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雑魚兎が貴族に飼われててもいいじゃない!?  作者: べべ
第二章 「兎、町と村に行きます」
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二章ー7

どもどもべべでございます!

カクくんの知識は、作者が知る範囲の知識に留めています。

つまり、知識チートもそんなに発生しません。

そんなカクくんを、そして坊っちゃんを応援していただければ幸いです。

では、お楽しみあれ~

 

 俺たちは、村から田んぼに向けての道を歩いている。

 ノンブルグの規模自体は小さなものだ。しかし、農業関連の村らしく、広大な畑が広がっている。

 もちろん、村人が管理できる範囲ではあるが……ぐるっと見回しただけで、夏野菜が所狭しと並ぶ光景を目の当たりにすれば、誰しも感嘆の声を漏らしてしまうことだろう。


 なにより、瑞々しいトマトや、雄々しく反り立つトウモロコシなんぞを見ていたら、腹が減ってしょうがなくなる。

 採れたての生野菜に塩を振る、もしくは味噌を少々塗りつけて、大きな口でガブリ! ……うぅん、そん時に広がるであろう、野菜特有の甘さと調味料の風味……それをビールなんかで流し込んだ日には……あぁ! 俺もうたまんない気持ちになりますよ!?


「田んぼは、テルム様に描いていただいた図になるべく近づけるように作ってございました。なので、川の近くに水路を作り、水を引いて利用しております」

「えぇ、僕もこの前確認しましたが、とてもよく再現していましたね」


 俺がそんな妄想に浸っている中で、先導する村長がなにやら宣っている。

 ううむ、田んぼとしての形はちゃんとしてるって訳だ。それなのに病気になるもんなんだな……稲作って難しいのなぁ。


「ささ、こちらでございます」


 で、これが問題の田んぼ、と。

 川から水を引いていると言うだけあって、森の近くに作られている。獣対策は村人達がしっかりしてくれているから問題ないだろうが、魔物の被害が心配だな。


 俺が無い頭で必死に思い出して描いた図の通りに再現されているってのがよく分かる。あぜっていう水が通る場所があって、いつでも水を咳止めて田んぼとして利用できるようにした感じの畑。そういう印象。

 今は水が張った状態で、稲が敷き詰められたように生え揃っている。一面に緑の絨毯が広がっているようで、なんとも心地の良い光景だ。


「水を逃がす場所が、反対側にございます。少々ハケは悪いですが……まぁ、そこは改良していくつもりです」

「ふむ……」

『……どうかな、カク?』

『どう、って言われてもなぁ~』


 そりゃあ、日本で見た田んぼとなんか違うのはわかるよ? だって皆初めてなんだもん。

 でも、現物見て「ここが改良点!」って言えるかっていうと、そんな訳ない。俺だって、田んぼの詳細なんざ覚えちゃいないんだから。

 あぜ道覚えてただけでも褒めて欲しいもんだ。


『とりあえず、病気だって言う稲見せてくれよ』

「ん……村長、その病気の稲を見せてもらえませんか?」

「もちろんですとも! こちらです」


 村長に案内されるままに、田んぼに近づいていく。

 ちなみにだが、坊っちゃんは汚れてもいいボロ着に着替えている。田んぼに入るんだから当然だよな。


「うひっ、ぬちょってするぅ」

『あ~、俺も子供ん頃、田んぼに足突っ込んで遊んだわぁ』


 あのジェルみたいな感触で足にまとわりつかれると、妙にこそばゆい感じで面白いんだよな。今は毛があるからそんな感触味わえないだろうが。


「こちらです」


 村長が稲を折らないようにかき分けつつ、その一角を指す。右端の真ん中辺りの場所だな。

 俺と坊っちゃんがそちらを覗き込むと……なるほど、確かにこれは……。


「葉っぱが、枯れ始めてるね」

『んだなぁ』

「そうなのです……」


 稲は順調に育っていると言っていい。

 だが、この一角の葉は、わずかながらに変色し、枯れてしまっているような印象を受けた。

 

「ひふぅ、ふぅ……どうだい、テルム?」


 おっさんが後ろから付いてきて覗き込み、顔を歪ませる。


「か、枯れているね……こ、この病気は、広がるのかな? た、田んぼ全滅かい?」

「そ、そうなのですか? テルム様!?」

「ま、まぁまぁ、落ち着いてくださいよ!」


 ん~……多分、合ってるよな?

 テレビで見た、あれ、だよな?

 そうじゃなかったらお手上げだ。だから俺は、自分の運を信じよう。


『カク、どうなの?』

『……「いもち」、じゃね?』

『いもち?』


 いもち。


 なんとかって言うカビ菌がつくことによって、先っちょとか茎とか葉っぱが枯れたりするって病気、だったはず。多分、きっと、メイビー。

 テレビで、アイドルのリーダーが「あかんやん……」って言ってたから、名前は覚えてる。けど、これで田んぼが全滅するかっていうと、わかんねぇってのが正直な所だ。

 だもんだから、俺は知ってる事を全部坊っちゃんに話すことにした。


『……っつうわけで、カビがついて起こる病気。だから、雨とかの湿気が多すぎたとかじゃね?』

『えぇ? けど、恵みの時期でも今年はそんなに多い方じゃなかったじゃない』

『米にとっちゃあ多かったんかなぁ……あと、稲の感覚が狭くて湿気が残った、とか?』

『あぁ、なるほど……』


 この村の田んぼは、出来たばかりで規模はそこまででもない。

 だもんだから、稲と稲との感覚が狭めに植えてある。

 恵みの時期……まぁ、ようは梅雨だな。そこで稲が育ったはいいけど、除湿がたりなくなってこうなったんだろう。

 これが、いもちだった場合はな?


『で、問題の対処方は?』

『……前世では、薬があったんだろうな。でも、今はそんなん無いしなぁ……葉っぱの部分を切るしかねぇんじゃね?』

『だ、大丈夫なの?』

『ひとまず、広がんねぇのを優先だろ。全部は見てねぇけど、見た感じ先っちょには症状見られねぇし、茎は……探してみねぇとな。んで、見つけ次第切る』

『うぅん……』

『これが先っちょにも広がったら、多分食えなくなるぞ。長い期間を見て、感染していくかどうか、止まったかどうか、見ていく必要があるんじゃねぇかな……』


 テレビの知識じゃこれが限界だ。

 多分、葉っぱだけなら問題ないハズだし、あとは除湿を心がけていけば広がんねぇんじゃねぇ、かなぁ。


『わかった……お父様達にも、伝えてみるよ』

『すまねぇな。損な役回りだわ』

『良いって』


 そして、坊っちゃんは後ろの二人に向き直る……この病気を、確証のない対処法を、伝えるために。

 一瞬だけ、体が震えるのがわかった。

 10歳の少年に、酷なことさせてんな……俺。

 

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