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雑魚兎が貴族に飼われててもいいじゃない!?  作者: べべ
第二章 「兎、町と村に行きます」
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二章ー4

どもどもべべでございます!

今日はギャンブル回。スローライフによくある娯楽布教ですね~。

これ楽しめるやつなのかしら? しらん!

というわけで、お楽しみあれ~

 

「……それじゃあ、準備はいいかな?」

「えぇ、ルールはわかったわ!」

「それじゃあ、行くよ……!」


 同日、同刻、ギルド内にて。

 坊っちゃんとチビっ子は、所持金を分けて手持ち金とし、兄妹での業が深いギャンブルに乗り出した。

 テーブルの上には、赤、青、緑のカード束。それぞれ10枚。

 互いにシャッフルし、それぞれの手札として手元に置いている。


「フシッ」


 俺もまた、自分の前に置いてある緑の札を見る。俺も参加者として立候補させていただいた。つまるところ、持ち金3等分というわけだ。

 そこはチビっ子が渋ったが、俺の最終持ち金は二人に等分するという条件でねじ込ませてもらったぜ。


「カク、いつでもいいよっ」

「……フスッ!」


 俺の合図と共に、2人は裏返ったカードを吟味し始める。

 坊っちゃんが青、チビっ子が赤の札の中から、一枚だけ選ぶのだ。


「これにするわっ」

「僕はこれっ」

「フシッ」


 互いににらみ合い、笑い合う。

 そして……


「「せぇ~のっ!」」

「フスッ!」


 二人と一匹は、そのカードを額に押し付けて向かい合った。

 そう、俺が提案したギャンブルは、「インディアン・ポーカー」。

 だ~いぶ昔からどっかの国でやってるらしい、心理戦型カードゲームである。


「むむむ……」

「ふふん?」


 ルールは極めて簡単。どちらかが大きい数字かを競うゲーム。

 なれど、その数字は自分の物は見えず、相手の数字しかわからない。


 たとえば今回、坊っちゃんは「3」、チビっ子は「6」。


「えっと、「親」は私よね? じゃあ、屑銭10から」

「ん~……」


 こうなると坊っちゃんの負けなのだが、相手の数字を見て「降り」を選択することができる。

 親となった者が掛け金を設定し、その札に勝てるかどうかを子が判断し、最終的な勝負をするのである。

 もちろん、勝ったら場に出た金額は総取りだ。降りたとしても金は払わないといけないと思うんだが……そこはいまいちあやふやだったんで、「掛け金の半額を支払えば降りられる」とした。


 本来ならば、相手の表情や反応を見て、または心理戦をしかけて情報を導き出すというゲーム。

 友達同士ならば和気あいあいと出来ようが……今ここにおいては、完全に食うか食われるかのデスゲームである。


「どうしたのお兄ちゃん? 勝負? 降りる?」

「くっ……!」


 だが、すまんなチビっ子よ。

 今日は、お前に涙を飲んで貰うぜ……!


『坊っちゃん……3だ』

『カク……7だよっ』


 内心で、俺と坊っちゃんはすこぶる愉悦な笑みを浮かべていることだろう。

 そう、俺たちには、『念話』がある!

 事こういう複数人ゲームにおいては、チートといっても過言じゃねぇぇ!


「降りるよ」

「フシッ!」


 坊っちゃんは屑銭5を置いて降り、俺は10を置いて勝負とした。

 へっへっへ、これで俺が総取り、坊っちゃんの方が消費が少ない分、得をするのは坊っちゃんだ。


「じゃあ行くわよ~、勝負!」

「フスッ」

「……よかった。勝負してたら負けてたね」

「あちゃ~! 負けた~!」


 チビっ子は悔しそうにテーブルを叩きながらも、コロコロと笑っている。


「楽しいわねこれっ! よ~し、次はお兄ちゃんが親だから、絶対勝負してやるわ!」

「ははは、怖いなぁ」


 坊っちゃん、眉をハの字にして苦笑しつつ、余裕な態度を見せようとしない。まったくもって演者である。

 ともあれ、この方法ならば負けは無ぇ。怪しまれないように適度に負けつつ、坊っちゃんの取り分が多いように勝負を決めちまえばいい。

 怖いわ~、俺の計略完璧だわぁぁ!


『にゃ~、そぎゃあぁなズルっこ、認めにゃんなぁよ』

「!?」


 うおぉ!? ビビった!

 なんだ今の、坊っちゃんか? いや、坊っちゃんの念話とは波長が違う。

 というか、今の念話か? 無理やり割り込まれた? 誰に!?


『ホッホ、おみゃあにゃ悪いがにゃ、この勝負は念話無しにゃんな? そこな坊主にも言っとくにゃあで、真剣勝負と洒落込みゃ~よ』


 坊っちゃんを見る。その顔は動揺に歪み、バッと顔をカウンターに向けている。

 その動きに習い、俺もまたそっちを見てしまう。

 そこには……カウンターで美女に撫でてもらっている、リア獣がいた。


『せっかく面白い見世物にゃんなぁに、興冷めなぁ事しにゃんなぁ?』

『お、お前、お前、魔物なのかよ!?』

『ちいと違うにゃぁ。ギルドのマスコット、「ギルネコくん」にゃんならあ、ちっとは有名にゃケットシー、妖精にゃんなぁよ。人間からしたら同一の魔物にゃんがぁの』


 模様的にはトラ猫か? 通常よりもでかい猫が、口を裂けんばかりに広げて笑っている。

 よ、妖精だぁぁ!?

 ふざけんな、そんな奴飼ってんなよ商人ギルド!


「お兄ちゃん? 早くしてよ~」

「え、あ、あぁ! うんっ、せ、せぇのっ!」


 場に流されるままに札を出す坊っちゃん。

 札は「10」、対するチビっ子は「1」。

 俺の札はわからんが、この場では10が最高だ。勝負なんかできる訳がない。

 だが何より痛いのは、ここでチビっ子の「1」が消えてしまうことだ。


「じゃあ、10から……かな」

「ん~、勝負するって言ったけど、これは無理ね! 降りっ」

「……フス」


 全員が降り、坊っちゃんが10の儲けを得る。


「あはっ、ラッキー! 1が消えたわ。これで強気に行けるかしら?」

「「っ……!」」

『にゃっはっは。頑張りにゃぁよ、おみゃあらよぉ?』


 ギルネコくんなる、訳のわからん邪魔者が入ったことにより、俺と坊っちゃんの連携は瓦解した。

 ここから先は、互いの運が、そして知力が物をいう……!




    ◆  ◆  ◆




「ふふふ、デブ兎のおかげで大儲けね!」

「うぅ……カクぅ」

『その……すまん』


 結果。俺が足を引っ張りました。えぇ。

 坊っちゃんは頑張った。俺とチビっ子の消費手札を暗記し、自分の残り手札を計算して見事に勝利を収めたりしてた。

 しかし……俺が負けに負けた事により、結果としてはチビっ子に金が多く流れる結果になってしまった。

 いや、残りの札が何~とか、まったく考えてなかったよね!


「さ~て! ギルネコくん肉まん食べるわよ~!」


 チビっ子は意気揚々と、憎き怨敵の顔が焼印された肉まんを食いに駆け出していく。

 クソっ、あいつさえいなければ……!


『にゃっはっは! 良い見世物だったんにゃぁ』

『ぐぬぬ……! おのれぇ』


 受付美女に腹を撫でられ、気持ちよさそうに伸びをしつつ笑うクソネコに、思わずガン付けてしまう。


『にゃ~に睨んどる。妹君に種ぇ教えとらんだけマシにゃんなぁと思わんならぁ』

『ぐぬぅ!』


 た、確かに、あそこで種明かしされてたら、俺はチビっ子に雑巾絞りの刑に処されていたことだろう。

 そういう意味では、コイツに強く出られない……!


『それに、にゃあ。兄君はあれで得するみたいにゃんなぁ。気にするみゃあよ』

『あん? 何言ってやがる』

『……おみゃあは兄君と連なって正解にゃんなぁ。無能が過ぎて笑えんにゃあ』

『喧嘩売ってる?』

『あれ見にゃぁよ』


 クソネコが尻尾で指す方をチラリと見てみる。

 そこには、坊っちゃんとギルドの職員がなにやら書類を挟んで話をしている姿があった。


「えぇ、そうですね。複数人でやれるという意味合いでは、家族間で行えるゲームとして売り出せるかと」

「最低3人ですかね?」

「一対一ではルールを見直す必要がありますし、3人でという表記は必要でしょうね……あぁ、売り出す際の利権はアッセンバッハ家にありますからね?」

「心得てございますよ」


 なんだ? あれ。


『さっきのゲームを、広めて売るつもりにゃんなぁよ』

『マジかよ……商魂たくましいなおい』

『とゆ~か、権利を得とかないと、賭博場に拾われるなんにゃあ。今のゲームは金の動きが激しいにゃんで、欲しがる賭博場が多いと見るにゃんよ』


 なるほど。だからパクられる前に権利を作って、賭博場に展開する為にはアッセンバッハ家お抱えの商人に金を入れないといけない、と。

 裏と上手くツルムための地盤を作った感じかね……。


『坊っちゃん、頭良いんだなぁ』

『おみゃあが考え足らずにゃんなぁ。あんなエグいシステム知ってるにゃんならぁ、治安が崩れんよう保険かけとかにゃぁ。あの兄君はそれを理解してただけにゃんよ』


 ぬう、言い返したいが、何も言えん。確かに、坊っちゃんの先見の明に助けられたな。

 流石は貴族ってところか。


『……まぁ、あの兄君が名前を売る為にここで披露したってぇのも、考えられるんにゃぁが』


 感心している俺には、クソネコの最期の言葉がよく聞こえてこなかった。

 こうして、ギルドでの時間は過ぎていく……。

 

 

ちなみに、ギルネコくんの喋り方は、とあるお気に入りさんのネコキャラを参考にさせてもらってます。

許可とってないけどね! ごめんなさいね!

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