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ダンジョンの魔物使い  作者: 佐藤龍
第二章 林間学校と災厄
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5話『森の狩人』

 気づけば、見知らぬ森の中にいた。もしこれが異世界転移とかなら導入でありそうだが、まさか林間学校で入浴施設に行こうとした時にそんな事が起きてしまうなんて、考えたこともなかった。

 着替える服とタオルをレジ袋に入れているため、動くときに邪魔になることはない。スマホも持ってきている。

 

 スラ参とヤークトを召喚することもできる。お蔭で不安な事はない。こういう時、一人だけではないという事が幸運ともいえる。テイム万歳。

 灰は辺りを見渡す。

 

「それにしても……」


 林間学校でさっきまでいたコテージも森の中だが、ある程度は開発されていた。だが、この森は未開発だということが一目で分かるほど鬱蒼としていて、開発されていない森を歩くというのは一苦労だ。

 それなのに、今の灰には疲労など感じられなかった。逆に、感覚が冴えていて、これに似た感覚を知っている。その事で一つの仮説が浮かぶ。

 

「ここはダンジョンの中なのか?」


 灰が今まで挑んでいた武蔵之ダンジョン。そこにいた時と、全く同じといっていいほどの感覚だ。

 ダンジョンの中、ということなら灰の余裕は消えた。すぐさまスマホを操り、スラ参とヤークトを呼ぶ。

 今まで灰が挑んでいた武蔵之ダンジョンは、出て来る魔物が決まっている。だから自分に合った強さの魔物と戦えるが、ここは見知らぬダンジョンだ。

 

 いきなりドラゴンや吸血鬼など、化け物クラスと鉢合わせする可能性がある。呼び出されたスラ参とヤークトは、呼ばれたことが嬉しくて灰に擦り寄る。

 自分の身体を擦りつける、まるで猫のように喜の感情を露わにしていた。最近、一緒に猫の動画を見た影響かなと思いつつ、頭を撫でた。

 

 灰の心から緊張の糸が消えた時だ、それ所ではないと気づく。

 

「ヤークト、ここはダンジョンの中だ。警戒してくれ。スラ参は俺の右手に貼り付け」


 スラ参がヤークトの身体から灰の右手に貼り付き、大きな籠手のように姿を変える。手を隠すほどの大きな籠手になり、さっきまで右手で持っていたレジ袋を左手に移す。

 ヤークトは神経を張り巡らせ、警戒する。今の灰が出来る最大限の行動だ。

 

 落ち着いた今、灰はやるべき事を頭の中に思い浮かべる。まず、転移した経緯だろう。

 ダンジョンでも罠で飛んだりすることはあるが、そのためには何かしらのアクションがあるはずなのだ。

 だが、灰はそういったアクションを一度たりとも起こしていない。ということは、誰かが意図的に飛ばしたという事になる。

 

 次に脱出の方法だ。罠で転移された場合、有名なのはモンスターハウス。一つの部屋に魔物の群れがいて襲い掛かってくる、という物量責めだ。

 モンスターハウスの脱出方法は魔物を全て倒すことが、一番ポピュラーだが灰のいる場所はモンスターハウスではない。であったなら、灰は既に襲われている。

 

 何一つ情報がない。今出来ることはただ一つ。

 

「先に進むしかない、ということか」


 分かっている事は、誰かが意図的に転移したという事。それなら、その誰かの思惑があって呼んだという事だ。その思惑通りに進むしか、今の灰には希望がない。

 動く灰の気配を感じ取り、ヤークトも一緒に動き出す。

 道ではない道を進み、本来なら歩くのすら一苦労だがダンジョンという事で疲労もせず、ヤークトがいるため警戒しなくても良い。

 

 精神の疲労がない事は喜ばしいが、そうもいってられなくなる。

 ヤークトが威嚇するように、前方の草むらに向かって吠えだした。スキルの『威嚇』を使っている訳ではない。灰に敵がいる、と知らせているのだ。

 草むらは腰までの高さがあり、奥に何がいるか分からない。灰はいつでも戦えるように構える。

 

 灰から襲い掛かる事はない。ここが見知らぬ森である以上、地の利は相手にある。襲い掛かって、逆に不利になるということは避けたい。

 ヤークトが吠え続け、灰が構える。待ち続ける魔物。

 最悪、ここから引くのも選択肢の一つか、と考えていた時だ。待ち続けていた魔物が我慢の限界だった為、草むらが飛び出した。

 

 数は三、ゴブリンだ。

 得物はナイフに槍と、動物の骨や牙で作った粗悪な物だが、当たれば致命傷だ。当たる訳にはいかない。

 

「ヤークト、やるぞ!」


 灰は前に出た。自分すべき事は分かっている。ヤークトが動きやすいように、視線を集める事である。

 

「スラ参、機関銃モード」


 右腕を横に大きく伸ばした。ガコンッ! という擬音が似合うような動きをスラ参はした。籠手上部に横一本の線が走り、二つに分かれた。その中から出てきたのは、三つの銃口を円形に纏めた機関銃だ。

 機銃よりも連射性能を上げた代わりに、射程と威力を犠牲にした状態だ。強い相手には致命傷を与えることはできないが、牽制にはなる。

 

 機関銃から溶解液を放ち、ゴブリン達に当てる。まるで水の弾が触れたような反応を示すゴブリンだが、溶かす液だ。目に入れば激痛を伴う。

 三体の内一体が目に入ったのか、必死に目を押さえて苦しんでいる。残り二体はそんな事知らず、灰に襲い掛かる。

 

 近づかれてしまえば機関銃モードは意味をなさないので、機関銃モードを解く。二つに分かれた籠手が元に戻り、また形を変えた。

 籠手の先が伸び、剣の形に姿を変える。振り回すと、剣が鞭のようにしなってゴブリンに襲い掛かる。

 スラ参の剣には切れ味が何一つなく、当たっても斬ることは出来ない。事実、ゴブリンは当たっても衝撃に襲われるだけで斬られなかった為、ゴブリンが馬鹿にするように笑う。

 

 だが、スラ参には分かっていた。これは剣で斬りつけたのは斬るためではない。スラ参が掴むためだ。伸縮自在の剣を自由に振り回し、もう一体のゴブリンにぶつけた。

 灰が二体のゴブリンを相手にしている間、ヤークトが目を痛んでいたゴブリンを倒した所であり、三体のゴブリンを無力化する時だ。

 

 突如として矢が空を切り、灰の近くの地面に突き刺さる。矢の音に気づいた灰は警戒していたが、もう既に遅い。囲まれていた。

 ゴブリンは完全に倒したが、木々の上から視線を感じながら何もすることが出来ない。

 木々からは殺気が放たれ、動けば殺すという空気が灰も察知できるほどだったからだ。

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