表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/83

65 リアナの頼み

翌日。

今日は授業が休みだ。朝食を済ませた後、部屋で魔法科学Ⅱの教科書を読む。


昨日あの後、俺は市長には魔力値がρのときの魔法陣を見せてもらった。

模様自体は初めに見せてもらったものと同じ斜格子であり円の数も同じだったが、一番外側の環だけではなく、いちばん内側にある小さい環にも模様が入っていた。


模様の位置が魔力値を表す、と市長は言っていた。その具体的な意味を確認するために、俺は教科書を繰って魔法陣のページを探しているのだ。


あった、ここか。やはり予想通り、そこには2進数の説明が書かれていた。

一番内側の環から順番に、それぞれの環に1,2,4,8,16……というふうに数字が割り振られているのだ。そして、模様が入っている環の番号をすべて足し合わせると魔力値になる、というわけだ。

例えば内側から5番目の環にのみ模様が入っていれば、魔力値は16。


一番内側の環と内側から5番目の環に模様が入っているならば、1+16=17で魔力値は17、つまりはρの魔法ということになる。


また、魔力値が22の魔法なら16+4+2=22なので、内側から2番目、3番目、5番目の環に模様が入る。組み合わせをうまく作っていけば、どんな魔力値の魔法でも表現できるのだ。


教科書の説明文の下にあった練習問題を解こうとしたところで、部屋の扉をノックする音がした。

「はい、どうぞ」


扉を押し開けて現れたのはルーシェだ。

「ノエリアちゃん、リアナちゃんが呼んでるよ」


「分かったよ、ありがとう」

「それって教科書? 勉強してたの?」

ルーシェは俺が開いていた教科書をのぞきこみながら尋ねた。


「ああ、そうだよ」

「へぇー、こんなにカワイくなっても、相変わらず真面目なんだね」

そういいながら舞花は、俺に軽く抱きつこうとしてくる。


「やめろ。というかその姿になった舞花が言うことじゃないだろ」

俺は青銀の髪をした童顔少女を横目で見る。

「あ、ちゃんと舞花って呼んでくれるんだ。リアナちゃんとか市長さんの前だといっつもルーシェだもんね。この名前もいい加減慣れたけどさ」

「それはお互い様だ」


「口調だって、すっかり可愛い女の子言葉になってるもんね」

舞花がからかうように言う。


「仕方ないだろ。これでも最初のころは結構苦労したんだ。今はもう慣れたけどな」

敢えて男性的な言葉遣いを意識して、俺はそういった。この高い声では形無しには違いないのだが。

舞花は楽しそうにふふ、と笑って俺から体を離した。


「あ、そういえば昨日、市長さんに面白いもの見してもらったんだって? なんだったの?」

「魔法陣だよ」

「へえ、魔法陣なんてあるんだ。そんなのアニメの中でしか見たことないよ。あたしも見たかったなあ」


「まあ、思っていたよりかは地味だったけどな。それより舞花、仕事に戻らなくていいのか、またセラフィさんにどやされるよ」

「ええー、はーい……」

不満そうな声を上げながら、俺とともに舞花は部屋を出た。


掃除に向かった舞花と別れ、俺はリアナの部屋へと向かった。

「リアナ、わたしだよ、ノエリア」


ノックをしながら中に声をかけると、入っていいわよ、という声が中から聞こえた。

「失礼します」

俺はいいながら、日のよく差し込む南向きの部屋に足を踏み入れた。


リアナはグレーのキャミソールを少し着崩してベッドの上に腰かけていた。

起きてまだ間がないのか身支度の途中なのか、肩紐は片方腕に落ちていて、髪もまだ少し乱れていた。

「早朝に呼び出して悪かったわね」


既に9時を過ぎている。早朝ではない。

「いや、いいよ。それより何の用?」

「大した要件じゃないのよ。ただ、その……、えっとね、今日、一緒に、ギルドに行ってくれないかしら?」


少し不安そうに、リアナが俺のほうを見てくる。なんだ、そんなことか。

俺は拍子抜けして思わずきょとんとした表情を浮かべてしまった。


「あ、いや、もちろん、嫌ならいいのよ、嫌なら」

リアナが珍しく慌てたように言う。俺はリアナを落ち着かせるように、ゆっくり答えた。

「いいよ、もちろん」

「いいの!?」


なぜ驚く。俺は肯定を示すために大きくうなずいた。

それからリアナは、取り繕うように捲し立てた。

「いや、その、この前は私が無茶なことしたせいでノエリア先生に迷惑かけちゃったし、また同じようなことになっちゃうかもしれないし……」


ああ、旧坑道でのことを言っているのか。

「そんなこと、気にしなくていいよ。わたしだって、リアナと一緒に討伐行きたいからね」

やった、とリアナは声を漏らした。


「でも、無理はだめだよ。わたしたちは未熟者の子供なんだから、そこをわきまえて行動しないとね」

はい、とリアナは元気よく返事をして、着替えを始めた。

寝巻きのままだったのかよ。

3章の最後に、「ギリシャ文字一覧」を付録として掲載しました。

よければご活用ください

(追記:割り込み投稿に少し手間取ってしまいました...)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ