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転生魔狼の異世界冒険  作者: はすか
盗賊討伐編
9/33

義賊と奴隷

 

 できる限り足音や気配を殺しながら洞窟へ近づいていきます。

 洞窟の入り口近くまで来ると中からは声が響いてきます。

 入り口に見張りが誰も居なかったので外れかとも思いましたが、聞こえてくる声と漂ってくる人の臭いから当たりだと安堵します。

 洞窟のすぐそばから中を窺うと、そこには二種類の人間たちがいます。


 一組は統一性のない防具で身を固めている、明らかに盗賊だと分かる人たち。

 もう一組は一見すると一般人に見えるが、首につけられている首輪から奴隷であると推測される女性たち。

 これだけを聞くと普通の盗賊に聞こえるのですが、目の前にいる盗賊は普通とはいえない様子です。

 というのも大抵の盗賊なら女性の奴隷をどう扱うかは大体決まっています。

 しかし、目の前の奴隷の女性たちは酷い目の間反対で盗賊たちから丁重にもてなされているのです。

 本来奴隷が着る服というのはお世辞にも普通とは言えない程にボロボロな状態の服なのですが、今女性が着ているのはサイズこそ合ってはいませんが普通の服を着ています。

 そして肝心の盗賊たちですが、彼らは大部分は荷物の整理をしていて、十人ぐらいの少数が洞窟の中央辺りに置かれた簡易的な作りの机を囲み、喧々諤々と言い合いをしています。



「だーかーらー、魔道具なんだから壊れるまで魔力を流し続ければいいだろ!」

「ですから、隷属の首輪はそう簡単には壊れないように作られているんです。そもそもあの首輪は王宮に仕えている魔術師が百人魔力を注いでも壊れなかったらしいですよ?」

「な、ならどこかの街から魔道具に詳しい奴を呼んで、どうにかさせるってのは?」

「隷属の首輪を外せる程の腕を持った人なんて殆どは貴族御用達か、特定の貴族専門でしょうね。フリーの人間も居るでしょうが数は少ないでしょうからね。何より、僕達の素性を明かすことができないのが一番の問題点なんですよ」

「じゃあどうすればいいんだよっ!」

「一番現実的なのは奴隷商で正規の手続きをすることなんですが、彼女たちを保護した経緯をどう説明するかなんですよね」

「まあ、盗賊だしな。俺たち」



 十人ぐらい集まってはいますが、基本話しているのは完全に盗賊のお頭っぽい男と、眼鏡をかけた科学者のような男の二人だけです。

 後の人たちは二人の話を聞いて何か紙に書いています。



 しかし話している内容から察するに、この盗賊たちは奴隷である女性たちをどうにか解放させようとしているようです。

 奴隷から解放されるには首につけられている隷属の首輪を外さなくてはなりません。

 しかし、隷属の首輪を外すためには専用の魔道具が必要となり、それが置いてあるのは奴隷を扱っている奴隷商館か、そういった魔道具を作っている工房ぐらいでしょう。

 私の魔道具作成ならどうにか出来るかもしれませんが、今の状況だけで手を貸してもいいかは分かりません。

 しかし、今回は話を聞くぐらいならしても言いと思いますね。

 普通は?問答無用で殲滅一択ですよ。



「ならどうすれば……誰だっ!?」



 私が洞窟の入り口に立つとお頭っぽい男の人がすぐに気づき、近くに置いていた手斧を構えます。

 すぐそばには大きな斧も置いてありましたが、いくら広いとは言っても洞窟の中ということもあってか手斧を手にしたようです。

 他の男たちも各々ナイフや鉈等の狭い空間に適した武器を手にしています。

 また、私が小さい女の子という侮られやすい見た目をしているのですが、男たちは誰一人油断することなく私のことを見つめています。

 更には数人は奴隷の女性たちの前に立ち、守ろうとしています。

 割りと印象は悪くはないですね。



「私はフォレスと言う街の方から来た冒険者です。最近この辺りで暴れている盗賊を討伐に来ました。お聞きしますが貴方たちがその盗賊ですか?」

「いや、違う。俺たちは昨日ここに来たばかりだ。それに、俺たちがここに来た目的もお前が言っている盗賊の壊滅だ」

「それを証明できますか?」

「……言葉でしかできない。それに、お前にそれで納得してもらえるとも思えない」

「構いません。教えてください」



 男からの話をまとめると男たちは盗賊行為をしているが、対象にしているのは盗賊などの犯罪者や、違法な行為をしている貴族や商人だけみたいです。

 いわゆる義賊というやつですね。

 盗賊たちの情報は協力者から教えてもらい、昨日ここに到着したばかりのようです。

 奴隷の女性たちはここに来た日に奴隷商の馬車を襲い保護したそうです。

 どうやら村の娘を誘拐するなどして違法に奴隷を調達するような商会の人間だったようで、前から目をつけていたようです。

 それに関しては女性にの人達からも話を聞いたので嘘はついてはいないでしょう。



「貴方達のことは良く分かりました。女性の方からの話にも矛盾はなかったですし」



 義賊だけでなく女性の人たちも安堵の表情を浮かべます。

 しかし、



「でも、皆さんが義賊であるという明確な証拠はありませんよね?そこはどう説明してくださるんですか?」



 そう。女性の方々に関しては信用できるのですが、肝心の義賊であるということに関しては彼らの言葉でしか証明はされていないのです。

 勿論自分達は義賊だ、なんて書類は存在はしません。

 基本義賊というのは活動を続けていき、その結果として民衆から義賊であると認められるのです。そこに明確な証明は必要ないのです。

 彼らもそれを分かっているためか悔しそうに、それと同時に納得した顔をしています。

 向こうから攻撃をしてくる気配はありません。あくまでも防衛のために武器を構えているようです。



「すまんが、俺たちができるのは言葉での証明だけだ。無論、それでお前さんが納得してくれるとも思っちゃいねえ」

「それなら、私がどうするかも分かりますよね?」



 そこまで言うとより一層義賊の人たちの警戒度が高まったようです。

 しかし、私も同様に攻撃されても大丈夫なように警戒を強めます。

 今の状況を言葉に表すなら一色触発でしょうね。



「義賊の皆さん。盗賊討伐なんですが、協力しませんか?」

「……はぁ?」



 お頭っぽい人は私の言葉を聞いて、肩透かしを食らったような顔をします。

 まあそうでしょう。さっきまで戦闘が起こってもおかしくない空気でしたからね。

 女性たちは話についていけなくなっていますね。



「えっと、お前さんは盗賊を討伐に来たんだよな?」

「はい。そうですよ?」

「そんなら、俺らを捕まえるのが普通なんじゃねえか?」

「捕まりたいんですか?」

「いや、そんなわけないけどよ」



 戸惑ってますね。

 他の盗賊の人たちも同じように困惑顔をしています。



「私が探している盗賊と貴方たちは違うみたいですからね」

「そんだけの理由か?何か企んでんじゃねえよな?」

「そんな面倒なことはしませんよ。やるならこんな話し合いなんかしないで問答無用で潰してますよ」

「お、おう。そうだな」



 何で引いてるんですか。何ですかその乾いた笑いは。

 だって普通の冒険者はそうするんですよ。

 子供にしか見えない私が言ってる空の反応なんですかね?



「そんなことより!皆さんもこの辺りにいる盗賊を狙ってるんですよね?」

「ああ、というか奴等目当てで来たんだしな」



 さっきも説明してくれましたしね。疑ってはいません。

 しかし、ちょうどいいですかね。



「なら、私と協力してその盗賊を討伐しませんか?盗賊の溜め込んでいる財宝は私と皆さんで4:6でいかがです?できるなら財宝を選ぶ権利は私がいただきたいんですが」

「……仮にお前と組むとして、そっちは何を提供してくれる?」

「私が提供するのは盗賊たちを探し出すことと、彼女たちの隷属の首輪の破壊です。私は魔道具の製作者ですから、材料があれば作ることはできますよ?」



 本当はすでに魔道具の効果を破壊することができる魔道具は持っていますが、あえて作れるということを強調して話します。

 それも材料が必要であり、その材料として盗賊たちの財宝が必要であるかのように含みを持たせて。



「そうか。ならば協力を頼みたい。だが、財宝の配分に関しては納得はできない」

「まあ、そうでしょうね」

「一つ言っておくが、別に俺たちの配分を多くしたい訳じゃない。だが、お前さんが提供する盗賊たちを探し出すことは、すでに終わっているんだ」

「すでに見つけ出していたんですか?」




 これには驚きです。

 彼らはここら辺に来たばかりなので、まだ地理も分かっていないはずです。

 なのでまだ盗賊の捜索は行っていないと思っていたのですが。



「いや、まだ見つけてはいない。だが、俺たちのボスが探しに出てる。戻り次第討伐に行く予定だったんだ」



 そうだったんですね。ならば確かに提供するものに対して財宝の配当が合わなくなっていますし。

 これはまた考え直さないといけませんね。

 ……って、待ってください。ボス?



「あなたがボスなんじゃないんですか?」

「いや?俺は一応留守中のまとめ役ってだけで、ボスはちゃんと別にいるぞ」



 マジですか。

 見た目だけならバリバリ盗賊のお頭っぽいんですがね。失礼でしたかね。

 なら、そのボスが戻ってくるまでに色々と話し合いを、




「ほぉ、ずいぶんと可愛い嬢ちゃんが来とるのう」



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