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ダンジョンの魔物使い  作者: 佐藤龍
『テイム』
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1話 スキル『テイム』

 高校に入学して、東条灰≪とうじょうかい≫は冒険者になった。

 理由は簡単、高校デビューをするためだ。

 結果から言おう、惨敗である。周りからそういう嘘や冗談を言う奴、というレッテルを貼られ、冒険者になった時に登録される身分証を見せても信用してもらえない。

 

 どうせネットから拾ってコピーしたんだろう? と言われるともう何も言い返すことができなかった。

 彼らがそう言うのも、今なら理解できる。

 冒険者になるためには高額のお金が必要だ。身分証も特殊な金属を使っているため高く、武器や防具もホームセンターで売っているような物ではすぐ壊れてしまう為、専用の店で売られている物を買う必要がある。それも高い。

 

 冒険者になるためには、お金が一杯必要になるのだ。

 高校から冒険者になれるが、そんなお金を高校生が持っている訳ないため、嘘つき認定された。高校デビューをするために冒険者になったが、そもそもなろうと思ったのは内面を変えようと思ったからだ。

 だが、冒険者になっても変わらなかった。それに、変えるのは見た目だ。今更だが遅すぎる。

 そう気づいたのは、高校を入学して一ヶ月過ぎた後の事だ。

 

 

 

 灰は周りからオタクっぽい、と言われている。鏡で見れば分かるが、黒髪で眼鏡。陰気が強すぎる。

 それを変えるために冒険者になったのに、変わらないのはなんでだろうな? とダンジョンの中で考えてしまう。

 駄目だ、こんな所で辛気臭い事を考えちゃ。

 

 ここはダンジョン。人を殺す魔境だ。それと同時に、人に富をもたらす宝の山でもある。

 灰がいるダンジョンのフロアは一階。出てくる魔物は最弱のスライムだけだ。

 

 緑色の体液の集合体、という見た目をしていて丸い。

 ただ、このスライムが難敵だ。身体が衝撃を吸収するため近接武器や遠距離武器では殺せなかった。

 殺す方法は魔法、そして聖水だ。

 

 冒険者になってすぐに魔法は使えないため、必然的に倒す方法は一つだけ。

 聖水の生成方法は不明だが、邪悪なる魔の物を倒すことができるらしく、スライムに振りかければ効果絶大。苦しみながら倒れていく。

 

 他の魔物にも効果はあるのだが、スライムのようにやわではないため苦痛は与えても死にはしない。

 この聖水、最初の内は欠かせない道具なのだが欠点が一つ。お金がかかるという事。

 スライムを倒すと出てくる魔石。それがお金になるのだが、一体倒しても千円にもいかない。

 

 大きさに差があるが、一体倒すだけでギリギリ聖水一個に十円単位のお釣りがくる程度。ほぼ儲けがなかった。

 それでも、今の灰には変えることは出来ない。

 スライムに聖水をぶっかけて、倒す日々だ。

 

 武器や防具も、ダンジョンから出てくる魔物の素材を使用しているため高く、一番安い物で十万円以上する。

 初心者にはとてもではないが、敷居が高い。だから中古という手もあるのだが、世の中にはボッタクリもいる。壊れかけを中古で売る、という事を平然とするからあまり買いたくない。

 

 そういう経緯もあって新品を買った灰は、学校が終わった時と休みの日とはひたすらスライムを刈っていた。文字通り、雑草を刈るように。

 お金もあまり稼げず、辞めたくても親からの一括の仕送り全てを冒険者になるため注ぎ込んだ。

 辞める道は元からない。

 あれ? 前に見たネットの記事で赤字の会社が運営するのと同じ理由じゃ……。

 

 過去の記憶を思い出すが、頭を振って忘れようとする。

 灰は高校生のはずなのに、既に崖っぷちの生活を送っていた。

 そんなある日、ダンジョンの中で宝箱を見つける。

 

「おおおおぉぉぉぉぉおッ!!」


 嬉しすぎてハイテンションになり、変な声が出てしまう。

 宝箱、それはダンジョンの中で唯一の癒し。開ければ強い武器や貴重な道具があり、売れば一攫千金という夢がある。

 ただ、ここは一階。宝箱にあるのはそんな貴重な物ではないだろう。

 

 しかし、初めての宝箱だ。何が入っているか気になって、笑顔が顔に張り付いて消えることはない。

 そっと宝箱の縁を触り、ゆっくりとした動作で開ける。

 バラエティーで、こういう宝箱をゆっくり開ける理由がなんとなくだが分かった。

 宝箱を完全に開けると、入っている物はなくあるのは一杯の光の粒子だけだ。

 

 何、これ?

 見たことない光の粒子に疑問を感じた時、その粒子が灰に襲い掛かる。

 思わず身構え、両手を顔の前で交差して身を守るが不快感はない。逆に、ポカポカとした温かい何かが身体の中に入ってくる感じだ。

 

 何かしら身体に異変がないか、立ち上がって触って、見て確認していた時、

 

『スキル、テイムを獲得しました』

 

 頭の中に聞こえる無機質な女性の声。だがそれ以上に、テイムという言葉が灰を悩ませた。

 

「テイム? そんなの聞いたことないよ……」

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