる。
だが、出会った位置が悪い。目に見えて離れているのだ。
その距離は、リベレッサの間合いでもある。
落ち着いた四射。
三体のオークが瞬く間にやられ、残り一体となったオークが死を悟り、背を向けて敗走しようとしたが、そんな暇もなく背中に矢が突き刺さり、倒れてしまった。
倒れたオークが居た場所には死体はなく、代わりにあるのは四つの魔石と、布に包まれた物が二つ。中々の大きさだ。
「ふう、今日はツイてる! オークの肉が二つだ」
冒険者初心者の最初の稼ぎ場、それがオークの肉だ。
魔石は強い魔物ほど、魔石が大きく高純度である。そのため高値で売れるのだが、弱い魔物は高くは売れない。
しかし、素材は違う。
魔物の肉、特にオークも強い魔物ほど高品質で旨味も凝縮されている。
しかし、六階層から現れるオークもまた、売れる。購入層が違うのだ。
安価で売られるオークの肉を買うのは、少し奮発したい奥様層。祝い事なんかにも買ったりするため、意外と売れる。
その売値は魔石の二倍から三倍以上。
魔石を取るついでに、ランダムで落ちるのだ。良い収穫である。
ただ問題があり、オークの肉が大きくて鞄に入らないのだ。
ゲームのように個数や重量ではないため、入りきる量が決まっている。
空間魔法や何でも入る魔法の鞄がある、という訳でもないため、一回で取れる数は決まっていた。
今はまだいい。平日の短い時間でダンジョンに潜るのだ。
取れる量が決まっている。しかし、休日に一日潜っていた場合は溢れてしまう。
お金が溜まったら、魔法道具の鞄でも買うかと灰は密かに決めた。
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