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ダンジョンの魔物使い  作者: 佐藤龍
『テイム』
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6話 『地下二階』の攻略

 『ハロンド』を無事に倒すことが出来た灰は、それから毎日のように地下二階で戦っていた。

 『テイム』しているスラ参を使う関係上、正規ルートから外れた場所にまで移動しないといけない。

 それは人があまり通らない場所ということもあって、ハロンドが良く集まっていた。

 連戦だ。スラ参盾を活用しつつ、ハロンドを効率良く倒す。

 スラ参盾を使って分かった事だが、戦闘中にハロンドが飛び掛かった時に盾で受け止めると、スラ参が掴んで拘束したことがあった。

 

 良い発見だ。最初はただ衝撃を殺す、という事を目的としたがスラ参は生きている。即ち、盾は生き物だ。

 傍から聞けば、こいつ大丈夫か? と頭を心配される内容だがテイムの情報があれば灰の言う事も理解できる。

 そこからは、ただ戦うだけでなくスラ参盾の活用方法を上手く生み出そうと考えながら戦っていた。

 

 不意打ち気味にスラ参が溶解液を吐き出したり、近づいてスラ参が一部形状を触手のようにして攻撃したりなど、今後に上手く活かせる戦いが出来たと灰は実感する。

 ハロンドとの戦いが効率良く進み、特異個体との戦いも目前に迫りつつある時に灰は毎日のようにダンジョンに潜っていた。

 

 学校がある日はそこまで長くは潜れないが、休みの日はほぼダンジョンの中で過ごす。

 食事は持ち運びできて食べやすいおにぎりやパンを買い、魔物が出てこない内に素早く食事を取る。

 スラ参が見張りをしてくれるので、非常に助かっていた。

 

 その日も学校帰りにダンジョンを潜った後、換金して帰路に着く。

 スライムよりも微々たる程度だが報酬は良く、運が良ければアイテムがドロップすることもある。

 それも換金素材のため、売ると魔石よりも値が付く。

 一人で戦っていた時と比べれば、全然違う。

 魔物を倒す量も、精神的疲労や肉体的疲労が。誰かと一緒に戦うという喜びを、灰は今にして実感した。

 

 ただ、それは魔物で誰かと組む場合にはスラ参は使えない。

 灰の戦闘スタイルだって、スラ参がいるからこそのものだ。誰かと組めば、それも変わって来る。

 今の灰には他の誰かと組む、という考えは持っていないかった。

 

 

 

 灰が換金して武蔵之支部から出て行くのを、一人の女性が後ろ姿を眺めている。

 彼女は武蔵之支部の受付担当の事務員、工藤リオンだ。

 金色のウェーブがかった髪に日本人離れした顔立ち、スタイルの良い体系でモデルにスカウトされそうな女性である。

 父がイギリス人で母が日本人のハーフで、日本育ち。父の血を引き継いでいるせいか、子供の時から外国人のように見られていた。

 

 大学を卒業して、公務員である世界ダンジョン管理機関≪LMO≫の日本支部局に就職して二年。

 今は武蔵之支部の冒険者に関する管理を任されていた。平たく言えば、冒険者の窓口である。

 リオンは冒険者の窓口となって二年、多くの人間を見て来た。

 

 優秀だった人、ナンパしてきた人、卑屈だった人、吹っ掛けようとした人、そして死んだ人。

 一番忘れられないのは、やはり死んだ人だろうか。今まで元気だったのに、ダンジョンに行って気づけば死んでしまう。

 最初はショックで仕事が手に着かなかったこともあったが、今は死に慣れていた。悲しみはする。

 だが、死を知っても仕事を捌けるようになった。慣れ、というものは怖い。

 

 そんな時だ、高校生が冒険者になった。それも一年生。

 冒険者になるのにもお金がかかるのに、武器や防具を揃えるのだってお金が必要になる。

 なるのは大学生からが多いということもあって、非常に珍しかった。それが印象的で記憶の片隅に覚えていた。

 

 彼が冒険者になって一週間ぐらいしてから、ボロボロな状態でダンジョンから出てきたのを視界の片隅に入る。

 無茶をしたのだ。そんな冒険者を今まで何人も見て来た。

 だからこそ、彼はもう冒険者を辞めるかもしれないと密かに思ったが、彼は翌日にはまたダンジョンに入っていく。

 

 死を間近に感じて、怯む所か彼はダンジョンにまた挑戦する勇気がある事に驚いた。

 冒険者の中には、死にかけた事が切っ掛けで引退した人もいる。だから彼も引退するものと思っていたが違う。

 

 それから一ヶ月、彼はようやく地下二階に踏み入れた。

 

「あの子もようやく地下二階に行ったわね」


「うわーん、負けたー」


 灰が一階でスライムばかり倒していたのは有名だ。それ故に、受付では暇つぶしで灰がいつぐらいで二階に行くか、賭けをしていたのだ。

 それは褒められたことではない。しかし、彼女らなりのストレス発散方法でもあった。

 リオンは間近でそんな賭けがあった事を知り、嘆息する。

 

「私達がそんな賭けをするなんて……」


「だって仕方がないじゃない? あの子、ずっと地下一階でスライムを狩ってるんだから」


 灰がスライムばかり倒すのは、有名な話だ。来る日も来る日もスライムを倒し続けて一ヶ月。高校生ということもあって周りから目を引くし、注目の的であった。

 冒険者の中で付いたあだ名がスライム坊や。

 

 彼が二階に行った事は褒めるべきだ。だが、リオンとしてはあまり好ましくは思わなった。

 高校生が自分の命を対価に危険な事をする、というのは止めるべき事だ。

 しかし、彼を止めるものは誰もいない。

 

 だから彼女が出来ることはただ一つ。無事でいるように願い続ける事。そして、いつものように仕事をして冒険者を支援することだ。

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