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転生魔狼の異世界冒険  作者: はすか
貴族暗躍編
21/33

エルフィアと義肢

 

 さて、イジェンは危なげなく勝ちましたけど、次は簡単にはいかなさそうですね。

 初戦では私たちを女子供と侮っていたのでダースという人も全力ではなさそうでしたが、次に出てきた人はエルフィアのことを油断なく見ています。


 こういった場合でさっきのはまぐれだ、とならないところは流石帝国の冒険者というところですかね。

 次に出てきた人もエルフィアのことを注意深く観察しています。


 対するエルフィアも同様に相手を観察しつつ、自身の義肢の調子を確かめています。

 一応動作の確認は綿密にしてはありますが、初の実戦ということもあってか、より一層動作確認をしているようです。



「ん、大丈夫」

「こっちもいいぜ」



 準備を終えた二人は向かい合います。

 エルフィアは武器を持っていないのに対し、相手は両手にナイフを持ち構えます。

 どうやら相手は短時間で勝負を決めようとしてますね。典型的な魔法対策です。


 魔法使いの多くは、詠唱を唱えてから魔法名を口に出し魔法を使用します。

 実際には詠唱は自身の魔力を手に集めたり、火や水に変換するといった行程を言葉にすることで、イメージをより鮮明にする役割を担っています。

 なので上級者になると魔法名だけで発動させる詠唱省略や、イメージだけで魔法を発動させる無詠唱があります。


 対してエルフが使う精霊魔法は、精霊にお願いして魔法を発動してもらうというもの。

 普通の魔法と違い、精霊が魔法を発動するので詠唱の必要はありませんが、精霊に『命令』ではなく『お願い』するというものなので、どういった魔法が発動するかをしっかりと伝える必要があります。

 それでも普通の魔法よりも魔法の発動は早いほうですが、やはり発動までは多少のタイムラグがあります。



「それでは、始め!」

「っな!?」



 開始の合図と共に相手へとまっすぐ突っ込んでいくエルフィア。その状況に相手は驚きから一瞬動きが止まってしまいます。

 まぁ、一般的にはエルフ=精霊魔法か弓使いですからね。

 接近戦を行うエルフなんてのは、数人しかいないでしょうね。



「クッソ」



 慌てて後ろへと下がり距離を取りに行きますが、完全に避けきることは不可能なほどエルフィアは接近しています。

 相手はそれを知ると、ナイフで防御の構えをとります。


 確かに普通のエルフ相手ならば、正しい選択です。

 人間とエルフでは、圧倒的に人間の方が筋力が高いので、しっかりと防御すれば大したダメージもないでしょう。

 普通のエルフならですがね。



「インパクト」

「っが!?」



 エルフィアの拳が相手に触れた瞬間、不自然なほどの勢いよく相手が後ろへと吹き飛んでいきます。

 相手は数回地面にバウンドした後、どうにか体勢を立て直します。しかし、よほど強く飛ばされたからか足が震えています。

 エルフィアはエルフィアで、相手ほどではないものの数メートル後方へ移動していますが、特にダメージは見られません。


 周りの野次馬になっている冒険者たちからどよめきが起こります。

 それはそうでしょうね。本来近接戦闘は不得手なはずのエルフが、しかも少女のような見た目をした子が大の大人を吹き飛ばしたんですからね。


 まぁ、今のはエルフィアの義手の機能の一つです。

 あの義手は大まかに分類すれば、魔法使いが使う杖と同じような効果を持っています。

 なのでさっきの攻撃は、エルフィアの魔力を義手へ集め濃縮、拳が当たる瞬間に濃縮された魔力を一気に爆発させていたのです。


 しかし、威力は強いですけどエルフィア自身にもかなりの反動が来ていますね。

 これは改善していかないといけない点ですね。



「まだ続ける?」

「あ、当たり前だ!」



 一応続行はするそうですけど、相手はまだダメージが残っているようで足の震えは収まっていません。

 対するエルフィアは全くダメージはありません。



「これ、もう結果見えてないっすか?」

「相手もそれは十分わかってると思いますよ」

「それじゃあ、なんでやめないんすか・」

「多分、プライドが邪魔をしてるんでしょうね」



 さっきのイジェンとの模擬戦は一応、人間対人間という形だったので、実力至上主義が基本的な考えの帝国の人間としては、イジェンが強かっただけと納得はできるでしょう。

 しかし、今の模擬戦は人間対エルフ。彼らの言うところの下等な亜人との模擬戦なので、降参したくてもできない、というところでしょう。



「はえ~、くだらないっすね」

「本当ですよ」



 そんな会話をしているうちにエルフィアが動き出します。



「ブースト」

「は?」



 瞬間、エルフィアの姿が消えます。

 正確には義足から魔力を放出して、一気に加速して動いているだけなのですが、相手にはまるでエルフィアが消えたように見えたようですね。

 男は全く動くことができず、立ち尽くしています。

 それでも周りを見ようと動き出そうとした瞬間、体をくの字に曲げ真横に吹き飛んでいきます。

 そして飛んで行った反対側には、拳を突き出した状態のエルフィアがいます。


 さっきは一応防御していたのでダメージを軽減できていたエルフィアの拳を、今度はまともにくらってしまったようです。

 男はさっき以上に吹き飛ばされていき、そのまま気絶しました。



「はい。試合終了です。エルフィアの勝ち!」

「よし」



 エルフィアも結局は苦戦することなく勝ちましたね。

 というか二人とも、相手に攻撃の機会を与えないまま勝ちましたね。

 なんだか、二人の相手になった人に同情してしまいそうです。


 さて、後は私だけですね。

 残った向こうの三人は憎悪というか、殺意を駄々洩れにしながら私を睨んできますね。

 なんだか、すんなりとは終わりそうになさそう。



 ……やだなぁ。


令和もよろしくお願いします!

これからも頑張って執筆していきます。

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