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いよいよ最終回だ!

「藤太さん、すごいよ!強いとは思っていたけど、あそこまで強いとは思ってなかった」


 俺は宿に帰ったら晩飯食って、のんびりとくつろぎたかったんだけど、保久はひとりで興奮して喋っていたね。


 たかが虫けら一匹退治したくらいで、なにを大騒ぎしてるんだろうね。

 現代(いまどき)の害虫駆除業者なんか、毎日毒虫退治しているぜ。

 しかしまあ、この時はこれで都の餓鬼(ゾンビ)騒動が(しず)まったのだから、害虫駆除としてはまずます良い仕事ではあったんだけどね。


「ところで保久、あの大ムカデを操っていた術者はどうなったんだろうね?」


「さあどうなったんでしょうねえ?藤太さんがムカデの眉間を射抜いた瞬間に、あの恐ろしく強大な霊力がぷっつり消えてなくなりましたから」


「奴はまた何か仕掛けて来るかね?」


 保久は少し考えてから答えた。


「普通はですね、(しゅ)というのは失敗した場合、術者に跳ね返ってしまうんです。だからあの蟲術(こじゅつ)を仕掛けた奴は、いまごろ死んでいる可能性があります。しかし・・・」


「しかし?」


「しかし、あのとき感じた霊力の強さ。あれは常人のものではありません。おそらくはまだ生きているでしょう」


「じゃあ、いずれまた対峙(たいじ)するときがくるかもしれんな」


「でも、とりあえず今は奴もノーダメージじゃありませんよ。かなり負傷しているはずですから、当分は大人しくしているでしょう」


 というわけで結局のところ、この大ムカデを使った()を仕掛けた犯人の正体は、分からず仕舞いだったんだ。


 実は俺は今でもあれは将門の仕業だったんじゃないかと疑っているんだ。


 首を刎ねてやった俺が言うのもなんだが、将門という男の強さは相当なものだった。

 俺が生涯の間に対峙したどんな豪傑や鬼やバケモノよりも、奴は強かったよ。

 なにしろ史上最強のこの俺が、本当に強いと思ってる奴なんて将門の他には居ないからな。

 不死身だったし、霊力の強さでも陰陽師なんかの比ではないほど強かったんだ。


 黄泉(よみ)に行ったとき、本人に確かめてみようと思ったんだが、なにしろ将門は黄泉(あっち)では首が無いんだよな。

 それは俺のせいなんだけど、おかげで話にならなくて結局真相はいまだ藪の中さ。


 翌朝、宿に竜王姫がやって来た。


 今度は部屋まで上がってきてね、お礼の品を持ってきたんだな。


 このとき俺が貰ったものは巷間(こうかん)の伝承ではいろいろ言われているようだが、実際に貰ったのは高価な反物だ。


 このときの大ムカデ退治は、近江国の国司からもたいへん感謝されてね、それから毎年米やら反物やら食物が俺のところに届くようになったんだね。

 それが、米の尽きぬ米俵とか、いくらでも料理の出て来る鍋とか、いくら着物を作っても減らない反物とかいう伝説になったんだな。


 そうそう、竜王より上の位の琵琶湖の竜神からも褒美を賜ったんだ。

 神様から褒美を貰ったんだから、大したものだろう?


 ひとつは鎧兜一式。

 龍族の防具だからね、おかげで守備力は最強MAXレベルだよ。


 俺は素手でも最強なんだけど、将門討伐のときは最強の剣、最強の弓、最強の防具とアルティメット最強装備だったからね。

 さすがの将門も俺の敵ではなかったんだ。


 もうひとつ貰ったのが立派な鐘だ。

 これはそのまま三井寺に奉納した例の鐘だよ。

 お前らは間違えても弁慶のなんとかなんて呼ぶなよ。


 こんな調子で俺は生涯、無敵で最強だった。

 もし、全時代・全世界ヒーローバトルとかあったら、ぶっちぎりで俺が優勝することだろう。


 俺の愛刀だった蜈蚣切丸むかできりまるは、今は伊勢神宮に納められている。

 日本にこの刀がある限り、どんな妖魔が現れようがこの俵藤太が退治するって寸法になっているから、お前らは安心していいぞ。


 お前ら、ながながと俺の話を聞いてくれてありがとうな。

 いつまでも俺の名前を憶えていてくれ。


 俺は俵藤太(たわらのとうた)こと藤原秀郷(ふじわらのひでさと)だ。

★作者より★


作中で俵藤太は自らを日本一栄えた家系である『佐藤』の祖であると語っています。


これは本当のことなのですが、実はそれ以外にも数十に上る家系が彼を祖としていることはあまり知られていません。


いまこれを読んでおられる皆さんの中にも、俵藤太の子孫は大勢おられると思います。


そのほんの一部を抜粋すると、下記の姓の方は俵藤太=藤原秀郷の子孫である可能性が高いのです。


佐野、小山、山下、伊藤、今井、立花、平井、大平、大友、長谷川、田村、水谷、大石、沼田、田沼、近藤


この他にはもちろん、藤原さんの何割かの方も、藤太の子孫である可能性があります。


興味のある方はご自身の家系を調べていただくとよいのですが、上記以外でも藤太(秀郷)を祖と(たてまつる)る家系は非常に多いのです。


これほど多くの日本人の祖先であり、しかも稀代のヒーローでありながら、なぜこれほど知名度が低く、歴史小説家も伝奇小説家も漫画家も彼を取り上げないのか?


私はかねてより不思議だったのです。


実は(わたくし)、冨井は藤太の家系ではありません。


なぜ藤太が赤の他人である私を依代(よりしろ)に選んだのかは不明です。


しかし全国の藤太の子孫の皆様はぜひ、史上最強のスーパーヒーローの血を受け継ぐ者として、誇りを持っていただきたいと思いつつ、筆を置かせていただきます。


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