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雑魚兎が貴族に飼われててもいいじゃない!?  作者: べべ
最終章 「兎、がんばります」
36/47

終章ー1

どもどもべべでございます!

いよいよ最終章! カクくんの最後の冒険が幕を開けますよ!

どうぞ、お楽しみあれ~!

 

 見えたぞ!

 俺の横で、双眼鏡を覗く船員が叫ぶ。

 船体は嵐により激しく揺れるものの、その一言が何よりも優先されて船全体へ行き渡る。

 そして一瞬後、船上が激しい歓声に包まれた。


 まだ見果てぬ新大陸。初めてそれを目にし、足を付けるのは我々なのだという認識が、船員達の気持ちを弛緩させていた。

 俺は懐からピストルを取り出し、空に向けて一発。

 轟音によって船は静まり返り、全員が俺に注目する。


 馬鹿騒ぎしてんじゃねぇや。今が嵐だってのを忘れんじゃねぇ。

 やっこさんを目の前にして、おっんじまうようなドジはゴメンだぜ。

 そう言うと、船員達はハッとして、慌ただしく仕事に戻る。


 すまねぇな。わからなくはないんだぜ。

 目の前にお宝があるんだ、浮足立つのもしょうがねぇってもんよ。

 しかし、ここで気を引き締めねぇと足元を掬われるのが海ってもんなのさ。


 俺は、上下に激しく揺れる波の中で新大陸を睨めつける。

 そこは、まさに黄金の国と呼べた。

 全てが黄金色に染まり、来る者を歓迎する魅惑のフォルム。

 この嵐の中で、左右に揺れてしまう頼りなさ。守ってあげたい系のヒロインが如き存在感。

 頭頂はホロ苦ビターな茶色に染め上げ、思春期特有の強がりを見せちゃう感じがまた愛おしい。


 あぁ、我らがほまれの、プリン大陸。

 今すぐ行くぞ待っていろ。

 上陸早々にかぶり付き、トンネルを掘ってやる。

 プリンの中を泳ぐなんて経験はしたことがない。小さい頃、お風呂プリンを作ろうとしてお袋にマジビンタされて以降断念してしまった夢だ。

 その夢が、今こそ叶うのだ。


「…………」


 さぁ、上陸だ。

 錨を降ろせ!


「……ク……」


 なんと、浅瀬はコーラとな?

 ふふふ、プリンの後にシュワシュワと堪能してやろうじゃねぇか。

 だがまずはプリンだ。あのプリンを美味しくいただかなくてはならない。


「……ク……カク……!」


 ふふふ、もう逃さないよ子兎ちゃん。

 さぁ、お手々を合わせてください。ご一緒に。

 いただきまーす!




「カク!!」

「フシュっ?」



 突然の大声に、俺の体は痙攣した。

 虚ろな視界で瞬きすると、スイーツ系男子とでも呼べそうな少年が……あれ、双眼鏡の船員じゃねぇか?

 あれれ、プリン大陸はどこいった?


「カク、もうお客さん来ちゃうよ。早く起きてよっ」

『ぅぁ……ん~? ……あ~……』


 夢、ですか。そうですか。

 ち、チクショウ……プリンなんて貴重なものを、食う直前に起こされるとは……!

 おのれ坊っちゃん!


『寝る。寝直してプリンを食う』

「ぷりん? い、いやダメだよっ前に言ったでしょ? クロード家の方々がいらっしゃるんだから、挨拶しないと!」

『知らねぇよ。それはお貴族様の間のルールであって、ペットのルールじゃねぇ』

「契約獣にも大事なことなの! ほら、起きないとご飯抜きにするよ!」


 ぐ、おぉぉ……俺のプリン……!

 おのれ坊っちゃん、この借りは後で大盛りにして返してもらうからな……!

 具体的にはご飯的なサムシングで!


「……フシッ」

「ふぅ、よかった……さ、行こう? 今日はクロード家の人たちと朝ごはん食べるんだから、結構豪華なはずだよ?」


 それを早く言えってんだよ!

 まったくしょうがねぇ、俺だってアッセンバッハに連なる契約獣だ。坊っちゃんと共にあるのが自然の流れってやつなんだな。うん。


「……今、凄く都合のいい事考えてるでしょ」

『ホホ、存じ上げませんなぁ』

「コンステッドさんのマネしてもだめだからね!」


 こうして、俺達の1日は、やや早めに幕を開ける。

 今日到着予定のクロード家とは、おっさんと古くからの付き合いをしてる友人貴族なんだとか。

 そんな奴らはぶっちゃけどうでもいいが、それにより飯が豪華になるってんなら万々歳だ。


「さ、行くよカク」

「フス」


 まだ見ぬご馳走に思いをはせて、俺は坊っちゃんの頭の上で揺られていく。

 ん~、どうせなら、久々にプリン作るのもアリかもな~。

 

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