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転生魔狼の異世界冒険  作者: はすか
貴族暗躍編
28/33

パーティーと不穏な動き

 

 あれから一週間が経ちました。

 この一週間はひたすらナイフを取り出す練習をしたり、護衛で役に立ちそうな魔道具を作ったりし続けていました。

 ワーテル子爵が何かを企んでいるのは、キンバリー様曰く間違いないらしいので、考え付く限りの魔道具を作っておきます。

 毒検知、即死無効、魔法衝撃軽減、物理衝撃軽減といった魔道具を指輪やネックレスといった形で作製しました。


 結構な量になってしまいましたが、指輪やネックレスほどの大きさのものだと一つの効果を付与するのが限度です。

 まぁ、キンバリー様は貴族ですから、アクセサリーを沢山つけていても違和感はないでしょう。



 そしてナイフの取り出しに関しては、[武の才能]のスキルを使うことでスカートが捲れてあがることなく取り出せるようになりました。

 初めからそうすれば良かったんでしょうけど、とある理由から[武の才能]は極力使わないようにしています。

 まぁ理由といっても、完全に個人的なものなので必要とあればバンバン使いますけどね。


 その理由と言うのは、いずれはダンジョンに挑みたいと思っているからです。

 ダンジョンでは様々なトラップがあって、その中にはスキルの封印というものもあるそうなのです。

[武の才能]に頼りきりで進んで、突然スキルが使えなくなってしまったら、まず間違いなく死んでしまいそうなので、私自身の力だけでも戦えるように普段の戦闘ではスキルは使っていないのです。

 以前の冒険者ギルドでの模擬戦も、実はスキルを使わずに戦っていたんですよね。



 最終確認のために作った魔道具を一つ一つ確認していきます。

 一応貴族が身に付けることを前提としているので、見た目にもこだわって作ってみました。

 後ろで見ているイジェンとエルフィアも楽しそうにしています。

 この前渋々といった形で買い物に行った二人でしたが結構楽しんできたようで、予算の範囲内でではありましたが、結構な量の服やアクセサリーを買ってきていました。


 確認の結果、特に問題は見受けられなかったので全て収納しておきます。

 二人には自由に過ごしていて言いと伝えて、私はキンバリー様の館へと向かいます。

 道中は特に絡まれると言うこともなく、無事に到着することができました。



「お待たせしました。今日はよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしく頼む」



 キンバリー様と簡単に挨拶を済ませてから、着替えにいきます。

 そして最終的な打ち合わせをしておきます。



「それでは、私はパーティー中はキンバリー様の近くに居ればいいんですね」

「ああ、侍女本来の仕事は別な者に専念してもらう。フェリルは当初の予定通りに俺の護衛に専念してくれ」



 侍女の仕事なんて私にはできないので、そこはありがたいですね。

 一緒に行く侍女の人は、以前に私の着替えを手伝ってくれた人のようなので、あまり緊張はしそうにないですね。



「開始時間は昼からだからな。そろそろ出発しよう」

「分かりました」



 私たちはパーティーの開催場所であるワーテル家へと、馬車で向かいます。

 とは言っても、街の中なのでさほど時間はかかりません。

 到着する前にキンバリー様と侍女の人に魔道具を渡しておきます。


 キンバリー様は私が魔道具を作れることは知っていたようなので驚きはしませんでしたが、侍女の人はかなり驚いていました。

 キンバリー様には作製した魔道具を各一点ずつ。

 侍女の人には指輪の魔道具一つと、ネックレスを渡します。


 指輪には即死無効が、ネックレスには魔法衝撃軽減と物理衝撃軽減が付与されています。

 侍女の人はパーティー中は食べ物を食べる機会はないので、魔法や物理攻撃の威力を弱める効果のある物と、念のための即死クラスの攻撃を一回だけ無効化する物を渡しておきました。


 一応目安で言いますけど、私が渡した魔道具はその全てが最低でも金貨が二桁後半は飛んでいくような代物です。

 貴族からすれば暗殺といった危険度が格段に下がる物ばかりですからね。

 値段の高さには納得ですね。



 十分ほどしてワーテル家に到着します。

 ワーテル家の館を見て真っ先に浮かんだ感想は、悪趣味、ですね。

 家の外には金や様々な宝石で飾り付けられた像がいたるところに置かれています。

 そして館の中には、これまた高価そうな絵画や壺といいった美術品が部屋野中だけでなく、廊下にもこれ見よがしに置かれています。



「なんと言いますか、凄まじいですね。」

「自分の財力を見せびらかしたいんだろう。よく見てみろ。管理がずさんすぎる」



 言われてみれば、絵画や甲冑には埃が溜まってますし、壺みたいな割れやすいものにはヒビが入っているものが目立ちます。

 中には魔道具も飾ってありましたが、まともに手入れされていないせいで壊れてしまっています。



「宝の持ち腐れですね」

「まったくだ。下らないことにばかり金を使いやがって。っと、着いたな」



 二階にあるパーティー会場に到着しました。

 パーティー会場だけあってかなり広いです。

 会場のいろんなところにテーブルがい置いてあって、その上に様々な料理が置かれています。

 そして、会場奥に贈り物を置く用のテーブルが用意されています。


 不思議なのは会場奥の右側と左側にテーブルが分けられていることです。

 これはキンバリー様曰く、派閥によって置く場所を分けているらしいです。

 左側がワーテル子爵の派閥に所属している貴族用で、右側はそれ以外の貴族用。

 わざわざ区別させる意味が分かりません。



「とっとと置いてきてしまおう」

「ですね。ところで何を用意したんですか?」

「両手剣だ。一応それなりの業物を取り寄せた」



 男の子への誕生日の贈り物としては妥当なんでしょうね。

 確か今回の主役は十三歳で学生と言う話でしたっけ。

 学園では剣の授業もあるそうですし、邪魔にはならないでしょうね。



「これはこれはキンバリー殿。わざわざすまないね」



 贈り物を置くと、とても恰幅のよさげな男性が近づいてきました。



「ワーテル子爵。久しぶりだな」

「えぇ。本日は楽しんでいってくれ」

「そうさせてもらう」



 険悪な雰囲気ですね。

 一応二人とも笑顔で会話はしてますけど、目は笑ってないです。

 しかし、キンバリー様は相手のことを子爵と読んでいますけど、ワーテル様はキンバリー様のことを殿と呼んでます。


 年齢的にはワーテル様の方が年上ですが、領主相手にして下の位の相手に対して使う『殿』を使ってもいいんでしょうか?



「あいつは私のことを見下しているのさ」

「見下すって。そう言えば、キンバリー様って爵位は何なんでしたっけ?」

「奴と同じ子爵だよ。街の子供でも知ってることだぞ」



 そうは言われても、私は普段は街の外で暮らしてますから。

 同じ子爵でも、領主を任されているキンバリー様の方が役職的には上のようですが、ワーテル様はそうは考えていないようです。


 しかし、さっきの私を見る目には完全に侮蔑や嫌悪感が溢れていましたね。

 貴族には人間以外の種族を下等だと考えている人達が居るようですが、ワーテル様もその部類のようです。



 そうこうしているとパーティーが始まりました。

 始まったとは言っても、ワーテル家の話から始まり、今日の主役である息子の紹介がされたぐらいでした。

 後は各々自由に食事をしたり、会話を楽しんだりしています。


 キンバリー様のところにも沢山の貴族や商人が挨拶に来ます。

 私も近くにいましたが、さっきのワーテル様のような視線を受けるようなことはありません。

 商人の中には私のことを知っている人もいたようで、たまに驚いた顔で見られたりしました。



 しばらく挨拶が続いていると、私たちに近づいてくる人がいます。



「キンバリー様、本日はようこそいらっしゃいました」

「これはこれはシルバード殿。本日はおめでとう」



 やってきたのは本日の主役のシルバード・ワーテル。

 年相応に幼いものの、体格のいい少年です。

 不思議とワーテル様のような不快な感じがしませんね。



「キンバリー様、もしよろしければ後程お手合わせをお願いできますか?」

「手合わせ? まぁ、私は別に構わないが」

「ありがとうございます! できれば、キンバリー様がくださった剣を使ってみたいのですが」

「まぁ、あれは貴殿に差し上げたものだからな。自由にしてくれ」



 客人にたいしてするようなお願いではないとは思いますが、いまの私はただの侍女でしかないので、意見を言ったりはしません。

 シルバード君は嬉しそうに贈り物の中から、キンバリー様が贈った剣を取りに行きます。

 ワーテル様は貴族や商人達との話に夢中で、シルバード君の行動には気づいていません。




 パーティーも終盤に近付いてきましたが、ふとワーテル様の様子がおかしいことに気づきます。

 さっきまでは他の貴族達と普通に会話をしていただけでした。

 しかし今は会場の隅へ移動し、しきりにキンバリー様と贈り物の置き場を見ているのです。

 それも、右側の自分達以外の派閥の置場所をです。


 てっきり贈り物の価値でも考えているのかとも思いましたが、雰囲気的に違いそうです。

 念のために奥の手の一つの[先見の魔眼]を使います。


 頭の中に浮かんできたのはこのパーティー会場内の光景でしたが、テーブルは破壊され、大勢の人が血を流して倒れているものでした。

 倒れていた人達は、見えた様子からして亡くなっていたでしょう。

 そして、そんな惨劇の現場に佇んでいる人のような何か。


 できればもう少し先も見たかったのですが、これ以上ともなると必要な魔力量が多くなりすぎて、護衛の仕事に支障が出てしまいます。

 このスキル、ある一定以上の未来から先を見ようとすると、反比例的に必要魔力がはね上がるんですよね。

 正直、使い勝手の悪いスキルです。

 とは言っても、ここまで見ることができたのなら上々です。



「キンバリー様。すこし場所を移動した方がよろしいかと」

「……何かあったのか?」

「えっと、まだ何もないんですが。ちょっと気になることがありまして」



 私のスキルのことは話してないので、説明に困るところです。

 正直に話したとしても信じてもらえるかどうかも怪しいですし、一応奥の手なので早々話せるものでもないんですよね。



「分かった。どこに行けばいい?」

「それでは、入り口近くへ。それで大丈夫だとはおもいますが、一応注意しておいてください」

「あぁ、分かった」



 しかし、キンバリー様は私の言うことを信用してくれて、場所を移動してくれます。

 さっきの見えた内容的に、入り口近くは安全だとおもいますが、流石に安心はできません。


 入り口近くに移動した瞬間会場の奥、贈り物を置いていた辺りが爆発します。

 貴族達の悲鳴がこだまするなか、爆発した場所に現れたのは上半身と左腕は筋肉質の人間で下半身は馬、右腕は蟹のような鋏といった歪な形をした生物です。

 そして何よりも特徴的なのは頭に生えている一対の角と、背中に生えている蝙蝠のような羽です。

 一般的に悪魔と呼ばれているモンスターであり、一番下の下級種でさえもCランクのモンスターに位置付けられる程のモンスターです。



 そして目の前にいる悪魔はその特徴から、中級種。

 ランクにしてBランクになる悪魔です。


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