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雑魚兎が貴族に飼われててもいいじゃない!?  作者: べべ
第二章 「兎、町と村に行きます」
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二章ー1

どもどもべべでございます!

今回から二章がスタートと相成ります。二章は、町と村に焦点を当てていこうかな? と考え中。

カクとテルムがここで何を生み出すのか。どうぞお楽しみあれ~

 

 この世界の夏は、そこまで暑くない。

 いや、暑いには暑い。夏だから当然だ。しかし、こと日本を知っている俺からしてみれば、茹だるようなアスファルト熱や紫外線ファイヤーなんぞが無い時点で天国と言える。

 その上、ここは自然に囲まれた田舎町。人工物がさほど存在しない空間ということもあり、夏の暑さは鳴りを潜めているのだ。

 これが王都であったならば、まだ暑さは増すことだろう。人間とはすべからく、熱を生み出してしまう生き物なのだから。


「それじゃあネア、テルムとテレサを頼んだよ」

「えぇアナタ、心配しないで? アナタも、村をよろしくお願いしますね」


 そんな夏の館。玄関前にて。

 俺の目の前では、仲睦まじい夫婦のスキンシップが展開されている。

 江戸だろうと現代だろうと異世界だろうと冥界だろうと、女が男を見送る姿は絵になって大変好ましい気持ちになる。それが別嬪べっぴんさんであればなおさらだ。


「お父様! いってらっしゃいませ!」

「私達もお母様の手伝い頑張るわっ!」

「うん、よろしく頼むよ二人とも。母さんを支えてあげておくれ」


 ここにくわえて、愛する我が子まで見送りにきていると言うのだからおっさんはリアル充実の極地にいると言っていい。

 人間時代の俺が、どうあがいても手に入れられなかったお宝だ。眩しくって仕方がない。


「カクくん、テルムをお願いするよ」

「フスッ」


 おっさんがどこへ行くかと言うと、領地として任されている村への視察である。

 現在、アッセンバッハ家が拝領しているのは、ここ田舎町の「ホーンブルグ」。そして、そのホーンブルグから派生した農村、「ノンブルグ」だ。

 元々ホーンブルグも農業と畜産を生業としていた村であったが、先々代の領主がどんな魔法を使ったやら、町と呼べる規模まで拡大したらしい。

 んで、先代が膨らんだ人工をなんとかするため、新たな農村を作り上げたのがノンブルグだという。

 2つの土地はお互いに助け合い、今代の領主であるおっさんの指示の元で回っているのだ。


「よし、じゃあ行こうかな。コンステッド、荷物は積み終わったかな?」

「は、全て滞りなく」

「ん、ありがとう」


 今回おっさんは、そのノンブルグで行われてる米農業……稲作の経過を確認しに行くのだろう。コンステッドをお供につけて、馬車で片道何時間もの距離を揺られるのだ。

 おっさんの腰が爆発しない事を祈ろうじゃないか。


「何事もなければ、明日の昼には帰ってくるよ。料理長にお昼は楽しみにしていると伝えてくれるかい?」

「ふふふ、わかりました。いってらっしゃい」


 おっさんとお母ちゃんが微笑み合う。視線を絡ませ、互いの気持ちを確認しあっているかのようだ。

 そして名残惜しそうにおっさんは馬車に乗り込む……いや、仲良すぎだろアンタら。この調子だと、チビっ子に弟妹ていまいができる日も近そうだ。


「「いってらっしゃ~い」」


 テルム坊っちゃんとチビっ子が手を振り、馬車の中でおっさんもそれを返す。

 いつまでもそうしてたら何も始まらないから、コンステッドが行者に指示を出し、馬を走らせて行く。

 こうして我が家の大黒柱は、名残惜しそうに一泊二日のお仕事に向かうのであった……ホントあの人、家族好き過ぎだなぁ。


「……さぁ、これから忙しくなるわよ。テルム、テレサ?」

「はい、お母様」

「はいっ」


 馬車が見えなくなるまで見送った後、お母ちゃんが俺たちに振り返る。

 そう、今日は俺たち、というかこの2人にも仕事があるらしいのだ。


「お父さんがノンブルグの視察に行っているのだから、残った私達はホーンブルグを見て回らなければなりません。特にテルムは、少しでも多く土地を理解しておかなければなりませんよ?」

「はいっ、お母様!」

「お母様、お買い物していい?」

「ふふ、そうね。必要な物なら少しは買い足さなければならないわね」

「わーい!」


 へぇ、町の見回りたぁ勤勉なことだ。チビっ子は完全に遊び半分だが、坊っちゃんはいずれ領地を継ぐ身。真面目に考えているようだな。

 ……正直、そんな坊っちゃんにはついていきたくないなぁ。今日はチビっ子についていこうかなぁ。


「……カク? ボディガード、よろしくね?」

「フシッ!?」


 くっそ! 読まれてやがった!

 これじゃあ抜け出して遊べねぇじゃねぇか! よりにもよってお母ちゃんのいる場所でそれを言うなんて……狙ってやがったな!


「テルム? 正直……カクがボディガードとして役に立つとは思えないのだけど……」

「いえいえお母様。カクは信頼できる僕の友人です。これほど頼もしいボディガードはいませんよ」

「そう? ……それなら、まぁ、ホーンブルグならば大丈夫だろうけど……」


 お母ちゃんと俺の目が合う。

 その視線からは、「テルムが怪我したら承知しませんよ?」という威圧を感じさせられた。


「フ、フスッ、フスッ」


 慌てて首を縦に振りたくり、任せろとアピールしておく。

 町でこっそりおこぼれ貰い旅に出ようと思い描いていた俺の絵は、あっさりと瓦解せしめてしまったのであった……。

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