第7話
「バカな」
量子コンピューターの原理がここから持ち出され、それが宇宙支配に利用されているなど信じたくはなかった。
「まぁ、お前が驚くのも無理はないな。全宇宙も驚いている!不可能とされた量子コンピューターが存在し、それを利用した一帝国が僅か100年でこの宇宙の半分を手中に納めたんだからな!」
方法にもよるが、『支配』という先人たちの望みとはかけ離れた量子コンピューターの利用法、
朱里は胸が苦しくなってきた。
「あなたは……いや、お前らはどこでRH-typeの情報を!?」
男たちを睨み付けながら問いかける。
「おや?言わなかったか?ここのからの移民からだよ」
男の顔がいやらしくニヤける。
「お前、まさか」
「ふふふ、安心しろ。お前の想像しているような拷問等はしていない。ただ、脳を少しいじって情報を引き出しただけだ……まぁ、それで無理があって何人かは死んだがな」
「…………」
(こ、こいつら!)
朱里の中でこの男に対して殺意が芽生えてきた。
「細かいことは気にするな、こちらが丁寧に質問してやってる間に正直に答えないお前の仲間が悪いんだ…………で、お前はどうなんだ?」
「確かにRH-typeはこの星の研究員が開発した。だが、それはお前らの言うプロトタイプのみで完成したRH-typeなど存在しない!」
RH-typeがアイルのことだとこの男にバレれば、アイルに危険がおよぶ。
朱里はそう考えていた。
「先程の俺の話を聞いていたか?ここから移住してきたの研究員の脳から情報を直接引き出したんだぞ?完成したRH-typeをこの星の研究員が『何か』に利用しようとしていたことまでわかっている!」
『何か』ということはやはり、こいつらはRH-typeが量子コンピューターの名前であると誤解しているようだ。
(それなら)
「もし、RH-typeが完成していたとしても、俺はその在りかなど知らない!」
シラをきり通せると考えていたが、
「ほぅ、そうか……実はその研究員の脳をいじって出た情報の中に『2人』の顔が浮かんできた。1人は貴様だ!もう1人は……可愛らしいお嬢さんだったなぁ?」
「――っ!?」
朱里とアイルの顔を知っている……。
2人の顔を知っていて、かつこの星で死んでいない、つまり移住していった研究員は1人しかいない。
医者と呼べる者がほぼ移住し終えた中、致死毒をもつ瑠璃色サソリに刺され、
治療のために朱里達が無理やり移住させた朱里の親友……零だ。
つまり、この銀髪の男が俺達の情報を引き出した研究員というのは零だ
「お前ら、零を!?」
「零?……あぁ!貴様らの情報を引き出した男か!貴様の友か何かか?なにかの毒に侵されていたこともあって、あのやろー完全な情報を引き出す前にしにやがった」
「!?!?」
(ぜ、零が死んだ?……そんな)
零が途中で死んだことで、アイルこそがRH-typeだと言うことがばれなかったのだ。
だが、朱里がそれで友の死を受け入れられるはずもなく。
「う゛ぅぅ……」
朱里は今にも声を出して泣き出したい衝動を抑え、
目に涙を浮かべながら男を睨み付けた。
「ん?なんだ、貴様泣いているのか?そんなに悲観するな、直ぐに貴様もその友のもとに送ってやる!」
そう言って朱里のレーザーガンを撃ち落とした後、下げていた銃口を再び朱里に向ける。
「…………」
朱里は最早、死を覚悟していた。
男がトリガーに指をかけ、絶対的有利な状況に僅かの油断が生まれる瞬間。
まだ隠し持っている小型のレーザーガンで男を撃つ。
たとえ自分が死んでも、
(絶対奴に一発くれてやる!)
相討ちを覚悟していた。
「まぁ、貴様を殺してしまっても、もう一人のお嬢さんに話を聞けばいいしな!」
銀髪の男は卑下な笑みを浮かべながら朱里に照準を合わせる。
「―っ!?」
(しまった!こいつらはアイルの存在を知っている。もし、俺が死んだら……アイルが危ない!!)
実際、戦艦クラスのレーザー砲を有するアイルにはいらない心配かもしれないが朱里が殺された後、この銀髪の男達が朱里を装ってアイルを誘き寄せ、罠にかければ…………。
アイルには対人用の装備はない。つまりレーザー砲さえ無効化してしまえばアイルは普通の女の子と変わらない。
そうなればいくらアイルでも男達に逆らうことは出来なくなる。
(それだけは避けなければアイルだけは絶対に傷つけさせない!)
「ふっ、そこまで悲観する必要はないぞ?じっくり遊んで、情報を引き出した後は貴様と同じところに送ってやる。とりあえず……お前は今、死ねぇぇぇえ!!」
「――くっ!!」
男がトリガーに指をかけた瞬間、無理やり体をねじりそのまま真横に跳んだ。
次の瞬間、俺がさっきまでいた場所に男の放ったレーザーが当たり、小さく音を立ててそこにあった岩に穴を開ける。
「なに!?」
男は俺が攻撃を避けた事に驚き、次の攻撃に入るタイミングを遅らせた。
「くらえ!!!!」
隠し持っていた小型レーザーガンを抜き、男の眉間を狙い迷いなくトリガーを引く。
しかし、俺の放ったレーザーは男に当たる前に何かに阻まれたように消えた。
「…っく、き、貴様ぁ!!」
予想はしていたが男の周りにはシールドが展開されていた。
だが、シールドが有るとは言え、奴も人間、顔に向かい飛んで来るものに反射的に体が硬直する。
その一瞬の隙に、近くにあった岩影に身を潜めた。