面接と依頼の説明
次の日。
私は早速手紙に書いてあった場所へ向かっています。
イジェンとエルフィアにはショッピングを楽しむように言っておきました。
二人は終始、宿で待ってると言い続けてましたけど、どうにか説得しました。
そんなわけで私は一人で目的地まで歩いていたのですが、正直帰りたいと思ってしまっています。
と言うのも、
「貴様、貴族街の近くで何をしている」
「怪しいな。そこの路地裏で話を聞かせてもらおうか?」
と、まぁ。テンプレのごとく二人組に絡まれているからなんですけどね。
一応目的地は貴族街の中ではなく、貴族街に隣接する場所だったので、絡まれることはないと思っていたんですが。
考えが甘かったようですね。
それに話を聞くために路地裏に行くって、確実に話を聞くためじゃないですよね。
さっきから私をみる目がいやらしすぎて鳥肌がたってきます。
「すみませんが急いでいるので。失礼します」
彼らは見た目からして衛兵というわけじゃなさそうです。
衛兵ならば見た目で分かるように、鎧や武器はある程度は統一されてますからね。
恐らくですが、どこかの貴族か商人に雇われている人達なんでしょうね。
衛兵であったなら不審者を一旦拘束すると行った権限は持っていますが、それ以外の人には犯罪の現行犯でない限りは拘束する権限はありません。
すなわち、私が彼らの言うことを聞く道理はないのです。
ですから彼らのことを無視して歩き出したのですが、案の定激昂して襲いかかってきます。
はぁ、仕方ない。
「無視してんじゃね、ぐるぁあ!?」
「死ねええ、ぶぅああ!?」
さすがに面倒なので、二人の腹部を蹴って反撃しておきます。
きれいにカウンターとなったせいか、二人とも勢いよく壁に吹き飛んでいきました。
この騒ぎを聞いて、今度はちゃんとした衛兵の人たちがやって来て二人を捕らえていきました。
今回のは完全に向こうの二人組が悪かったですし、周りにいた人たちが私の味方になってくれたのですんなりと解放されました。
一騒動はありましたが、手紙に書かれていた面接場所に到着します。
以前に領主であるキンバリー様の館に入ったことはありますが、あそこに勝るとも劣らない立派な屋敷です。
入り口には門番をしている騎士の人が居るので面接に来たことを伝えると、屋敷の中へ通されます。
「依頼を受けてくださった方ですね。どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
屋敷に入ると執事の方に部屋まで案内されます。
一応この執事さんは以前キンバリー様の館で会ってはいますが、二人とも知らないふりをしています。
ここで親しく話してしまうと、他の依頼を受けた冒険者にこの依頼が私個人に当てたものだとバレてしまいますからね。
他の方を騙すのは気が引けますが、これも仕事だと割りきります。
~数分後
特にこれといって大きな出来事もなく面接は終わりました。
というのも、この依頼を受けた冒険者がそれほど多くなかったからです。
確かに女性限定という条件は怪しいものがありますし、なにより貴族からの依頼となると受ける冒険者は少なくなってしまいますね。
もし私がギルドでこういった依頼を見つけたとしても、進んで受けようとは思いませんしね。
面接が終わった人は後日結果を伝えるので、このまま解散の流れになりました。
しかし私は帰るように見せかけて、面接をしていた部屋とは別の部屋に入っていきます。
中には案内をしてくれた執事と騎士のサムさんが居ました。
「お待たせしました」
「いえ。私はさっき来たばかりなので大丈夫ですよ」
「フェリル様。何かお飲みになりますか?」
「いえ、大丈夫です」
「かしこまりました。何かありましたらお呼びください」
そう言うと執事さんは部屋から出ていきます。
「それでは、これからキンバリー様の館へ向かいたいと思いますが、よろしいですか?」
「はい」
「それでは行きましょう」
サムさんと領主の館へ向けて歩いて行きます。
今回は特に他の巡回をしている人に絡まれることはないのですが。
「………………」
「………………」
ち、沈黙がキツイです。
別に何か話さなければならないわけではないのですが、何となく居心地が悪いです。
しばらくすると領主の館が見えてきました。
「フェリル様。キンバリー様のことをよろしくお願いします」
「え?」
「今回の一件。まず間違いなくキンバリー様に危害が及ぶ事態になるでしょう。恐らくはそうなった時、私は近くにいることはできないでしょうから」
キンバリー様は部下に恵まれていますね。
サムさんの心配は本物のようですから。
「任せてください。絶対に守って見せますから」
「ありがとうございます」
とまぁ、話をしながら館の中へと到着します。
以前と同じように応接室でキンバリー様を待ちます。
待っている間は侍女が持ってきてくれた紅茶とお茶菓子を堪能します。
流石貴族というだけあってかどちらも高級で、とても美味しいものでした。
出されたお菓子が無くなりそうになった頃合いでキンバリー様がサムさんと一緒に入ってきました。
しかし、心なしか疲れているように見えますね。
「久しぶりだな。今回は依頼を受けてくれたこと、改めて感謝する」
「いえ、これも依頼ですから。別に感謝されることではないですよ」
「そうか? あの時したのは口約束だったからな。後になって依頼を断られることも考えていたんだ。だからお前が依頼を受けたとギルドから聞いたときは、肩の荷が降りた思いだったよ」
まぁ確かに、あの時は口約束だけでかしこまった契約なんかはしてませんでしたからね。
私が考えを変えて依頼を受けなかったとしても、罪に問われることはなかったでしょうね。
普通に考えれば、貴族との約束ごとを反故にするってことはとんでもなくヤバイことですけどね。
「とにかくだ。今後の話をしておきたいんだが、いいか?」
「大丈夫です」
「まず依頼の内容だが、今から一週間後に開かれるワーテル子爵家の子息の誕生会、そこで私の侍女として参加してもらう。ワーテル子爵に関しては後で詳しく話すが、正直に言うと悪い噂しか聞かない奴だ」
「ワーテル子爵? あれ、どこかで聞いたような」
ちょっと考えて思い出します。
そう言えばギルドのドミニクさんから聞いた名前でしたね。
確か、盗賊の討伐をギルドに強制させていた貴族でしたっけ。
まさかここでも名前を聞くことになろうとは。
しかしギルドでもそうでしたけど、キンバリー様のところでも名前が出てくるなんて、よっぽど面倒な人なんですかね?
「まぁ、悪評は腐るほど出てくる奴だからな。名前ぐらいなら聞いたことはあるだろうな」
「悪評って、そんなに酷い貴族なんですか?」
街の飲食店での無銭飲食・気にくわない店があれば圧力をかけて閉店まで追い込む・美しい女性がいれば無理矢理屋敷へ連れ込もうとする。
キンバリー様が話しただけでも、これだけでは収まらない程身勝手に行動しているようです。それも、家族全員で。
一応キンバリー様が後で尻拭いをしているそうですが、等の本人たちは気にする様子はなく、むしろ日に日に酷さを増しているそうです。
「そんな人たち、裁くとこはできないんですか?」
「そうしたいんだがな。奴の上の兄弟が王宮の近衛騎士の副団長をやっていてな、こちらとしても無闇に手を出すことができない状態なんだ」
「面倒ですね」
「全くだ。奴が俺の目の前で重罪でも犯してくれれば、問答無用で処刑できるんだがな」
なかなか過激ですね。
まぁ、前の世界での認識でそう思うだけで、この世界ではこんなこと良くあることなんですけどね。
後は当日の大まかな流れを説明してもらいました。
私はキンバリー様の館に集合して、そのままワーテルって貴族の開催するパーティーに侍女として参加。
パーティー中は侍女として身の回りの世話をして、有事の際はキンバリー様を護衛する、という流れです。
貴族同士のパーティーで護衛が必要なのかとも思っていましたが、どうやらワーテルという貴族がキンバリー様の暗殺を企てているかもしれないそうなのです。
情報の出所は内緒らしいですが、十中八九、貴族ならありがちの暗部とかそう言ったところでしょうね。
あまり深入りすると、余計面倒ごとに巻き込まれそうなのでやめておきます。
今さらな気はしますけどね。
と、当日の打ち合わせが大体終わりました。
多少不安は残りますが、そこは入念に準備して当日に望みましょう。
しかし、なんだか部屋の外が騒がしいですね。
都考えていると、突然部屋の扉が開かれました。
「失礼するよ。キンバリー殿」
部屋に入ってきたのは金色の髪と赤と緑のオッドアイの男性でした。
思わず鑑定を使ってみます。
~ステータス~
名前:ルーティアラン・グランバス
Lv12
種族:人間
性別:男
年齢:22
~スキル~
[隠蔽中]
~称号~
帝国の王子
……まぁた厄介事の気配ですよ!
いい加減にしてほしいです!
よろしければブックマークや評価を宜しくお願い致します!