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転生魔狼の異世界冒険  作者: はすか
迷宮攻略編
33/33

一悶着と出発

 

 時間は少し戻ります。

 護衛の依頼のため集合場所である正門前には、既に依頼主である商人たちが集まっていました。

 馬車は五台あるようで、商人たちの見た目からも依頼主は五人。あとは商人たちの従業員が二名ずつおり十五名が馬車へ荷物を運び入れています。


 時間には余裕をもって住処を出てきたので、だいたい一時間前に到着しました。

 早く来すぎたかとも思いましたが、すでに数人の冒険者の人たちも来ており馬車への荷物の積み込みを手伝っていました。

 一先ずは依頼主へのあいさつを済ませます。



「バランまでの護衛の依頼を受けた者です。よろしくお願いします」

「はいはい、よろしくお願いします。えっと、あなた方三人組ですかね?」

「はいそうです。一応、私がリーダーということになってます」



 挨拶をすると、商人たちは私たちのことを観察します。まぁ、私たちの見た目は大人というよりは少女寄りのほうですからね。商人側からすれば不安に思うのもしょうがないでしょうね。

 とはいえ、商人側には私たちの最低限の情報がギルドから伝えられているからか、獣人やエルフということでの嫌悪感が感じられないのが幸いですね。


 しかし私はCランク冒険者ですが、イジェとエルフィアはEランクです。他の冒険者の人たちがどの程度のランクなのかが分かりませんが、少なくとも護衛を任せる目線から見ればEランク冒険者は確かに心許(こころもと)ないでしょうね。

 とはいえ、すでに依頼は受理されているわけですから、私たちを拒否するということはしないはずです。


 すると、荷物の積み込みを手伝っていた冒険者の一人が私たちのほうへ近づいてきました。

 そして、依頼主の人と話し始めます。



「そいつらの腕前なら俺が保証するぜ。最低でもCランク冒険者とタイマン張って勝てるぐらいの実力はもってるからな」

「そ、それは本当ですか?」

「あぁ、結構前に冒険者ギルドで模擬戦してるのを見てたからな。間違いないぜ」

「そうですか。ガンツさんが言うのなら信頼しましょう。あ、挨拶の途中でしたね。私はこの商隊のリーダーをしていますドミニクと言うものです。質問等あれば私に聞いてください」

「よろしくお願いします。私はフェリルで後ろの二人はイジェンとエルフィアです。三人で活動してますが、特にパーティー名は決めてません」

「よろしくお願いします」

「よろしくお願いしますっす!」



 冒険者のガンツさんのおかげで話がまとまりました。



「ガンツさんありがとうございました」

「かまわねぇよ。まだ出発までは時間があるから、しっかりと準備をしておけよ」

「はい」



 口調は若干荒いもののいやな感じはせず、面倒見のよさそうな感じが強いです。取りあえずはガンツさんに言われたとおりに自分たちの装備を確認しなおしておきます。


 それからしばらく経ち、他の依頼を受けた冒険者の人たちが集まってきました。

 観察していると、どのパーティーも三~五人で構成されているようです。



「さてと、全員集まったようだから簡単に自己紹介をしておこう。最低限の情報としてパーティー名とランク。それとリーダーの名前と仲間の簡単な特徴ぐらいは話してくれ。最初は俺たちからしていくぞ。

 リーダーをしているガンツ、大剣使いだ。パーティー名は紅蓮の壁でAランク。仲間たちはそれぞれの盾・弓・魔法・剣をつかう」



 ガンツさんの挨拶から始まり順番に挨拶が進んでいきます。


 今回参加している残りのパーティーはこんな感じです。

 ・Bランクパーティー、闇夜の刃。冒険者にはしては珍しく弓使いが二人と魔法使いが一人の構成です。リーダーは弓使いの男性であるリバルさん。全員二十歳ほどで好青年と言った感じです。

 ・Cランクパーティー、月光の鎖。剣士が一人と魔法使いが二人、それと盾使いが一人といった構成です。こちらは剣士の人がリーダーで名前はリックさん。こちらも全員が二十歳ほどですが、盾使いの人は女性でした。

 ・Dランクパーティー、赤熱の壁。全員が大剣使いというかなり片寄ったパーティーです。リーダーはランズさん。私たちを除けば一番の最年少で、三人ともまだ少年です。

 そして、私たちの挨拶です。



「リーダーをしているフェリルです。リーダーとは言ってもまだパーティー名は決めていません。私はCランクで剣を使います。後二人はEランクで盾と弓使いです。あと、弓使いの彼女は精霊魔法もつかえます。」



 実際には私は銃の魔道具を使いますし、エルフィアは近接格闘も使えますが、言いはしません。

 この世界での命の価値は軽く、殺し殺されなんてことはよくあることです。だからこそ自分の手札は簡単には晒さず、一個以上は奥の手を隠し持っておくのが生き抜くためには必要なのです。


 とまぁ挨拶も終わったわけですが、なぜか赤熱の壁の少年たちが私たちを睨み付けてきます。

 てっきり私やエルフィアが獣人やエルフだからだと思ったのですが、彼らが睨み付けているのは私以外の二人。エルフィアとイジェンです。となると、原因は二人のランクでしょうね。

 私は彼らよりも高いランクですが、二人は自分達よりも下のランクですから何か思うところがあるんでしょう。

 とはいえ、だからと言って絡んでくる様子はなさそうです。



「今回は複数のパーティーでの護衛になるからな。ひとまずは一番ランクが高い俺たちが指揮を執らせてもらうがいいか?」

「それがぶなんっしょ。ぶっちゃけ、俺たちはそういうのは苦手だしな」

「うちらも、異論はなしだ」

「俺たちもっす!」

「是非、お願いします」



 特に揉めることもなくガンツさんたちが指揮を執ることが決定しました。Bランクパーティーの闇夜の刃と揉めるかと思いましたが、割りと軽い口調で了承していました。

 月光の鎖も同じく異論はなし。赤熱の壁はむしろガンツさんたちが指揮を執ることに凄く嬉しそうな様子です。

 多分ですけど、全員がガンツさんと同じく大剣を使っているところを見る限り、ガンツさんのことをかなり慕っているようです。それにパーティー名もそっくりですし。

 勿論、私たちも異論はありません。


 そして担当する馬車の順番はというと、先頭から順に紅蓮の壁・月光の鎖・赤熱の壁・私たち、そして最後尾が闇夜の刃という順番になりました。

 しかし、この決定に赤熱の壁が異議を唱えました。

 曰く、


「何で俺たちが真ん中なんですか! そこはパーティー名も決めていない、実力も分かっていないこいつらに任せればいいでしょう」



 とのことだ。

 大抵の馬車の移動は某勇者一行のように、一列になって進みます。これは一番前方で魔物や盗賊との戦闘が起こった際に、スムーズに方向転換が出来るようにするためです。これが二列になっていると方向転換の際に隣の馬車とぶつかってしまい、余計に時間がかかってしまうことが多いため、大抵の馬車はこの移動方法を取っています。


 そして今回のような五台の馬車の護衛をする場合、一番前と後ろの馬車は最も敵との遭遇確率が高く、二台目と四台目は一番前と後ろのサポートをするということになります。そうなると一番真ん中の馬車の護衛は戦闘中の周囲の索敵をすることになります。

 とはいえ、戦闘に関わるということが少ないのが真ん中の護衛なので、大抵は一番ランクが低いか戦闘面で不安があるパーティーが真ん中を担当することがほとんどです。


 彼らもそれが分かっているからかあのような発言をしたのでしょう。といっても、護衛という面から見ればこの配置は妥当な判断だと思うんですけどね。



「実力が分からないといったが、彼女たちは全員Cランク冒険者と戦えるぐらいの力は持っているぞ? それにパーティー名を決めていないってのは、別に護衛依頼には何の支障もねぇよ」

「そんな! だって、三人中の二人はEランクなんですよ? いくらCランクの冒険者が付いているとは言ってもです!」



 ガンツさんは冷静に対応しているのにたいし、ランズさんは頭に血が上っているのか猛反発しています。とはいえ、ガンツさんも全く意見を買える気はないようで暫く押し問答が続きます。

 挙句の果てにはランズさんたちが私たちと模擬戦をするとまで言い出してしまいました。とはいえ、これから護衛依頼をするわけですから、無駄な体力を使うわけにもいかないためガンツさんが怒鳴るような形でこの件は終わらせました。


 それでも納得はいっていないようで「ふざけんなッ! なんでこんな女どもに!」と怒りをあらわにしていましたが、結局は渋々といった形で担当の馬車へと向かっていきました。



「よう、あいつらが色々と暴走しちまって、悪かったな」

「いえ、別に大丈夫ですよ」

「すまねぇな。ったく、あいつも護衛の重要さってもんがまだ分からないようだな」

「……みたいですね」

「お前さんは分かってるみたいだな。それじゃ、これからよろしく頼むぜ」

「はい。よろしくお願いします」



 ガンツさんはそう言うと、自身の担当の馬車へと向かっていきました。そして数分後にようやく出発となります。



「私は今回の護衛の依頼を出しましたドミニクと言います。五人居る商人のリーダーを勤めさせていただいているので、何かありましたら私にお伝えください。それではこれから予定では十日間、よろしくお願いいたします」



 ドミニクさんの挨拶の後に、商隊はフォレスの街を出発しました。とは言え街の周辺には魔物も盗賊も多くはいないので、暫くはのんびりと出来そうです。



「しかし、何で赤熱の壁はあんなに反論してんすかね? 別に三列目も四列目も変わんないと思うんすけど」

「確かに。何でなんでしょう?」

「確かにガンツさんがフェリル様に『お前さんは分かってるみたいだな』って言ってたっすけど、どう言うこと何すか?」



 エルフィアとイジェンもこれが初の護衛依頼なのでまだよく分かっていなかったようですね。

 そもそも、一番前と後ろの護衛では馬車の守り方が大きく違います。


 まず一番前の場合、敵が現れた場合は殲滅するか馬車が方向転換するまでの時間を稼ぐといった役割があります。そのため、一番前の護衛者には戦闘力と同時に敵を押し留める守備力が必要になります。


 そして一番後ろの場合は敵が現れた場合、無理に戦闘を行う必要はありません。馬車を全速力で走らせて逃げればいいからです。そしてその場合、一番後ろの護衛者には馬車の上から中距離、もしくは遠距離で敵を倒す技術が必要になります。


 私たちならばエルフであるエルフィアの精霊魔法で中距離の援護が出来ますし、私やイジェンなら攻撃をして居る最中のエルフィアや闇夜の刃を守ることも出来ます。

 しかし、赤熱の壁は全員が大剣使い。見たところ弓のような遠距離用の武器も持っていないようでしたし、闇夜の刃を守る際も大剣はむしろ扱いにくくなってしまうでしょう。


 だからこそのこの配置だったわけですが、赤熱の壁はそこまで理解が出来ていなかったようです。

 あるいは尊敬しているガンツさんたちにいいところを見せようと張り切っていたのかもしれませんね。



「まぁ彼らのそういった事情は置いておいて、私たちは依頼に集中しましょう」

「はいっす!」

「はい!」



 これから約十日間の護衛。何事もなくガランまでたどり着けることを願うばかりです。





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