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雑魚兎が貴族に飼われててもいいじゃない!?  作者: べべ
第三章 「兎、実りました」
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三章ー3

どもどもべべでございます!

いよいよ物語が動きません!

ははは、このお話はスローライフですからして。そんな乱暴な、ねぇ?

というわけでご投稿! どうぞお楽しみあれ~

 

『と、言うわけで! 米を使った新しい料理を作っていこー!』

「おーっ」

「んふふふ! 楽しみですねぇ楽しみですねぇ!」


 アッセンバッハ家、厨房にて。

 俺と坊っちゃん、そして久々登場の料理長は、テンションも高らかにそこに佇んでいた。


 え? 無法者粛清のシリアス展開はどうしたって?


 そんなん、さっさと坊っちゃんに書類提出して、おっさんに全てぶん投げましたよ。

 功績はぜーんぶおっさんと坊っちゃんの物。俺はなんも関係ない。関わる気ゼロ。

 そんなめんどくさい事するくらいなら、こうして美味いもん作ってるほうがずっとマシだね!

 という訳で、今回は久しぶりに米を使った料理をアッセンバッハ家にご提供させていただこうではないか。


「で、カク? 今日はどんな料理を作るのかな?」

『そうさなぁ、素直にチャーハンなんてどうよ?』

「チャーハン?」

「ちゃあはん、それは一体いかなる料理で?」


 炒飯。文字通り炒めた飯。

 簡単でありながら奥深い、男飯の代表であり、三ツ星シェフの登竜門。

 造り手によって良し悪しがはっきり分かれる、最もポピュラーな中華であると言える料理である。


『……という感じに、飯を油で炒める料理だ。簡単なようで難しいから、米を結構消費すると思うんで今まで言わなかったんだよなぁ』

「だ、そうですよ」

「ふむふむ、確かに聞くだけだと簡単なお話ですな。して、材料は?」


 材料な。

 最低限、卵とにんにく。あと、塩コショウ。これで簡単な炒飯はできる。これ男料理の時な?

 けど、良いもので言えば玉ねぎとかハムとか入ってたんだよな。


「ふむふむ、卵、にんにく、塩……コショウ……」

「ほほ、胡椒こしょうとは。中々高級ですな」


 あ、そうか。この世界では、香辛料は貴重な感じだったな。

 コショウともなれば、かなりの値段で取引されてたはずだ。

 うぅん、そうなると、チャーハンは厳しい訳で……。


『……せんべいに変更すっか』

「せんべい?」

『米ぇ使った菓子だよ』

「へぇ、お米はお菓子にもなるんだねぇ」

「なんと! それは是非とも物にしたいですなぁ! さぁさぁカク様、ワタクシめにそのせんべいとやらの作り方を伝授していただきたく!」


 OK。チャーハンはまた今度にして、せんべいにしよう。

 とりあえず塩せんべいでいいよな……はぁ、醤油が欲しいところだぜ。

 この世界……というかこの領地では発酵食品使ってるし、醤油も作れると思うんだけどなぁ。

 ま、いいや。今はせんべいだ。


『つっても、俺も自家製の余りご飯せんべいくらいしか作ったことないから割と適当にいくぜ~』

「ふふ、適当でも美味しいんだね?」

『そりゃもちろん』

「楽しみですなぁ!」


 せんべいは、だいたい餅から作られる。

 しかし、餅までやってたら時間がいくらあっても足りないし、失敗のビジョンしか浮かばねぇから簡単なせんべいだ。

 ズバリ、炊いた米をすり潰して、丸めて薄くして焼く! この手に限る。

 俺も生前は、固くなった米をこれでパリパリせんべいにして食ってたもんよ。

 もちろん、お供は緑茶で決まりだったな。


「ふむふむ、普通に炊いてよろしいんですな?」

『本当は蒸した方がいいんだろうけど、別に炊いてるだけでも美味いからなぁ』

「……だ、そうです」

「ほほ、ではせっかくですし蒸しましょう! 美味しく出来るに越したことはございません!」


 相変わらず物好きな奴だ。わざわざ手間をかけるんだもんなぁ。

 まぁ、料理ってのは手間暇で出来てるもんだからな。何も言うまいよ。

 ちなみに、既に我が家にはお米を炊くためのかまどかまが出来上がっている。町の職人達が、坊っちゃんの描いた図から作り上げた一級品だ。

 既に、町や村の食事処にも出回っているし、着々と米はこの世に浸透していると言っていい。


「米が蒸し上がるまでは、他にせんべいの手順に何が必要かを教えていただきたく!」

「何かある? カク」

『そうさなぁ、塩と炭火かな。直火で焼いたら焦げちまうからよ』

「そうなんだ。繊細なんだね」


 繊細というか、まぁ、わりと米もちょっとした事で焦げるし、その延長だよな。

 米を蒸し器に詰めて火にかけている料理長を横目で見ながら、俺は林間学校で飯盒はんごう炊きのご飯を炭にまで昇華させていた石岡くんを思い出す。

 あの時は、全員が石岡くんに大ブーイングを送っていたっけ。

 それにブチ切れた石岡くんが、「だったら残さず食ってやんよぉぉ!」の声と共に炭に食らいつき、救急車のお世話になったことはいい思い出だ。


「さて……ではでは、お米をこねるというやり方について、事前に注意などございましたらば……」


 この料理長は、石岡くんみたいな愚を犯すことはないんだろうな。

 今でも、研修の頃のようにわからない部分を他人に頼っているんだから。

 それでいて、一回やったら完全にものにするんだから、やっぱコイツは脳のどっかがヤバイんだろうなぁ。


「……カク様?」

「カク?」

『あ、あぁ悪い。考え事してた。えぇと、とりあえず蒸したら熱いうちにだな~』


 料理長と坊っちゃんは、俺の説明にしっかりと耳を傾け、せんべいの作り方を暗記していく。

 ほんの少し、先生気分になれた。そんな時間であった。

 

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