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ダンジョンの魔物使い  作者: 佐藤龍
第二章 林間学校と災厄
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6話『エルフ』

 木々の上から視線を感じ取りながらも、灰は動けずにいた。殺気がビシビシと身体に突き刺さり、動けば矢で撃たれると理解しているからだ。

 ただ、相手には何かしらの対話をしたいはず。でなければ、最初の一射は灰に当てているはずだ。

 

 ゴブリンとの戦闘中で撃たれた矢は、灰の近くの地面に突き刺さっている。明らかにこちらに気づかせる意図をもっての事だろう。

 しかし、本当に相手が対話を求めているかどうかは、まだ分からない。

 

 今、灰が出来ることは相手の出方を窺うのみ。ヤークトは警戒してか、唸り声を上げている。

 灰が相手を待っていると、誰かが木の上から降りて来た。

 すらりとした長身の男性だ。染み一つない白い肌に、キラリと輝くサラサラな金色の髪、アメジストのような紫紺の目。美形に入る部類で、寡黙そうな大人のような男性。

 

 だが、人とは異なる点が一つ。髪から覗く耳が長く尖っているのだ。

 エルフ、彼らはそう呼ばれる種族であった。

 

 

 

 他種族はダンジョンが生まれた今、当然のように存在する。彼らが生息するのは当然ダンジョンの中。

 灰がよく行く武蔵之ダンジョンにも、当然ながらいる。コミュニケーションは取れるらしいが、現状は敵対関係にあってか基本襲われる。

 その理由は最初に最悪の対応を取ったからだ。

 

 悪化した関係を戻そうにも、戻すには時間がかかる。それは歴史が証明している。

 だからエルフに出会った対応は一つ、逃走だ。

 彼らは群れを成す。戦おうとすれば、どこからか仲間がやってきて集団で襲われる。だから、基本的に出会った場合は逃げる事を進められる。

 

 それに、彼らには精霊魔法と呼べる特殊な魔法があり、その魔法が彼らを強者として位置づけていた。

 そんな人と敵対する種族と出会った灰は今、一緒に歩いている。

 気持ちは罪を犯した犯罪者の気持ちであり、前後にはエルフの集団。彼らは武装していて、非常に居心地が悪い。

 

 さっきまで唸り声を上げていたヤークトも唸り声を上げずに隣を歩いている。灰の立場を考え、大人しくなっているがいつでも飛び掛かれるよう殺気を沈ませ、研ぎ澄ましている。

 先頭を歩くのは先程灰に話しかけたエルフで、名前はグライ。周りのエルフからそう呼ばれていた。

 

 灰はグライがただ一言、着いてこいという言葉に付き従っている。もし従わなければ、何をされるか分からない。

 数の差では相手の方が多く、従わなければ死ぬ恐れがある。限りなく、死ぬ可能性を下げたかった。

 だから今の灰は彼らの言葉聞いて、静かに情報を集めるしかなかった。なかったのだが、エルフは話さない!

 

 灰の目論見は失敗していた。しょんぼりとしていた気持ちになっていると、グライが着いたぞ、という言葉に灰は顔を上げる。

 そこにあったのは村だ。小規模で、建物は木の上に出来ている。階段や梯子で昇ることができ、木造の建物で大きい物はない、基本的に小さい。

 

 建物を繋ぐ木製の端の上で、エルフが歩いているのが見える。ファンタジーな世界に、灰は思わず言葉を失った。

 なんて言葉にすればいいか、頭の中で思い浮かばないのだ。

 

 立ち止まる灰だが、見慣れているエルフからすれば当たり前の事であり、止まる灰の背中を押して先に進ませようとする。

 お蔭で灰の思考が戻り、着いて行った。

 階段を幾つか上り、橋を渡り、少しずつ上がっていきそして梯子。それを目の前にして灰は立ち止まる。

 

 灰は梯子を上れる。だが、狼の魔物であるヤークトは上れない。一先ず戻そうとポケットにあるスマホを取り戻そうとした時、背中に衝撃を感じた。

 先程の押されたような感覚ではなく、何かが飛びかかるような感じだ。衝撃の後も背中が重く、体温を感じる。そして、耳からとある生き物の息遣いがよく聞こえる。

 

 まさか、と思いつつ振り向くと、ヤークトが必死に灰の背中に飛び乗っていた。その証拠にずり落ちそうになると、なんとか手足を動かしてしがみついたり、身体の位置を動かしていた。

 スマホに戻されるのを嫌がっての行動だ。

 

 灰は知らないが、ヤークトはスラ参の事を羨ましがっていた。理由は簡単、よく一緒にいるからだ。利便性もあって戦う時も一緒、そして行動も基本一緒。それをスラ参が密かに、灰の気づかぬ内に煽ったためである。

 そんな事に灰は気づかず、どうしてヤークトが飛び乗ったのか分からないが、外そうとしてもどかないという強い意志を感じた。

 

 灰は仕方なく、ヤークトを背中に乗せたまま梯子を上る。もしここがダンジョンの中でなかったら、背中に狼を乗せたまま梯子を上るのは至難の業だったかもしれないが、ダンジョンの中であるため難なく上る事ができた。

 

 梯子を上った先にあるのは、一つの小さな家屋だ。こじんまりとしていて、一部屋しかないと思えるほど小さい。

 

「護衛は俺とリベレッサでいい。後の者は去れ」


 グライの一言で、エルフの少女以外が離れていった。

 それよりも灰は、護衛という言葉が気になっていた。ここで護衛という言葉を言うのだから、誰かしらがいるはずだ。

 その人物に合わせたかったのだろう。

 

 残ったエルフの少女、リベレッサはエルフ特有なのか、すらりと身体が長く、女性的な身体付きでほっそりとしている。年上の女性のような落ち着いた雰囲気で、胸の辺りまである金色の髪がその空気を醸し出している。

 

 リベレッサも美形でどこか冷え切ったような感じがあり、彼女の澄み切った空のような青い目がその空気を強調しているのかもしれない。

 彼女のことを見ていると、

 

「行きますよ」

 

 先を促され、気づけばグライが既に歩いていた事に気づく。

 灰は慌てて追いかける。背中にヤークトを乗せたまま。

 その後ろを歩くリベレッサは、可笑しくて笑いが漏れそうになり、なんとか堪えていた。

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