17話 『五階層の攻略』 1
ゴブリンの集団と戦い、その後に何度か交戦した後に灰はダンジョンから離れた。
灰は、数度の交戦で自分になにが足りないのかを理解し、それを補うためにすぐに実戦に取り掛かった。一つは体力だ。
スラ参がいた頃は疲労や体力が分散していたが、一人で戦うといつも以上の疲労が灰に積み重なり、その結果連戦できるほどの体力がなかった。
弱点を克服しようと、灰は翌日から早くに起きて朝からランニングを始める。効果があるかは分からないが、やらないよりかはマシだ。
二つ目の弱点が、一人で戦うことに恐怖を感じるという事。
スラ参がいれば、守ってくれるという安心感からそこまで心配しなかったが、一人で戦うとなると誰も守ってくれない。自分で守らなくてはいけない。
アニメや漫画のキャラのように、チート能力があればこんな事は考えなかったのかもしれないが、灰はテイムという、チートみたいな能力は持っていても、自分が強くならないため戦いが怖かった。
それは慣れるしか、克服する方法がなかった。だから灰は何度も戦い、恐怖を慣らそうとする。
完全に消し去るのは駄目だ。消し去れば、危機管理能力を失ってしまう。上手く付き合っていかないと。
三日ほどだろうか、ダンジョンで慣らした灰は第五階層の攻略をしようと決意した。
第五階層に行けば何かが変わる、真由の言葉を期待して灰は第四階層から正規ルート進む。四階層には、あまり良い感情は湧かない。
第四階層には、オオサンショウウオの化け物がいる。あれはダンジョンの情報には乗っていない未知の魔物であり、ダンジョンがネームドと呼ばれる灰の持つ特殊なスキル持ちを殺そうとして、生み出された存在だ。
この間は、真由が助けてくれたお蔭で命からがらで逃げることが出来たが、倒したわけではない。まだ、生きている。正規ルートを進む以上、他の冒険者もいるため安心はできるが、襲って来ることも考えると早く抜け出したい。
第五階層は下への階段を降りると、たどり着ける。階段を降りていくと、気づけば周りにいた冒険者の姿がいなくなっていた。
まるで陽炎のように消えた冒険者に、灰は緊張しながらも降りつつ、スラ参とヤークトを召喚する。
灰の直感が訴えていた。ここは普通ではないと。
魔物と一緒にいることをバレたくない灰は、人前や人に見られる所では召喚しないのだが、今いるこの場所には人が来ないのではないか、と灰の直感が囁く。
いつもとは違う空気を感じながらも、灰は警戒しながらも降りていくと大きな扉にぶつかる。
人が小人ではないか、と思うほど大きく重厚な鉄の扉に灰は驚きつつも、恐る恐る手を伸ばすと触れる直前で扉が勝手に空いた。
音もなくゆっくりとした動作で開く扉の中は、円形で床が大理石で磨かれたような透き通った白色。壁は石造りで等間隔に並ぶ窓は万華鏡を覗いた時のような綺麗だ。
不思議な空間に灰とスラ参、ヤークトが足を踏み入れた。
『侵入者を確認。名称、ネームド。脅威度はEと認定。対応した魔物を生成……完了。これより、戦闘プログラムを開始します』
中を進む三人の前に、それは生まれた。
円形の中央に、地下から這い出るように現れたそれは屈強な戦士だ。
爬虫類のような鱗の緑色の肌を持ち、人よりも太い剛腕に幹のように太い脚。口から覗く歯は肉を噛み千切るような鋭く、トカゲの顔を持つ。
トカゲが人の姿を模した魔物、リザードマンだ。
魔物の中ではポピュラーな魔物だが、対峙している時の圧が尋常ではない。
殺気。そして格上という圧、恐怖がそれらがごちゃごちゃに混ざり、灰を襲う。
リザードマンの左手には盾。丸型で鉄製の、頑丈な物だ。右手には、刀身が細身で僅かに曲がった独特な剣だ。
本来、五階層はいつものダンジョンのような、迷路が広がっている。はずなのに、あるのは円形のフィールドで魔物は一体。
それはまるで、決闘というイメージが灰にはあった。
リザードマンが灰を認識すると、咆哮を上げる。
それは巨獣がするような、空気を震撼させるほどではないが、灰を竦ませることはできた。聞けば動揺させるほどの咆哮だが、灰はなんとか踏ん張った。
リザードマンよりも、強い魔物を灰は知っている。あれよりかは、感じるプレッシャーは大きくない。
「ヤークト、スラ参、フォーメーションAだ。行くぞ!」
フォーメーションA。それはスラ参が灰に纏い、ヤークトが遊撃に努める防御寄りの配置だ。
灰とスラ参が盾代わりになるからこそ、多少の攻撃も受け止められる。ただ、火力不足なのが否めないのが。
スラ参を盾に貼り付けた灰は、リザードマンに向かって突撃する。間合いはリザードマンのほうが長いため、先制したのはリザードマンだ。
リーザドマンが灰に袈裟斬りをするが、灰はそれを盾で受け止める。スラ参が盾にいるため、衝撃を殺してくれるが完全に殺す訳ではない。
少しばかりの衝撃に襲われるが、耐えられる。
盾で受け止めつつ、灰はなんとか間合いの中になんとか入った。ショートソードで斬りかかるが、簡単にリザードマンの盾で受け止められた。
堅い岩を叩くような衝撃に、剣を持つ手が痺れる。
それが僅かな隙を生み出し、リザードマンは攻めた。怒涛のような攻めだが、スラ参がカバーに入ってくれたお蔭でなんとか生き延びていた。
必死に盾で受け止め、僅かな隙間からリザードマンの隙を伺う。流れるような連撃だが、必ず隙が生まれるはずだ。
守りながらも隙を伺っていると、視界の端で何かが動く。
待っていた隙は自ずと訪れた。
背後からヤークトが強襲し、リザードマンに一撃を与える。
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