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転生魔狼の異世界冒険  作者: はすか
貴族暗躍編
24/33

商業ギルドと登録

 

 あの後、私たちは裏口からギルドを出て街へと繰り出しました。

 入り口はまず間違いなく、エルフィアの義肢目当ての商人達が待ち構えていたでしょうしね。


 実際、こっそりと入り口を覗いてみたら商人はいつも以上に集まっていましたし、路地裏には明らかによからぬ事を考えていそうな柄の悪い人たちが何組も見受けられます。

 流石にこちらからは関り合いたくはないので放置しておきます。


 次に向かうのは商業ギルドです。

 正直、今は帝国の商人達が大勢いるでしょうから気は進みませんけど、早めに二人の登録を済ませておかないと。


 道中は屋台の料理を買ったりして、大量の料理をアイテムボックスに収納しておきます。


「この串焼き、最高っす!」

「うん。とっても柔らかい」

「そうかい!ありがとよ!」


 串焼きの屋台のおじさんもかなりの儲けになったからか、いい笑顔です。

 行く先々の屋台から声をかけられるので、商業ギルドにつくまで時間がかかってしまいました。



「二人とも入りますから、食べるのはいったん止めてくださいね?」

「んんっん!」

「ふぁい」



 よっぽど串焼きが気に入ったんですね。

 二人ともリスみたいに口に詰め込んでます。


 何とか飲み込んだ二人を連れて商業ギルドへと入ります。

 冒険者ギルドと比べるとざわつきは小さいものの、私たちを見る目の多さはこちらの方がより感じます。


 その視線の先はエルフィアの義肢に注がれています。

 更にはその視線の種類も二つに分けられています。

 一つは元々この街で活動している商人たちの温かい視線。そしてもう一つはここ以外の町で活動している商人たちの、欲望に濁った視線です。


 後者のほとんどは帝国から来ている商人たちらしく、その目からは何をしてでも手に入れるといった危ない感じがしてきます。


 流石にギルド内では襲ってくることは無いでしょうけど、街中では注意しないといけませんね。

 はぁ、面倒です。



「フェリルか。今日はどうした?」

「こんにちは。今日はこちらの二人の登録をしに来ました」

「あぁ? 別に構わんが、二人の首のやつって……」



 受付のおじさんが気にしているのはエルフィアとイジェンの首についている隷属の首輪です。

 もう隷属の首輪としての効果はなくして別の効果を上書きしている状態なんですけども、見た目そのものは一切変更していないので間違えられるのも無理はないですね。



「あぁ。二人の首輪は違いますよ? 女の子だけで出かけるのに何も対策しないよりはマシでしょ?」

「まぁ、そうだな。他人の奴隷に手を出すなんて真似すりゃ、一発で捕まるからな」

「そういうことです」



 奴隷はその主人の所有物であり、他人が手を出すことは窃盗罪に当てはまります。

 だからこそ、嘘でも奴隷の身分であると偽っておけば、よっぽどの馬鹿でない限りは手を出してくることはありません。

 今のギルド内にはそんな馬鹿が複数いそうですけどね。



「そんじゃ、二人にはテストをやってもらうから来てくれ」

「二人とも、頑張ってくださいね」

「頑張るっす!」

「頑張ります」



 テストといっても、簡単な計算問題をする程度ですけどね。

 流石に商人なのに金銭の計算ができないのは致命的なので、ギルドに登録するためにはテストを受ける必要があるのです。

 二人ならしっかりと教えたので大丈夫でしょうけど。



「あの、ちょっといいですか?」

「はい。何でしょうか?」



 二人がテストを受けている間に私も要件を済ませておきましょう。

 近くにいた別な職員に声を掛けます。



「ちょっと相談したいことがあるんですが、個室を使用しても大丈夫ですか?」

「少々お待ちください。えっと、今なら部屋も空いているので大丈夫ですね。今からにしますか? それとも先ほどのお二人が戻ってきてからにしますか?」

「今からでお願いします」



 商業ギルドでは秘密裏の商談を行うための個室が数部屋用意されています。

 中には大きな商家が新しい商品のお披露目で大人数の商人を呼ぶこともあるため、かなり広い個室も用意されていたりします。

 エルフィアとイジェンがテストをしているのも、そんな中の一室なんですけどね。



「さて、この部屋でよろしいでしょうか?」

「はい。ありがとうございます」

「それでは、どういったご用件でしょうか」



 対応してくれた女性職員さんがそのまま対応してきます。



「要件は二つほどあります。一つ目は帝国から来ている商人たちについてです」

「彼らについてですね」



 私が切り出したことに対して特に表情を変えることなく受け答えしてきます。あまりにも表情が変わらないのでちょっと怖いですね。



「多分、というかまず間違いなくあの人たち、私たちに絡んでくると思うんです。それも、犯罪的な絡み方で」

「それは……残念ながらそうなってしまうでしょうね」



 言葉を濁そうとしていましたが、最後には素直に認めた職員さん。

 多分ですけど、今日までに何回かそういった出来事があったんじゃないんですかね。

 若干職員さんの顔に面倒くさいと書かれているように錯覚がしてしまいます。



「それで確認なんですけども、仮に犯罪行為をしてきた商人を捕まえた場合ってどうすればいいのかと、その場合の私たちの処遇はどうなるんですか?」

「まず犯罪行為をした商人は例外なく憲兵への差出で大丈夫です。騎士でも大丈夫なんですが、彼らは人と亜人を差別している人が少なからず要るので、憲兵のほうがおすすめです」



 ふと貴族街へ行った時にすれ違った騎士たちを思い出します。

 確かに私を見る目は嫌悪感が隠されていませんでしたからね。



「そしてそういった人たちを捕縛したとしてもフェリル様やお仲間のお二人に何らかの処罰が下ることはありません。よっぽど過剰防衛を行ったというならば多少のお小言が憲兵の方からされることはあるかもしれませんが」

「そうなんですね」

「はい。むしろそういった人を取られた場合は報奨金が出ますので、心配するようなことはまずないと言わせていただきます」



 よし。それなら私たちに手を出そうとした輩を捕まえるのに遠慮はいらなくなりましたね。

 お小言を言われるのは絶対に嫌なので、力加減はしっかりとしておきましょう。



「わかりました。二つ目なんですが、ブロッシュ商会について教えてもらいたいんです」

「ブロッシュ商会ですか? ギルド職員の私が言うのもなんですが、あまりあの商会には関わらないほうがいいと思いますが。あ、今の発言は内緒で」



 おおぅ。結構毒舌なんですね。

 まぁ、私がブロッシュ商会について尋ねたのは、エルフィアとイジェンの二人。そしてそれ以外にも捕まっていた奴隷の人たちとブロッシュ商会が関わりがあるのかを知っておきたかったからです。


 関わりがあるのなら、必ず二人に接触してくると考えたからです。

 二人はもう私の仲間ですから、守るためには情報収集は欠かせません。



 職員さんから教えてもらったブロッシュ商会の情報は、かなり胸糞悪くなる内容でした。

 まず商会としては本店を置いている街では一番の大きさであり、その分影響力も大きくかなりあくどく商売をしているようです。


 普通の商品はもちろん、裏では違法な商品を扱ってるようです。

 しかも沢山の貴族との裏で繋がっているようで、摘発されることなく商売を続けているようです。

 そして違法な商品の中には奴隷や呪い用の魔道具、されには流通禁止の薬物なんかも含まれていました。


 しかし、呪い用の魔道具ですか。

 確か街道にいた盗賊団『ドラゴンの爪』の財宝の中に呪術石っていう魔道具がありましたけど、あれもブロッシュ商会の商品だったんでしょうか。

 だとしたら、噂通り本当にろくでもない商会みたいですね。



「ありがとうございます。おかげで色々と助かりました」

「いえ、私は知っている情報をお話ししただけですので」

「商人の間ではそういった情報もお金になるんですよ?」

「ふふ。フェリル様もすっかり、立派な商人になられているようですね」



 別に商人になった覚えはないんですけどね。

 と話していると、エルフィアとイジェンが戻ってきました。



「お疲れ様です。どうでした?」

「ちゃんと合格してきたっす!」

「教えていただいた通り、きちんと解いてきました」



 二人とも無事に登録できたようです。

 一先ずは今日の目標は達成できましたね。

 あとは今日泊まる宿を探しに行きますかね。






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― 新着の感想 ―
[一言] 「因みに、何故その商会の事を·····?」 私は苦笑しながら無言で首を指差します 「あぁ····そういう事ですか····」 察しが良くて助かります
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