閑話 対魔族戦4
この話で一区切りですね。
「はいストップ、ちょっと待って。」
黒ローブの男はそう言った。
『……何者だ?貴方。勇者の仲間ではないよな??』
「まぁね、ちょっと見過ごせないのさ。ここでこの子たちが死んじゃったら"彼"が悲しむだろうからね。」
『邪魔をするというならあなたも殺しますよ。』
「ふぅん?どうやって?」
『こうやって………ですよ!』
魔人はセリフの途中で進藤を倒した時のように一瞬で黒ローブの男の背後に回り蹴りを放つ。
「おっと危ない。」
男は前に軽やかにジャンプすることで避ける。魔人は避けられたことに若干驚きつつも距離を詰めて突きを放つ、それを男は片手で外側に逸らす。魔人は避けられた勢いを緩めずそのまま横を走り去り、すれ違いざまにラリアットを放つがそれも体を逸らすことで躱されてしまう。
『………遊んでいるのですか?』
魔人が怒気を孕んだ声で尋ねた。
「うん、そうだよ。さっきの君みたいに真面目に相手するほどの強さがあるわけでもないしね。」
魔人が赤面し殴りかかる。
「けどまぁ……」
男は魔人ですら反応できないような速度で魔人の背後に回ると腰に差している剣を抜き、
「これ以上は時間の無駄かな。」
そのまま魔人の首を撥ねた。
「ふぅ、呆気なかったね。それより君たち。」
そう言いながら黒ローブの男は終始、魔人が現れた時から終始見ていた勇者たちに向って歩いて行った。
「君たちは勇者じゃないのか?自分たちが叶わないからと何もせずに傍観しているのが勇者なのか?」
少し強めに言っているが、これは必要なことだと男は思っている。
「君たちが彼らと協力すれば魔人を倒せたかもしれない。僕が来なければ彼らは確実に死んでた。それをよく考えなさい。」
その時、勇者たちはは自分たちの愚かさに気づいた。俯いて暗い顔をする彼らに、黒ローブの男は一転して優しそうな声音で、
「わかったなら良い。今回は僕がいた。次回はいないかもしれない。高確率でいないだろう。その時にどうするかは、自分で考えるんだ。」
黒ローブの男はそう言うと立ち去ろうとした。
「ま、待って、ください。貴方は、貴方の名前を、教えてください……」
進藤が息も絶え絶えに尋ねる。
「その状態じゃ話しずらいだろう。──ハイ・ヒール。」
白い光が進藤と山内を包み、怪我を瞬時に直していく。勇者たちは目を見開いた。あれだけ戦闘ができるのに治療もできるかと。その反応を見た男は苦笑してフードを外した。中からは耳が尖っており、金髪でかなりの美系の男がいた。
「これでも僕は色んなことができるんだ、長寿だからね。それで、僕の名前だったよね。僕はリュール。とあるエルフの里の長をしてるよ。なんで君たちを助けたかは……内緒だよ。ちょっとした義理さ、恩人のね。」
進藤は驚きを隠せないながらも、持ち前の社交性を活かして口を開く。
「エルフの方だったんですね。この度は助けていただきありがとうございました。感謝してもしきれません。」
「あぁ、良いって良いって。さっきも言った通りただの義理だから、気にしないで。それで、特に他に無ければ僕は行くけど。」
「ええ、ありがとうございました。あとは僕達で何とかします。」
それを聞いてリュールは疑問に思い、
「もっと聞かないのかい?その恩人は誰なのか、とか。」
「いえ、なんとなく聞いてはいけないような気がして。」
「そうかい、まあ教える気は元々無いんだけどね。じゃあ今度こそ行くよ、じゃあね。またいつか会うことになるかもしれないけれど。」
「はい、ありがとうございました。またいつか、どこかで。」
「ありがとうございました。」
進藤と山内の言葉を聞いてリュールは満足そうに頷き、今度こそその姿を消した。
「……俺たち、生きてるよな?」
「ああ、生きてる。もっと強くならないといけないな。」
「そうだな。」
「お、俺も強くなる。」
「私も、今度こそ役に立てるように、足を引っ張らないように。」
進藤は彼らを見て、フッと笑うと、
「そうだな、みんなで、強くなろう。」
一つ一つ噛みしめるように言葉を吐いた。
こうして大勢は決した。勇者は誰一人として欠けることなくすべての魔物を討伐した。アイザー団長は大いに喜び、その日の夜は王城で豪華な夕食が振る舞われた。精神的に成長した者もいれば、思い人にアピールするために懸命に戦ったがいつの間にかいなくなってることに魔物を討伐してから気づいて不貞腐れる者、生残ったことを喜ぶ者、死んでしまった者を悼む者、色んな感情を持った者がいた。それでも魔物の大群を退けたどころか全部倒してしまったのだから、勇者の活躍として後日国中に報せられることとなる。
また、その日、とあるエルフの里の長が忽然と消失し、里中がパニックになったのはまた別のお話。
2話更新できましたね。次話からまた蓮君たちのお話へと戻ります。黒ローブの男ですが、蓮くんにしようと思ったのですがちょっと辻褄を合わせるのが難しそうでしたので出番があんまりない彼に出てもらいました。猫被ってますねぇ。その方がエルフ感があって良いと思いますよ。
まあ何はともあれ、年度の終了に良い感じの
区切りがついたんじゃないかなと思います。ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございます。これからもこの作品をよろしくお願いします。




