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ダンジョンの魔物使い  作者: 佐藤龍
『テイム』
15/111

15話 『第五階層を攻略するために』

「大いなる力には大いなる責任が伴う、なんて言うけどね」


 それは有名な言葉だ。映画で聞いたワンフレーズであるが、真由は少しばかり違う事を考えていた。

 

「私はね、少し違う。その大いなる力には壁が訪れる。それを越えられなきゃ、誰からも認められない」

 

 ネームドとなり、大きな力を持った彼女だからこその持論だ。 そのために真由は、今もネームドを救うために活動している。

 ダンジョンという脅威から守るために。

 

 

 

 灰は真由に言われた通り、勉強のために映画やアニメを見ることにしたのだが、如何せん時間が足りなかった。

 全て見終わるのに、意外と時間がかかるのだ。そのため、漫画や短く編集されたアニメや映画を見て、それを糧にしようとする。

 灰は必至であった。

 強くなるために貪欲で、何からでも得ようと頑張っている。その隣にはスラ参やヤークトと一緒だ。二匹も一緒に勉強している。

 

 真由の言葉の片鱗が、少しばかり分かったような気がした。

 ダンジョンの中では、身体能力が上がる。それにより、映画やアニメのようなアクションをすることが出来る。

 意識しなければ、出来ない事だ。ダンジョンの中でも、地上と同じような動きをしてしまう。

 

 すぐには出来ないが、いつか出来るようになりたいと思いながら見ていると、ゲームの映像を見てしまう。

 

「これは……」


 その映像に灰の目は大きく見開き、目を輝かせた。

 



 翌日、灰の目の下には珍しく黒いクマが出来ていた。夜遅くまで起きていたのだ。

 ふあぁ、と学校に行くまでの間に何度も欠伸をする。

 口をもにゅもにゅと動かし、眠いと一人呟く。

 

 夜遅くまで起きていたのは、ゲームのムービーやプレイ動画を見ていたからだ。

 ダンジョンでの動きをより機敏にするためにも、と見ていたら止めるタイミングを忘れてしまい、気づけば深夜。気づいた時にはもう遅かった。

 

 眠い目を擦りながら教室には隅っこの一列隣の自分の席に座ると、先に来ていた直人が遅く来た灰の事を珍しいとばかりの目で見つめる。

 

「珍しいな。俺より遅いなんて」


 いつも直人より先に来るはずの灰が、今日は珍しく遅く来た事に驚いている。

 

「ああ、ちょっとゲームのプレイ動画を見てて寝不足でな」


 欠伸を噛み殺す灰の目尻に、涙が浮かぶ。

 

「どんなゲームだ?」


「新しい奴だよ。タイトルは忘れたけど、コメントを見る限りじゃ評価は良いらしい」


「ほうほう」


 興味津々な直人だが、担任教師が来た事で続きを聞くことが出来ず、話は途中で終わった。

 朝のホームルームがすぐに終わり、一限目の授業は移動授業。気づけば直人がトイレに行った為話すことはなく、休み時間の時に直人は振り返る。

 

「どんなゲームだったんだ?」


「ん? ちょっと待て」


 スマホを起動させ、動画アプリを開いて夜遅くまで見ていた動画を見せた。

 

「これなんだよ。アクションが凄くてさ」


 それはゲームのプレイ動画だ。

 ジャンルはアクションらしく、動きがまず派手なのが目に入る。灰が求めていた動きである。

 これをどうやって取り込むべきか、そう考えていた時だ。

 

「何の話をしてるの?」

 

 東雲真冬が話しかけてきた。

 友達がどこかに行って手持ち無沙汰だったらしく、近くにいた灰と直人のお喋りが耳に入ったのだ。

 可憐な少女に話しかけられた事で、灰は女性慣れしておらず硬直する。

 

「えっと、その」


 挙動不審になる灰を余所に、女性慣れしている直人が代わりに話す。

 

「ゲームの話だよ。プレイ動画を見てるんだ」


 見るか? と灰のスマホを少しばかり真冬のほうに寄せると、彼女は近寄って来た。

 灰の机の所まで近づいた真冬は、スマホを見るために前かがみになる。

 ふわり、と薔薇のような良い匂いが灰の鼻腔をくすぐった。

 その匂いは真冬が訪れたと同時にやって来た、良い匂いだ、と灰は思うが口にはしない。すれば、ただの変態のように聞こえるからだ。

 

 可憐な女性という存在が近くにいる事で灰はドギマギしながらも、胸の鼓動が高鳴ってそれしか聞こえなくなる。

 何を話せばいいんだ!? と一人悩む灰だが、直人は普通に真冬と話していた。

 ただ、それを良く思わない人間もいる。

 

「真冬!!」


 少女は名を呼ばれ、振り向くと顔の整った格好いい少年が彼女の方を見ていた。

 彼の周りはオシャレな男子が多いグループであり、カーストの中でもトップに位置する。

 

「私、呼ばれたから行ってくるね」


 名を呼ばれた少女は少年の方に向かって行く。それを灰はただ後ろ姿を黙って見ている事しかできない。

 女性にモテたい、その思いで冒険者を目指しなった灰ではあるが、女性に話しかけられない時点でそれ以前の問題であった。

 新たな問題に気づき、どう解決するか考えた時にプレイ動画を流していたスマホが目に入る。

 

 その時の映像が灰の求めていたものであり、大きく目を見開き内心は歓喜に満ち溢れていた。

 そのキャラクターは敵に合わせて武器を変え、戦い方を変えている。コメントでは器用貧乏という言葉が目に浮かぶが、灰にはこのキャラクターの戦い方を真似したいと、心の底から思う。

 

 そのために、必要な物は分かった。

 魔法だ。

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