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ダンジョンの魔物使い  作者: 佐藤龍
『テイム』
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4話 『スライム』の検証 2

 学校が終わり、灰はすぐにまたダンジョンに挑戦する。スライムの検証もとい性能試験をするためだ。

 一階はスライムが出現し、忌み嫌われているため戦う冒険者は少なくそそくさと下の階層に潜っていく。

 既に下へ向かうルートも分かっているため、灰は人との接触を避けるために敢えて正規ルートから遠い所へ移動する。

 スライムが出てきても良いように、聖水も勿論購入済みだ。

 

 スマホを操作し、スライムを召喚した。目の前に現れた光の粒子は集まってスライムの形となり実体になる。

 

「今日もよろしく」


 挨拶をすると、スライムはコクリと頷くような動きをした。

 まず最初にやるべき事を、灰は既に決めている。それは名付けだ。

 ステータスの画面でも、名前の欄が空白であった。

 そのため、名づけという行為は有効なはずだ。それで信頼関係を築けていきたい。

 

 スライムの名前を何にしようか、その事を学校にいる間ずっと考えていた。

 信頼関係を築くのだ。そうなると目上の相手に接するような感じ名前が良いのではないか、と考えた灰が決めた名前は、

 

「よし、今日からお前はスラ参だ」


 どこかの有名なゲームに出てくる、スライムの名前っぽいものだった。

 パクリやリスペクトをした、という訳ではない。ただ単にさん付けをしたら友好関係が築けるのではないか、と安易に考えての事だ。

 スライムもといスラ参と名前を付けられ、スラ参は喜ぶように身体を左右にリズミカルに動いている。

 

 喜びの舞なのだろうか、身体が丸いせいで分からないが喜んでいる、そう思っておこうと灰は決めた。

 名前を付けるという第一ステップが終わり、次は第二ステップ。実戦だ。

 スラ参についてくるように命じてスライムを探すと、すぐに見つかった。

 

「スラ参、行ってこい!」


 二匹のスライムの死闘が始まった。

 スライムはこちらを補足すると、ぷっちょぷっちょと跳ねて近づいてくる。スラ参も同じような動き、間合いを詰める。

 スライムの動きが非常に可愛く癒され、幼稚園の運動会の気持ちになる。応援したくなるのだ。

 

 先手はスラ参だ。テイムしたせいかそれともテイムしたスライムの性能が高かったのか、スラ参はスライムに飛び掛かる。

 二つの丸い塊がぶつかると、スラ参はスライムを取り込むような動きを見せた。

 ほう、形を変えられるのか。

 

 戦ってきたスライムのほとんどが、丸いままで形を維持をしていた。だが、今のスラ参は薄く広く、スライムを取り込もうとしている。

 スライムも必死に抵抗しているようだが、傍から見てどんな抵抗をしているのか全く分からない。

 

 スラ参がスライムを完全に取り込むと、もぐもぐと噛むような動きを身体全体で表現するとぺっと石を吐き出した。

 それは魔石だ。取り込んだスライムの物だろう。

 拾い上げ、ポーチに入れるとスラ参がこちらに近づいて、褒めて褒めてと子供が媚びるように身体を器用に伸ばして左右に大きく動かしている。

 

「よくやったぞ」


 スラ参を撫でると、褒められて嬉しいのか灰を中心に周りを回っている。

 ちょろいな。スラ参の喜怒哀楽が分かりやすくて、非常に助かる。これで分かりにくかったら、信頼関係を築くのが非常に難しくなる所だ。

 スラ参はスライムを倒せた。これにて第二ステップは終わった。スラ参が倒せるのなら、聖水は必要なくなる。

 

 ならスラ参ばかり戦わせるのか、と問われると全然違う。スラ参は確かに倒せるが、聖水をかけた方が早く倒せる。スラ参が一匹倒している間に、聖水で三匹以上はやれる。勿論、探す時間を除いて、だ。

 

 だから今日も聖水は使い続ける。次のステップは、スラ参のステータスにあるパラメーターの頑強を調べる。

 パラメーターは体力、魔力、膂力、頑強、俊敏、器用、英知の七つ。スラ参は頑強だけがCで、他はF。スライムと戦う限り、Fが一番最低なのだろう。

 

 このダンジョンではスライムが最弱と言われているからだ。それでも、頑強だけがCで特化している。そこを上手く使えないか、今日の一番の本題だ。

 もし期待通りなら、地下二階に行ける。この一ヶ月、地下二階に行けず、一階で足止めを食っていたため、灰は行きたいという欲求が日に日に高まっている。

 

 そのためにも検証だ。

 スラ参の頑強を生かすために、他全てを捨てる必要がある。守りだけに集中してもらう。ダンジョンに来るまで、どうしようかと悩んでいたが先程のスライムとの戦いで一つの答えを得た。

 

「スラ参。お願いだけど、盾に張り付くことはできる?」


 盾をコンコンと右手で叩くと、スラ参は理解したのか盾に飛びついた。べちゃりと、柔らかい物がぶつかって潰れたような音がして、そのままの形をスラ参は維持している。

 やはり、物にくっつくことはできるのか。

 スライムを取り込む時に、スラ参が形を変えた事でヒントを得たのだ。

 

 推測が当たり、灰はホッと胸をなでおろす。

 もし当たっていなければ、今日一日悩む所だった。スラ参盾を持ったまま、灰はスライムを探した。

 歩いて少しだが、欠点が一つ見つけた。スライムの重みを背負ったまま歩く、という事だ。

 スラ参が盾に張り付くのだから、それは当然でもある。

 

 スライムはすぐに見つかった。

 いつもなら先手必勝とばかりに聖水を投げるのだが、今回はそんな事はしない。まずは攻撃を受ける。

 スラ参になったことで、どんな風に変わったのか確認しなくては。

 スライムはこちらを補足すると、飛び跳ねて接近し体当たりをしてきた。

 

 避けれるほどの遅さだが、敢えて盾で受け止める。

 スライムが押してくる衝撃を灰は感じた。ただ、それだけだ。痛みは感じない。

 体当たりした衝撃でスライムは後ろに下がって助走の距離を稼ぐ間に、灰はスラ参に盾から離れるように指示を出す。

 

 スラ参盾で受け止め、つぎにスラ参盾ではない場合も検証しなくては効果がどれほどのものか調べないといけない。

 身構えていると、スライムが体当たりをする。

 ドシンッ! と重みのある衝撃が灰を襲う。

 人が両手で思いっきり押すような衝撃だが、一ヶ月冒険者としてスライムを刈り続けたこともあり、たたらを踏むことはない。

 逆に言えば、初めて受け止めていればよろめいていた事だろう。

 

 初めてスライムの体当たりを受け、少しばかり驚きを隠せない。

 弱い魔物だと見下していた。だが、予想以上の衝撃に、魔物という存在は侮れないと心の奥底で理解した。

 油断しては駄目だな。

 左手の盾でスライムの体当たりを受け止めながら、灰は右手でポーチを開けて聖水を取り出してスライムにかけて倒す。

 

「よし」


 スライムの魔石を回収しつつ、今回の検証は全て終わった。

 これなら、地下二階に行っても問題ないだろう、そう灰は決定づける。

 すぐに二階へ行きたい所だが、まずは魔石を換金したい。それに二階の情報も調べなくてはいけない。

 もう、あんな失敗は御免だ。

 

 灰はスラ参をスマホで召喚と同じように操作して戻した後、ダンジョンの出口に向かった。

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