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シングルハーツ  作者: ゆーき
プロローグ
6/12

第6話

「こちらは惑星アーカイブ再生機構『ネメシス』D-305地区担当研究員 水野 朱里。 現在この星の全体の管理をしている者です!」


 さすがにいきなり攻撃はされないだろうと踏んでいたが念のため、こちらの情報を伝え敵意が無いことを示した。


 ちなみに水野朱里、これが朱里の本名。


 地球で言う日本人となるが、アーカイブでは名字という概念がほぼ無くなって普段は名前のみで呼びあう。



「急な訪問、すいません。先程こちらの船の着陸の衝撃でビークルを転倒させてしまったようですが……お怪我は?」


 着陸船が巻き上げた砂埃が収まり、視界が開けてくると朱里に向かって数人の人間が近寄り、


 そのなかでリーダー格と思われる純白のコートを着た銀髪の男が朱里に話しかけてきた。


 この男以外はバトルアーマーを纏い銃を朱里に向かい構えていたが、


 銀髪の男が合図をすると一斉に銃口を下に向け、待機の体勢をとった。



 その様子を見ていた朱里は彼らに敵意が無いと感じ、自身もレーザーガンのトリガーにかけていた指を外し、


「いえ、大丈夫です。」


「そうですか、それは良かった!」


 男と会話をはじめた。


「先程こちらが通信した時返事が無かったのは?」


「あぁ、それですか、通信器の故障ですよ。受信は出来ますが、こちらからの送信が出来なくなってしまいましてね……それで、あなたを見つけても呼び止めることが出来なかったので、こうしてあなたの進路を塞ぐような着陸をしたのですよ」


 ギガス級の戦艦に通信機器程度のものを修理できるメカニックが居ないというのは少し変だと感じだが、とりあえず今は話を進めることにした。



「そうでしたか、では、この星へ来た目的は?」


「まぁ、ちょっとした探し物……なんですがね」



「探し物?」


「えぇ」


 男の表情が険しくなる。


「朱里とやら、RH-typeというのをご存知ですよね?」


「えっ!?」


 RH-typeとはアイルのこと。


(なぜだ?なんでこの男はアイルの事を知っている!?)


 他の星の人間はRH-typeの存在など知らないはず。


 朱里は男に対して不信感を抱き始めた。


 アイルの事をこの男に話すのはまずいような気がして、


「RH-type?なんのことです?」


 その存在すら自分は知らないとしらをきる。


「ははは、そんな事を言っても無駄ですよ! この星の移民から得た情報ですので……」


 そう言って男の口元が一瞬不気味にニヤリと笑った。



 次の瞬間


 ダン

「――っ!!?ぐあっ!」


 銀髪の男が腰から下げていたレールガンを抜き、朱里が体の前に携えていたレーザーガンを撃ち落とした。



 レーザーガンより貫通力は落ちるが、電磁力により弾丸を超高速で打ち出すレールガンは威力の面ではるかにレーザーガンに勝る。



 朱里に怪我はなかったが、レーザーガンを吹き飛ばされた衝撃で手が痺れ、痛みでその場にうずくまった。



「ぐっ、な、なにを!?!?」


 朱里を見下し、バトルアーマーを纏った部下と共に朱里に銃口を向ける銀髪の男を睨み返しつつ、


 これから起こりうる事を予測し、必死に対策を考えていた。


「くはははは! なにを? 決まっている! RH-typeを奪いに来たんだよ!!」


 先程までと口調も表情も全く変わり、目が血走っている。



「アイルを!?」


「アイル?なにを言っいる、とぼけるな!RH-typeはお前らこの星の研究員がついに完成させた『量子コンピューター』のことだろう!?」



(そういうことか)


 どうやらこいつらはRH-typeを量子コンピューターの名前だと勘違いし、


 その量子コンピューターを搭載したアンドロイドのアイルこそがRH-typeだと言うことに気付いていないらしい。



「お前、まさかコンピューターに名前でもつけてるのか?…プッ……くははは!」


 男は腹をかかえて笑っている。



 確かに量子コンピューターは朱里の父親やその父親達がここアーカイブで代々研究し、完成させた代物だ。


 しかし、それ一つでこの世の全てを1と0で解析してしまう量子コンピューターは、使い方によっては星1つを破滅寸前の状態からから回復させることも、逆に一瞬で滅ぼすことも可能にする方法を導き出してしまう。



 作ったはいいが、その使用法に困った先人達はそれをアンドロイドに搭載し、完全な人口知能をもつアンドロイド……RH-typeを完成させたのだ。



「RH-typeなんてものはここにはない!」


 男を睨み付けながら朱里は叫んでいた。



「いや、ある!必ずな!…………こんな辺境の星では知るはずもないか」


「なんのことだ?」


「今、この全宇宙のなかで文明のある惑星の約七割をある1つの帝国が支配している!そして、その帝国にはこの星で作られた量子コンピューターのプロトタイプがあるんだよ!」



「そんなはずはない!」


 RH-typeや、量子コンピューターの原理がこの星の外に持ち出されることはない。


 それがこの星の研究員たちの掟。



「だが、実際に帝国はそれを使い宇宙を支配している!プロトタイプでそれだ。完成したRH-typeがあれば全宇宙を、いや、この世の全てを思うままに出来るのだ!」



 確かにそうかも知れない


 アイルは人口知能の補助程度、刹那的にしか量子コンピューターを使用していないのだが、


 その機能を1%も発揮させれば、この荒れたアーカイブも直ぐに回復させることができる。



 だが、先人達が量子コンピューターに託した望み、希望はそれではなかった。


 朱里はその彼らの意志を引き継いでいるため、アイルの量子コンピューターに頼らず、自らの手で……僅かずつでも人間の手でこの星を回復させることにしている。

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