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ダンジョンの魔物使い  作者: 佐藤龍
第3章 魔物達の争い
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27話『洞窟での戦闘 2』

「大丈夫なの?」


 闇の中に消えたヤークトの事を、リベレッサは心配していた。

 

「どうしてそう思う?」


「だって、ヤークトだけだよ? ゴブリンに囲まれたら」


「確かにそうだけど、複数いてもヤークトはやられないと思う」


 ヤークトの戦い方は今まで牽制であったり、奇襲など正面から襲い掛かるというのは意外と少ない。

 基本的にヤークトに心掛けてもらっているのは、ヒットアンドアウェイ。一撃離脱である。

 

「それはそうかもしれないけど……」


 リベレッサもヤークトの実力に関しては心配していないようだが、それでもまだ不満があるように呟く。

 

「ヤークトだけ行かせたのが心配か?」


 抱えている不満を、灰は予想して言い当てた。

 

「うん、だっていつも一緒だったから。別行動取らせても良かったの? せめて、スラ参も一緒に行かせたほうが良かったんじゃない?」


 ヤークトの実力に関して、リベレッサは心配していない。

 そこらのゴブリンより、ヤークトが強いのは明白。しかし、絶対という言葉はないのだ。

 何かが起きて、ヤークトが傷つくかもしれない。

 その起きるであろう可能性を、リベレッサは限りなく減らしたいのだ。

 

「リベレッサの言いたい事は分かるよ」


 ヤークトは攻めに強いが、守りに関しては弱い。

 正確には、打たれ弱いのだ。

 機動性がある分、打たれるより避けた方が良い。

 それでももし、打たれてしまったら、と考えるならスラ参を連れて行った方が良いだろう。

 

 そのことについては、灰も一度は考えた。

 考えた上で、ヤークトだけ行かせたのだ。

 

「確かに、スラ参を連れて行った方がいいかもしれない。だけど、それはヤークトの邪魔になるのかもしれない」


「邪魔?」


「そう。ヤークトは暗殺特化、奇襲することが得意だ。いつもは俺達パーティーで行動するから、自由に動けていないだけで、本当はヤークトだけのほうが強いのかもしれないよ」


 歩きながら説明していると、ランタンの光が足元に落ちている石ころを照らす。

 それは魔石だ。

 小指ほどの大きさをした魔石は、一つ、二つ、と地面に転がっている。

 

「ほらね、問題はないらしい。それに危なくなったら戻ってくるさ。信じようよ」


 ヤークトの成果を見て、リベレッサはもう何も言わなくなった。

 灰の信じよう、という言葉にリベレッサは言うことが出来なくなった。言ってしまえば、ヤークトの事を信じていないと思われてしまうようで。

 

「それよりもこっちの心配をしよう。前はヤークトが倒しているから大丈夫かもしれないけど、背後からゴブリンが襲って来るかもしれない」


 前はヤークトが潰してくれるが、後ろからゴブリンが返ってくる可能性もある。


「精霊魔法を使っても良い?」


「お願い。けど、少しで良いから。これから使う魔力を考えて温存して」


 一番怖いのは、背後からの奇襲。特に、正面で戦っている時にそんな状況に陥れば、挟み撃ちだ。

 生存率が落ちる。

 灰が先頭を歩きつつ、後ろはリベレッサの精霊魔法で警戒しつつ歩いていると、Y字路に辿り着く。

 そのY字路の前に、ヤークトがお座りしていた。

 

 口には魔石を咥えており、灰に近づいて渡す。

 

「ありがとな」


 役目を果たしたヤークトを褒めつつ、灰が頭を撫でながら、

 

「ゴブリー。弟はいつもどっちの方向にいる?」


 尋ねると、ゴブリーは右の道を指出した。

 

「そっちだな」


 灰は右の道を進む事を決めた。

 正直に言えば左の道も気になるが、今は時間厳守。時間が金以上に大事な今、寄り道をしている暇がない。

 

 右の道を進んで幾ばくか、ゴブリンの数が増えた。

 

「こっちが大当たりという訳か」


 ゴブリンの数が、さっきまでとは嘘のように増え、それだけ戦闘の回数も多くなったという事。

 侵入者が来た段階で、襲わせるのではなく守りに入ったようだ。

 もしくは、数の暴力で押しつぶそうとしたのかもしれない。

 

 序盤に魔物との戦闘をこなしていないがために、油断する。その油断した隙を突くように、大勢のゴブリンが襲う。

 そういう筋書きなのかもしれない。

 真相はゴブリンしか知らないが、単純に数で押しつぶすだけでは灰達には効果がない。

 

 砂浜に押し寄せる小さな波のように、巻き込まれて溺れるようなことはなかった。

 短い距離しか歩いていないが、十回ほどゴブリンを撃退した時だ、ゴブリンの姿が消える。

 

 ゴブリンという種が嘘のような存在みたく、気配すら感じない。

 消えた? いや、

 そんな単純に考えていい問題ではない。

 消えた理由は簡単だ。数の暴力では、俺達を倒す事を不可能だと悟ったんだ。

 

 だから、

 ランタンの光が、遠くから近づくゴブリンをぼんやりとだが照らす。

 

 右手には刀を持ち、皮の鎧で武装したゴブリンはこちらを睨みつけながら、距離を縮めて来る。

 一風変わったゴブリンではあるが、顔だけならただのゴブリンだ。

 しかし、ゴブリンにはない威圧感を放ち、恐怖すら与えるほど。

 その恐怖を、灰は正面から浴びていた。

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