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ダンジョンの魔物使い  作者: 佐藤龍
『テイム』
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8話 『地下三階』

 ハロンドの『特異個体』をテイムした。

 大きさ、見た目は変わらず、目の前に座っている。お座り、と呼ばれる姿勢で。

 はっは、と口を開けて呼吸する姿はまさに犬だ。こういう場合は狼犬と呼ぶべきなのだろうか。

 

 一先ず、テイムしたハロンドをスマホに戻し灰は家に帰るため早足で上への階段を目指す。

 目的である、ハロンドの特異個体のテイムはもう済んだ。早く帰らなければ、ハロンドの群れが襲って来る。

 テイムする前、ハロンドの特異個体は群れを率いていてそのリーダーだった。その群れから逃げる為に消臭スプレーを使って撒いたが、まだこの近くにいるはず。

 

 匂いで分からないからといって、ばったり遭遇する可能性もゼロではない。目的が済んだ以上、ここに用はない。

 数回ハロンドと戦いつつ、灰はダンジョンを後にした。

 

 

 

 夜、家に帰った灰は寝る前にハロンドの特異個体を召喚する。現れたハロンドはお座りの状態で目の前に座っている。

 こちらをジッと見て口を開けて息をしているのだが、魔物の時にあった気迫というものを感じない。

 

 動物動画で、野生を忘れた生き物という名目の動画を見た事あるのだが正に今のそれである。

 テイムというよりも、完全にペットだ。

 

「お手」


 右前足の前に手を開くと、ポンと乗せてくれる。

 完全にペットだ。

 ハロンドの特異個体が完全にペットになった事が分かり、灰はまずはステータスを確認しようとした時にテイムのタブ欄に気になる数字があった。

 二分の二、と二つ数字の二の間に/が入っている。それはまるでテイム出来る数を表しているようだ。

 

 もうテイムできない、ということか? 流石にそれはないだろうが最初にしては少なすぎる。もう少しあっても良いだろうに。

 最初に二匹しかテイム出来ないことに不満を持ちつつ、灰はハロンドの特異個体のステータスを確認する。

 

「体力E、魔力F、膂力E、頑強F、俊敏D、器用F、英知Eと。スキルは威嚇か」

 

 威嚇、というのは犬が通行人とかを吠えたりするアレだろうか。危険人物を教えるような。

 今の灰にはテイムしたハロンドがペットという印象が強いためか、そんな風に考えてしまう。

 きっと強いのだろうが、それはまた後日。

 

 狼ということもあってパラメーターで一番高いのは俊敏、素早さのことだろう。その代わりに防御は弱い。ゲームで言う紙装甲と呼ばれる類だ。

 これを生かすために、遊撃に回った方が良い。

 

 テイムしたハロンドをどう生かすか、にやにやした顔で考えていると今すべきことに気づき、顔を横に振って忘れさせる。

 そんな事よりも先にすべきは名づけだ。

 

「お前の名前、どうしようか」


 よっこらしょ、とベッドの縁に座った灰はハロンドを撫でながら考える。

 柔らかい手触りに、ずっと撫でていた衝動に駆られるがグッと堪える。撫でられているハロンドは、気持ちよいのか目を細めていた。

 出来るのならカッコイイ名前が良いと思い、考えるが浮かばず終いにはスマホを取り出して外国の翻訳機能を使って何かカッコいい名前はないか探し、ようやく決めた。

 

「お前の名前はヤークトだ」


 わふっと応えるハロンドもといヤークトだが、やはり狼犬にしか見えなかった。

 

 

 

 地下三階には新たな魔物が増える。ゴブリンだ。

 ハロンドもいるらしいが、割合では七と三でゴブリンの方が多い。四階、五階になると魔物同士が連携するらしいが、三階にはその心配はない。

 三階に降りた灰はいつも通り、正規ルートから外れて二匹のテイムした魔物を召喚する。

 

 スラ参とヤークトが向かい合う様に現れると、両者共に微動だにしない。

 何があった? 喧嘩か? と灰が混乱しているとヤークトが伏せをした。その意味を理解したスラ参は両手を腰に置いてエッヘン、と誇るような動きを器用にして見せ、盾に貼り付いた。

 

 これはあれか? 一番と二番決める的な、あれだろうか?

 二匹のテイムした魔物に何があったのか分からないが、灰はヤークトを連れて一緒に歩く。

 ヤークトは隣を歩き、警戒している。ハロンドは元々、鼻が利く。さらにヤークトは特異個体であり、消臭スプレーの化学薬品すら嗅ぎ分けるほどだ。

 

 近くに魔物が来れば、分かるのだ。

 ワンッ! と敵意剥き出しの吠えに灰は敵が近くにいるのだと悟る。警戒して歩くと、正面から一体のゴブリンが歩いてきた。

 幼児のような大きさ、緑色の肌でクリクリとした大きな目が印象的だ。右手には自分と同じくらいの長さをした、木のこん棒を持っている。

 

 一体か、どれほどの強さか分からないけど……。

 

「ヤークトは遊撃に回ってくれ。こちらで隙を作る」


 簡単な作戦会議にヤークトは吠えて応え、灰は走り出した。それに合図するように、ゴブリンも灰を狙って地面を駆けた。

 

「スラ参、いつも通りお願いね」


 喋らないスラ参は返事をしないが、盾の内側まで触手を伸ばすとサムズアップした。

 ゴブリンが灰に向かってこん棒を振り下ろすが、あっさりと盾で受け止める。ただ、その盾は生きていた。

 こん棒をスラ参が受け止めると、絡めとられてゴブリンの力では離すことが出来なくなっている。

 取れないと悟ったゴブリンはこん棒を手放すが、それを待ってましたと言わんばかりにヤークトが強襲した。

 

 そこからは地獄だ。テレビでよくある見せられません、という状況がゴブリンに起きていて、気づけば魔石になっている。

 ヤークトが魔石を咥えてこちらまで歩み寄ると、褒めて褒めてと目を輝かせ尻尾がブンブンと左右に大きく振っている。

 

「偉いぞー」


 魔石を回収して頭を撫でていると、羨ましいと感じたスラ参もヤークトの背中に乗り、身体を大きくこちらに反らせている。

 褒めて欲しいのだろうと悟り、灰はスラ参ももう片方の手で撫でた。

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