表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
五縄の桜  作者: 潜水艦7号
8/41

当身の技を修めし巨漢は

五縄流柔術の一派『当身術』、その師範を務める(たに)の道場は街外れにある。


道場の『看板』は一応、『空手』を謳ってはいるが『それ』は建前というものだろう。ごちゃごちゃと説明するのが面倒で、そうしているだけだ。


渓は、そもそもが弟子を取ることに頓着しない性分である。


ごく稀に「弟子にしてくれ」とやってくる物好きも居ないではないが、大抵の場合は少しだけ見て「他に合うべき道場がある」と断ってしまうのだ。ある意味、偏屈と言えばそうなのかも知れない。


そんな渓の眼鏡に叶った人物がひとりだけ居る。それが唯一の弟子である、『柏木重道』であった。


柏木は元来、一本木な男で『眼前に大岩ありて其の道を塞ぐのであれば、己が拳で砕き通るのみ』という剛気である。

渓はその豪胆さを気に入って、愛弟子と定めたのだ。


柏木は元々にして空手を嗜んではいたものの、130kgを超える生来の大柄が逆に災いして対戦相手が限られることもあり「ならば空手に己を縛る意味は無し」と悟って渓の弟子となったのだ。


夕刻過ぎ。いつもの時間に渓が道場に入ると、すでに柏木は稽古を始めていた。

何もない虚空を見据え、其処に『相手』をイメージする。


そして、そのイメージ相手の『隙』を逃さず『突く』のだ。

ブン‥‥と拳で空を切り裂く音が聞こえる。

今日はまた、一際に強く相手をイメージしているようにも見えた。


「‥‥柏木よ、聞いたか」

道場の上手(かみて)に、どっかりと渓が腰を降ろす。


「楠の事ですか?はい、聞き及んでおります」

柏木が、渓の方に向き直った。

その顔には、無数の汗が滴っている。


「うむ‥‥あまり他人の事を悪く言うのも憚られるが‥‥随分と一方的だったようだな、話に依ると‥‥だが」


「‥‥楠君は、良くも悪くも『柔道』に邁進した男ですから。或いは、そういう結果も『やむ無し』かと」


渓は、じっと柏木を見つめた。

「自分なら、同じ轍は踏まぬ‥‥と?」


「さて、勝負の結果は時の運が左右しますので『絶対』とは申しませんが。ですが、自分なら少なくとも詐術に絡み取られるほど(やわ)ではないかと」


「だろうな‥‥」

さもあらん。


何しろこれだけの巨躯だ。容易な事では寝っ転がされぬだろうし、関節を極めようにも、腕力や脚力が常人のそれとはケタが違う。

何しろ単純な握力だけでも100kg表示の握力計を振り切ったという伝説があるほどだ。その一撃には、文字とおり底知れぬ破壊力があるのだ。


楠源一郎は以前、この道場へ出稽古に出向き、柏木の胸を借りた事がある。だがしかし、あまりの体格差が故に『参考にもならぬ』と感嘆を吐くのみであった。


「だが、油断はするなよ‥‥?ワシは桜生なる若造はよぅ知らんが、師の片桐清三なら腐るほど知っておる。『アレ』は、こと手合わせとなれば油断も隙もならぬ『(むじな)』よ。もしも許されるなら、闇討ちにしてもワシの腹は収まらんほどだわ‥‥」


ギロリ、と渓の眼が光る。


「お任せください。その『恨』、必ずや晴らしてご覧にいれましょう」

柏木の丸太の如き野太い腕にギリリ‥‥と力が漲った。



夜更けになって。

柏木は道場を後にした。


ザッ‥‥ザッ‥‥と雪駄が地面を摺る音が路地に響く。

周りに、人影のひとつとて無い。


ここから数百mほど先に、夜遅くまで営業している風呂屋があった。

混んでいる時間帯に行くとその体格と風貌から『その筋の輩』から因縁を付けられる事も度々なので、柏木は空いている時間を狙って行くようにしているのだが‥‥


「ふむ‥‥」

背後に、先程からチラチラと『気配』を感じる。

現れては消え、消えては現れ‥‥


「ほほぅ、『もう』来たのか。思いの外、早かったな」

柏木は歩きながら、辺りを見渡す。


何処か、適当な場所はないか。


別に舞台はどうでも良かった。何なら『此処』でも構わないほどだ。

だが、下手に往来で一悶着起こして警察でも呼ばれると話がややこしくなって困る。出来れば人目に付きにくい場所を選びたいものだが‥‥


ふと、柏木の足が止まった。

それは、古い建設資材置き場だった。


かつては地元の建設業者が使っていた敷地だが、現在は荷はそのままに打ち捨てられて荒れ放題になっていた。


「ここなら、人目につくまい」

柏木はそのまま、中へと歩を進めた。


そして、足から雪駄を脱いで素足になると、じっと辺りを伺う。

「‥‥隠れてないで出てこい。『用事』があるのはお前の方なんだろう?」


「これで公開」と決めてからでも、後から見直すと結構「ありゃ?」と思う事があります。

誤字脱字(腰を降ろすが、抜かすだったり)はもとより、ストーリーに矛盾や無理があったり、説明不足や文章の見難さ等々‥‥

都度ごとに見直しては「あ、此処直そ‥‥」と細かい調整を続けております。

今回の場合も、直前になって柏木が五縄流に師事した理由を、後のストーリーとの整合をとるために改変しています。


公開が遅々として進まないのは、そういう「確認・修正する時間」が掛かるためです。

すいません‥‥

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ