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雑魚兎が貴族に飼われててもいいじゃない!?  作者: べべ
第二章 「兎、町と村に行きます」
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二章ー6

どもどもべべでございます!

仕事行く前に投稿投稿ー。村の様子も書き込んでいきたいんですけど、あんまりボリューム増やすのもなぁといったところ。どこんとこにチカラ入れよ?

ともあれ、お楽しみあれー

 

 翌日、朝。

 俺とテルム坊っちゃんは、神妙な顔で馬車に揺られていた。

 馬は流石に交代しているらしいが、手入れ無く往復を余儀なくされている車体がギシギシと音を立て、なにやら気分を不安にさせる。

 俺らの前に座っているおっさんも、どこか不安な様子で窓の外を眺めていた。


「すまないなぁ、お前に頼らざるをえなくて」

「いえ、お父様。僕もやれることをしたいですから」

「……」


 馬車ってのは初めて乗るな。揺れるっていうか、跳ねるって感覚のが正しい感じだ。

 こりゃあ、おっさんが腰をいたわるのも頷けるってもんだ。


 ガコンっ!


「っ!」

「おぐぅっ」

「ブシュッ!?」


 おごぉぉぅ……! キ、キタァァァ……!

 尻にダイレクトアタックかましてくるこの衝撃ぃ……緩衝材である家畜の毛が敷き詰められたクッションがなければ、尾骨がいかれる未来しか見えねぇぞオイ!


「ふぅ、大丈夫かい?」

「え、えぇ、なんてことありませんよ。王都までの道のりよりは近いんですから」

「いやいや、王都までの道は舗装されてるんだから、この道中のほうがキツイんじゃないかなぁ」


 ええぇ、長さを取るか、揺れを取るかなのぉ?

 俺、もう馬車のらねぇ……!


『……カク』

『あん?』

『病気について、なんかわかった?』

『…………』


 憂鬱な気分から、陰鬱に変わるような質問を投げかけるんじゃぁないよ……。

 村の田んぼに広がったという病気。これがなんであるのか、俺はわかんねぇ。

 そもそも見てねぇし、見たとしても分かんねぇだろう。

 俺が対処できそうなのは、テレビで見た一つだけだ。だが、それを見分けるすべは、ない。


『なんとも言えねぇ……』

『……そっか』


 だから、役に立てるかわかんねぇ。

 それでも、坊っちゃんは俺を連れてきた。どうしてもって言うから、俺も了承したが……正直、残念な結末しか見えない。


「……旦那様、そろそろノンブルグだそうでございます」


 行者の近くに待機していたコンステッド氏が、俺達に、というかおっさんに声をかける。

 こいつだって連日の移動で応えているだろうに、キビキビとしたもんだ。人間やめてんじゃね?


「ありがとうコンステッド。さぁ、準備をしようかテルム」

「はいっ」


 窓から顔を覗かせれば、おそらくノンブルグで育てているであろう麦畑が広がっている。

 確かに、ここまでくれば村までは近そうだ。これが秋になれば黄金色の大海に様変わりすることを思うと、心躍るものがある。


「テルム、その上着取ってくれないかい?」

「はい、これですね?」

「ん、ありがとう」


 おっさんと坊っちゃんは、貴族に相応しく外見を取り繕う準備を始める。

 こういう所、ホント貴族ってめんどくさい。しかし、必要なんだからしょうがないって感じだな。

 俺、本当に角兎ホーンラビットでよかったわぁ。




    ◆  ◆  ◆




「おぉ、領主様! テルム様も、連日の移動お疲れ様でございます!」

「お体を休める場所をご用意しておりますので、どうぞこちらへ! 蜂蜜を入れた乳も用意してございますので、しばし休憩を取ったほうが……!」


 ノンブルグは、素朴な雰囲気ではない村だった。

 ここに来るまでの畑からは、程よい田舎のローカル(意味被り)な雰囲気が漂っていたのだが……いかんせん、家屋のデザインがホーンブルグのものと酷似してるもんだからどっかオシャレな雰囲気になっている。

 まぁ、当然だわな。建築技術なんかは共有してるし、大工とかも出張してるんだろうしな。


 そんなノンブルグについてから、おっさん達を出迎えたのが、村長率いる村人たち。

 なんと言いますか、若い頃にストレスを溜め込んだんだろうなって感じの村長だった……でなければ、あんな頭にはなるまい。

 俺も、転生せずにずっとあの会社で仕事し続けてたら、あんな風になっていたんだろうか……。


「やぁ村長、悪いけど頂こうかな。一息つかないことには我々も動くに動けないよ。ははは」

「すみません村長さん。田んぼは休憩の後に見に行きますね」

「えぇ、もちろんです! ささ、どうぞこちらへ!」


 荷降ろしはコンステッド氏に任せて、俺らは休憩所へ向かう。

 といっても、いつでも田んぼに行けるように、外に日陰を作ってそこで飲み物を頂けるようにしてあるようだ。おっさんが村を発つ前にこう指示していたらしい。

 正解だな。家の中でまったりしているよりは、こっちの方が今は気が楽だ。


「ど~ぞっ」

「わぁ、兎だぁ!」

「魔物ですか? テルム様の契約獣で?」

「えぇ、カクといいます」


 数人の子どもたちが、椅子に座った俺らに蜂蜜ミルクを持ってきてくれた。所々に擦り傷があるのは、田舎の子どもたちが活発に走り回っている証拠だな。

 チビっ子みたいにマセているわけでもないし、純粋な瞳で俺を見ている。なんだかこそばゆくなっちまうう。


「……フスッ」

「あはは! かわいい~」

「よかったら、撫でてみる?」

「いいの!?」

「おとなしいから、安心して撫でていいよ。ただ、優しくね?」

「は~い!」


 おいおい、勝手に決めんなよ……まぁ良いけどさ。

 子どもたちが俺を撫でる手は、最初はおずおずとしているものの、次第に遠慮がなくなっていくのが伝わってくる。

 それでも、手付きは優しいもんだ。良い子達じゃないか。


「テルム、これを飲んだら早速、田んぼに向かうよ? いいね」

「はい、お父様」


 おっさんと坊っちゃんは、甘さと濃厚さを兼ね備えているであろうミルクに舌鼓を打ちながらも緊張した様子を崩さない。

 この村の未来を占う瞬間に立ち会っているのだから、当然だろう。

 というか、俺には何かないのかしらね~?


「うさちゃん、お野菜食べる?」

「これ、トウモロコシの芯だけど!」

「フシッ」


 あ、食います食います。

 芯でもいけちゃうよ! 魔物ですからねっ!


「……それで、その、領主様……テルム様がいらっしゃったのであれば、あの田んぼは大丈夫なのです、よね?」

「「…………」」


 村長の問いかけに、二人は押し黙る。

 視線を泳がせ、言葉を探しているようだ。


「悪いが、断定はできないなぁ」

「見てみないことには、なんとも……」

「……さようですか」


 だが、結局のところ、答えられるのはこういう返事だ。

 変に希望を持たせるよりはいいと思うが……さて。


「……フスッ」


 俺も、ちと必死に頭を働かせてみにゃならんかなぁ。

 


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