第9話
朱里はレーザーガンをスナイプモードに変え、朱里に背を向け辺りを見渡す銀髪の男の頭を狙い、躊躇わず引き金を引いた。
乾いた音を立てレーザーは男に向かって進んだが、男に当たる寸前にやはり何かにかき消された。
案の定、男の回りにはシールドが張られていて、レーザーがシールドに当たった方向で朱里の居場所がバレたらしく、バトルアーマーに身を包んだ男達が朱里のいる位置目指して歩み出した。
「隠れてコソコソするしかないのか?あ?腰抜けが!」
銀髪の男はその場から動かず、朱里を挑発してくる。
(シールドのある場所から動こうとしないお前はどうなんだよ!?)
「なんとでも言え!!ところで、お前の部下……下げさせたほうがいいぞ?」
「なに?」
バトルアーマーを来た男達が朱里の潜む岩影の側まで来た時、突然男達の足元が大きく揺れた。
そして次の瞬間
「ひっ、ひぃぃ!ざ、ザイ様ぁぁぁあ」
「ぐわぁぁあ!?」
「な、なんだこいつは!?!?」「とにかく撃て!撃て撃て撃てぇぇぇええ!!「ギヤァァア」
男達の足元から2本の大きな鋸のようなものが現れ、一瞬で近くにいた男の一人を真っ二つに切り裂いた。
地中から成体のサンドワームが姿を現し、男達は思わぬ襲撃にパニックになり、次々とサンドワームの餌食となっていく。
朱里ははじめからこうなることを予測していた。
わざと男達をこの場所へと誘き寄せていた。
サンドワームの巣へと。
10人いた武装兵達が次々とサンドワームの餌食となる。
「ざ、ザイ様た助け……」
残り1人となった時、そいつは銀髪の男の元へと駆け出した。
しかし、ザイは兵が逃げて来る素振りを見せた瞬間表情を一変させた。
「役立たずが……」
そう漏らすと腕についている端末を操作しだした。
「俺の部下に弱者は要らん。その虫と一緒に逝け!」
「――っ!?!?」
次の瞬間上空からの砲撃でサンドワームのいた位置に一瞬で巨大なクレーターが出来た。
その衝撃で近くにいた朱里はかなり吹き飛ばされた。
(ちっ……まさか部下を巻き込んで戦艦から砲撃させるなんて)
幸い砂地に体を叩きつけられたので怪我はなかったが、体中が悲鳴を上げている。
ここは一旦引くしかない……。
コロニーとコロニーを繋ぐ連絡地下通路の入り口が側に在ることは前もって調べておいた。
朱里はそこから地下へ入ると、フラつく体を鞭打ちながら第5コロニーの格納庫へむかった。
外壁に亀裂が入りコロニーとして機能しなくなったのは何年も前からのこと。
コロニー内部には大型の生物は入って来ないにせよ、瑠璃色サソリなど小型でも危険な生物が数多く侵入してきている。
そんな中で、ダメージをおった朱里が体を休められる場所は限られていた。
格納庫へつくと同時に朱里は痛みと疲れから近くの柱にもたれかかり、そのまま立ち上がれなくなってしまった。
「ドアを……ロックしない…と」
そこで朱里の意識は途絶えた。
「……り…さん、朱里さん!起きて下さい。朱里さん!!」
体を何かに激しく揺らされ、朱里が目を覚ますと心配そうな表情をしているアイルの顔が見えた。
「アイル……か?どうしてここに」
アイルを傷付けたくないから一人で戦う決意をした。
なのに何でアイルがここにいる!?逃げてくれ!今すぐ!!
そう言おうとした。だが、体は……。
「えっ!?しゅ、朱里さん?」
朱里はアイルの腕を掴んで引き寄せ、強く抱きしめた。
ザイと対峙してから何度か死ぬ覚悟をした。
しかし、いざ命をかけるとなるとどうしても最後にアイルの顔が見たい、そう思った。
生きてまた会えた。
それが凄く嬉しかった。
「アイル……良かった無事で」
朱里のアイルを抱きしめる腕に力が入る。
「朱里さん、それは私のセリフです!!何で一人で戦うんですか!?朱里さんにもしものことがあったら、私はどうしたらいいんですか!?!?」
アイルも朱里を守りたい気持ちは一緒だ。だからサヴァイブユニットで目覚め、遠くで爆発音が聞こえたときアイルの頭の中では真っ先に朱里の身のことを考えていた。
格納庫で大した傷はないが、ぐったりしている朱里を見つけたとき、安心感とともに朱里をこんなにした相手に殺意を覚えていた。
そしてアイルはザイがここへ向かって来ていることも気づいている。
「敵がここへ来ます」
「アイル?」
敵と口にしたアイルの目が血走っていたのを朱里は気づいた。
「朱里さんをこんなにしたやつを……私は絶対にゆるしません!」
「アイルよせ、落ち着くんだ!」
「大丈夫、朱里さんはここで休んでいて下さい。すぐ……終わりますから」
アイルは既に朱里を見ていない。
朱里の制止しようとする手を振りほどくと格納庫から出て行ってしまった。
「あ、アイル……アイル!!!!」
アイルが朱里の手を振りほどいて出ていった格納庫の出入口に朱里の叫び声が虚しくこだまする。
しばらくすると耳をつんざく様な高音が響いた後に爆音が鳴り響く。
恐らくアイルのレーザー砲が何かを破壊した音だ。
高音と爆音、それが何度か続いた後、無音になった。
「どう……なったんだ?」
壁にもたれ掛かって上体を起こしているのがやっとの朱里に外に出て状況を確かめに行くのは困難だった。
「アイル、無事なのか?……ん?」
朱里のいる格納庫に誰かが近づいてくる。
「アイル、アイルなのか?」
「くくくっ残念、外れだ」
格納庫の入り口に現れたのはアイルではなく、卑下な笑みを浮かべレールガンの銃口を朱里に向けるザイだった。
「貴様……アイルをどうした?」
怒りで体が熱くなる。今すぐ奴を殺したい。
だが、体は全くいうことを聞かない。
「あぁ、あのお嬢さんか……全く困ったものだ。まさかギガス級を撃ち落とすとはな」
ザイの表情が笑みから怒りのものへと変わり、ゆっくりと朱里に近づいてきた。
「危うく俺も殺されそうになったんだ…よ!」
「う゛っ!?」
ザイが壁にもたれ掛かかる朱里の横腹に蹴りをいれ、朱里は床に倒れ込んだ。
「よくもあそこまで高性能で、しかもレーダーが人間と認識するほどのアンドロイドを作ったものだ。これも……RH-typeの賜物か?」
落ち着きを取り戻したようにザイは冷静な表情になり、朱里を見下すように喋りだした。
未だにザイはアイルの人口知能こそがRH-typeだということに気がついていない。
だがザイの予測の一部は当たっていた。元々、アイルのレーザー砲もアイルが製造された時は装備されていなかった。
そもそも、現在の人間の技術ではアイルのレーザー砲程、小型で威力のあるものは造れない。
あれはこの星に残る人類が朱里1人となったとき、アイルが『朱里だけは絶対に護りたい』その想いから朱里に秘密で自分1人で造り、自身の右手に装備したものだ。
しかし、朱里はその事に気付いていた。
アイルの製造工程に武器など一切組み込まれて無かったことを知り、アイルが朱里の為に自身を改造したということに気付いてしまった。