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ダンジョンの魔物使い  作者: 佐藤龍
『テイム』
21/111

21話 四層にいる『化け物』1

 翌日、ヤークトが完全回復した後、灰はダンジョンに行った。スキル『ONE FOR ALL』を試すためだ。そのために灰は三階層でゴブリンを探していた。

 スキル『ONE FOR ALL』は、自分のステータスを仲間に譲渡する能力だ。デメリットとして、譲渡した分だけ自分のステータスが落ちる。戦闘能力が低下する、ということだ。

 

 四階層であの魔物と決着をつけるためにも、『ONE FOR ALL』は必要になって来る。それをぶっつけ本番で試すのは流石に怖いため、練習台としてゴブリンに使う。

 ヤークトが鼻をクンクンと動かし、探している。二日ほど前、五階層で出てきたリザードマンと戦ったが、その時にヤークトは負傷し召喚する事ができなかった。

 

 心配して、どのような感じで戻ってくるかと不安だったが、こうして元通りに戻ってきて灰は安堵する。

 隣を歩きながら、ヤークトの頭を撫でたい衝動に駆られるが、今は仕事中のため灰はそっと撫でようとした手を戻した。

 

 少しばかり歩くと、ヤークトはゴブリンを見つける。数にして六体ほど。『ONE FOR ALL』をするには数が少ないようにも感じるが、試しで使う分には丁度良い数かもしれない。

 

「ヤークト、ゴブリンを一体だけ残してくれ。あとは好きにしていい」


 がうっ! と短く吠えたヤークトに、ゴブリンは正面にいる灰達を補足し突撃してくる。それは連携という文字はなく、ただ我先にと向かって来るだけだ。

 距離も離れているため、灰達に襲い掛かるまで時間の余裕がある。その間に、灰はスキルを発動させる。

 

「ONE FOR ALL」


 スキルを使う、と強く念じて唱えるとそれは起きた。スラ参、ヤークトを光の波動が覆い、ステータスが上昇するのが可視化される。逆に、灰に関しては外見では判断できない。

 だが、スキルが発動した途端に灰を襲ったのは虚脱感であった。まるで、全身が鉛のように重く感じる。

 力もあまり入らず、剣を握る手が震えているようにも見えた。


 これが『ONE FOR ALL』のデメリットか。

 ステータスの低下がどの程度のものか、分からないため一度試してみたが、予想以上の効果に灰は思わず歯ぎしりする。

 これでは、通常戦闘ができるかすら分からない。だが、やらなければならないと覚悟を決めた。

 

 灰が覚悟を決めたと同時、ヤークトはスラ参を連れて動き出す。

 背負うスラ参はいつものように機銃となり、遠距離から溶解液を雨のように撃つ。『ONE FOR ALL』で強化され、スラ参の溶解液はただ溶かすだけの弾丸ではなく、当たれば強打するようになった。

 一発当たれば怯み、二発三発と当たれば思わず膝をつく。

 

 それが雨のように降り注ぎ、ゴブリン達は勝てないと悟ると背を向け、逃げ出そうとする。だが、ヤークトは逃走という行為を許さない。

 ゴブリンよりも早い足で瞬く間に距離を詰めると、一匹ずつ確実に倒していく。ヤークトも『ONE FOR ALL』で強化された事で、速度が更に磨きを増し、攻撃も鋭くキレがある。

 

 爪で斬り裂き、牙で噛み潰す。気づけばゴブリンは残り一体となり、灰は前に出た。

 

「ヤークト、下がってくれ。あとは俺がやる」


 『ONE FOR ALL』のデメリットは予想以上だが、メリットに関していえばそれよりも跳ね上がっていた。あとは、負荷を背負った状態で灰がどこまで闘えるか、だ。

 不利な状況で、灰はリザードマンとの戦いを思い出す。

 あの時は自分よりも格上の相手で、スラ参もいない。今は重りを背負って戦っているようなものだ。相手はゴブリンと格下だが、どこまでついていけるか、灰でも分からない。だから、戦ってみるしかない。

 

「行くぞ」


 灰は剣を構え、距離を詰めた。ゴブリンはヤークトとの戦いで恐怖しているのか、半狂乱になりながら突っ込んでくる。武器の短剣をがむしゃらに振りながら突撃してくる様は、戦いの素人だと実感する。

 それが灰に精神的余裕を与え、通り過ぎるように避ける素振りを見せて足を引っかけた。視線が上に向いているからこその、下からの攻撃には気づきにくい。

 

 がむしゃらに短剣を振っているゴブリンだからこそ、視線は下に向いておらず、簡単に引っかかてしまう。

 こけたゴブリンは地面に顔を打ち、灰はそのがら空きの背中に剣を突き刺す。いつもならそこまで力を込めないが、力が入らないせいかいつも以上に力を込めた。

 

 魔石となって崩れ落ちたゴブリンを見て、灰は一呼吸をしつつ、スキル『ONE FOR ALL』を解除する。今の戦闘で、大体は分かったからだ。

 『ONE FOR ALL』を解除した途端、今ままで重かった身体が嘘のように軽くなる。その違いから、灰はふと思う。これは特訓に使えるのではないか、と。

 

 そんな事を考えながら、灰は倒したゴブリンの魔石を回収する。明日、四階層にいるあの化け物との決着を付けよう、と灰は決めた。

 灰がいる三階層。その下では、オオサンショウウオの魔物がそこら中にいる魔物を食べる。

 目的は魔物の中にある魔石だ。魔石を食べて成長していくオオサンショウウオの瞳にあるのは憎悪。

 

 真由に蹂躙された傷はとうに癒え、次は勝つためにと。

 灰が最初に会った時よりも強くなっていくオオサンショウウオの魔物と灰の戦いが、翌日に始まる。

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