表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンの魔物使い  作者: 佐藤龍
第二章 林間学校と災厄
54/111

28話『森へ 2』

 灰は少し、嘘をついた。正確には、真実を言えなかった。

 冒険者ではある。しかし、テイムの事まで言うことが出来なかった。その理由は師匠である真由の言われた通り、話すべきではない、そう判断したからだ。

 それに、魔物が仲間だと知って何をするか、どう動くか怖いというのもある。友人でも、心の奥底までは読めない。もしかしたら、テイムした魔物を倒そうとするかもしれない。

 

 色々な可能性を考慮した結果、話すことは出来なかった。

 直人を見送った後、灰はコテージにいる四人に、近くにいるクラスメイト達に情報を共有するために連絡しに行くことを説明する。

 スマホを使えればいいが、現在は使うことができない。使えない以上、足で皆に説明しないといけない。

 

 もしゴブリンや魔物が出らず外にでて、誘拐されば事だ。幸い、悲鳴は聞こえないため誘拐はされていないようだが、早めに動いた方が良いだろう。

 四人に事情を伝えた時、森田がバッ!! と勢いよく立ち上がる。

 

「俺も手伝う!」


「え?」


 手伝うと言われるとは思っておらず、灰は戸惑う。何故そんな事を言ってきたのか、戸惑って思考が一時停止する。

 再起動したのは数秒経ってから。正直に言って邪魔だ。一人で行ったほうがいい。

 それに、クラスメイトのコテージを一軒回るのに、時間にして三十秒もかからない。それほど近いのだ。

 だから、手伝いは不要なのである。

 その事をやんわり、オブラートに包んで説明するが、森田は曲げない。絶対について行く、と言わんばかりだ。

 

 どうやって諦めて貰おうか、そう考えていた灰だが有島からフォローが入る。

 

「森田、諦めろ」


「なんで!?」


 厄介な邪魔が入った、と森田は有島は敵意の籠った視線をぶつける。それは明らかに異常。クラスメイトに向けていい視線ではない。

 敵意を向けられているにも関わらず、有島は諭すように説明をした。

 

「だって、森田は本当に助けようと思って行動しているのか? 違うだろ。全ては言わないけど、助けようと思って行動する奴の目じゃない」


 キッパリと断言され、森田は怯む。有島の言葉が少なからずとも当たっていたからだ。

 助けを求めるように弧村と管に視線を送るが、二人はジッと森田を見るだけ。助けようとはしない。

 二人も有島と同じように言葉には言い表せない何かを感じており、フォローしようとは思わなかった。助けがないと知った森田は、肩を落として灰について行くことをやめた。

 

 一人、外に出ることになった灰だが、仲間がいる。スラ参とヤークトを呼び出してもいいが、直人は灰以上の察知能力がある。

 そのせいで二匹を呼び出す事をせず、ヤークトだけを呼び出すことにした。

 ヤークトは狼系の魔物ということもあって、匂いに敏感だ。ゴブリンや他の魔物が近づいてくれば、教えてくれる。

 

 クラスメイトのコテージは四つ。一つ一つの間隔はそこまで離れておらず、三十秒もあればたどり着けるのだが、霧に包まれているせいで視界が遮られていた。

 それでも、大体の場所は頭の中にあるため問題はなく、ここでは冒険者としての力を発揮できる。

 

 本来なら、冒険者としての力はダンジョンの中限定だ。しかし、ここでは何故かダンジョンの中という判定になっていた。

 それは何故か、考えるとすぐに察する。

 紫色の瘴気はエルフのいる森で流れていて、魔物をおびき寄せている。それがこちらでも流れているということは、本来交じり合わない二つの世界が重なっているという事。

 

 前兆はあった。料理を作ろうとした時、スマホの電波が繋がらなかった。それは今もであり、二つの世界が重なり合った事が原因だ。

 ただ、重なり合った事で灰もエルフの世界に行けたのだが。

 いつもなら重なり合った世界はすぐに離れる。しかし、ゴブリンがこちらに迷い込んでいるという事は、離れるということはないのかもしれない。

 

 そして、重なってしまった根本的な原因はエルフの森の奥で封印されている化け物、あれが目覚めようとしているからだ。

 まずやるべき事はクラスメイトとの安全確認と連絡、その後にエルフの世界に行って封印されている化け物と戦いたい。

 

 まずは第一目標である、クラスメイトに連絡をしに行った。

 コテージ同士の距離が近いということもあって、魔物に遭遇することなくコテージに着いてクラスメイトに説明する。

 皆が驚き、信じられないという顔をしているが、霧に包まれている世界を見て納得したような頷いた。

 一軒目、二軒目と続いて三軒目の時だ。

 残り最後、と少しホッとした時とその言葉を聞いて絶望した。

 

「は? 外に出た?」


 男子クラスメイトの言葉に、灰は驚きを隠せなかった。中を見れば、三人しかいない。

 本来、一つのコテージに六人いるはず。ということは三人いない事になる。

 コテージで寝泊まりするのは班ごとに分かれており、三軒目のコテージはクラスカーストの中ではトップに位置しているグループだ。

 

「ああ。俺は止めたんだが、赤石達が面白そうって言って」


 赤石は確か、東雲の幼馴染とかいう……。

 普段使わない脳を使い、記憶の奥底から掘り返す。

 

「まじか」


 面倒事を増やしがって、と心の中で恨み言を漏らしていると、

 

「そういえば、東雲達も誘おうって言ってたような」


 咄嗟の出来事に思い出したように言うクラスメイトに、灰はもう言葉を出すことができなかった。

 少し、現実逃避しながら四軒目のコテージに行くと、女子が三人いなかった。計六人、いないということになる。

 

 クラスメイトを探す、という追加の仕事が入った。後回しにできるならいいが、魔物に誘拐される、もしくはされた事を考えると早期発見が好ましい。

 エルフの方に行く前に、クラスメイトを探す。

ブックマークの登録、よろしくお願いします。

下の方に評価や感想が出来ますのでしてもらえると、励みになりますので何卒よろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ