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転生魔狼の異世界冒険  作者: はすか
盗賊討伐編
13/33

財宝と雑談

 

 盗賊団の首領を倒した後、私達は彼らが溜め込んでいた財宝を一ヶ所に集めています。

 盗賊団は私が麻痺させた一人を残して全員が死亡。

 死者はアンデット化を防ぐために外で燃やしています。

 盗賊達が溜め込んでいた財宝はかなりの量があったので、今は細かく仕分けして紙に書き分けている最中です。

 かなりの馬車を襲っていたようで、溜め込んである財宝の量が半端なく多いです。



「まだあるのか。流石に多いのう」

「ようやく半分ぐらいですからね。頑張りましょう」



 作業開始からかれこれ一時間位は経っているので、単純計算であともう一時間はかかる予定です。

 しかし大体半分くらいが武器や魔道具といった小物で残るはたくさんの鉱石系なので、後は少しは楽そうです。なにせ鉱石ごとにまとめていくだけなので。



「フェリルよ。手を動かしながら聞いてくれ」

「ん?はい」

「ダメもとで誘うが、ワシらの仲間にならんか」

「お断りします」

「……即決かい」

「あたりまえでしょう」



 ディアさん達の仲間になるということは犯罪者になるということです。

 さすがにそこまでは出来ません。



「まあ、そうじゃろうな。ならば『協力者』になってくれんか?」

「協力者?」

「そうじゃ。ワシらは堂々と街中に入ることができん。じゃから当然まっとうな店で買い物なんかもできんのじゃ。その代わりに表立った営業ができん店で物を揃えるんじゃが、そういった店は物の値段が高いんじゃよ」

「まあ、でしょうね」



 そういった店は表立った営業ができない代わりに、通常は手に入れるのが困難な品物を手に入れることができます。

 しかし、その分店主も危ない橋を何度も渡ることになるので価格は普通の店よりも高くなります。

 それに、そういった店に来る人というのは訳ありの人間が多くなるので、足元を見られてもしまいますし。



「要は、物資や有力な情報を提供してほしいということですか?」

「そうじゃ。お前さんの場合は魔道具も含まれておるがの」

「……私は魔道具は作れませんよ?」

「今更しらばっくれても遅いぞ?これでもフォレスの街で多少は情報を集めておいてあるからの」



 確かに、フォルスの街の商業ギルドに居る人たちなら私が魔道具を作れるということは知っているでしょうね。

 しかし、それが私だとは限らないと思いますが。



「人違いでは?」

「確かに、女性の獣人というだけなら人違いということもあり得るじゃろうな。じゃが、青髪となると間違いないじゃろう」

「いや、他にも青髪の獣人なんているでしょう?」

「フェリルよ。お前さん、本気で言っとるのか?」



 ディアさんは私の顔を信じられないという表情で見てきます。

 でも、私は本気でそう思っているので、何故ディアさんがそれだけの情報で私だと断定したのか分からず困惑顔です。



「ふむ。なるほどな」

「なんなんですか?ちゃんと説明してください」



 そう言ってもディアさんは考え事をしているみたいで、完全に手を止めてしまっています。

 仕方なく残っている鉱石を種類ごとに分ける作業を続けます。

 作業を続けてること五分ほどしてからようやくディアさんも手を動かし始めます。



「さっきの説明じゃが、本来は青髪の獣人というのが獣人の国の外に居るというのは稀なんじゃよ」

「そもそも私って、私以外の獣人を見たことが無いんですよね」

「まあ、獣人はあまり自分らの国からは出てこんからの。精々が自分らの国の隣に面してる国の近くの街まで位じゃろうの。じゃが、全然国から出てこないというわけじゃないぞ?確かフォルスの街にも獣人はそれなりの数は居るはずじゃが」



 私はあまり街には行きませんからね。

 一年のうちに街に行く日なんてのは百日もないでしょうし。

 ちなみに、この世界の一年は元の地球と同じです。昔は国によって細かく違ったりしていたようですが、かつてこの世界に来た転移者が統一させたようです。

 その他にも時間や曜日、通貨に至るまで転移者たちが地球と同じようにさせたようなので、割と地球と同じような環境になっています。



「まあ、獣人の中には人を憎んでいる者も多いからの」

「確か獣人は昔奴隷にされていたからですよね」

「そうじゃ。エルフやドワーフ、果てには魔人族までも同じような理由で人間を恨んでいる者も多いの」



 今でこそ奴隷の扱いは良くなりましたが、昔は奴隷=使い捨ての道具といったイメージだったようで、多くの奴隷が苦しんで死んでいったそうです。

 これも転移者が奴隷の処遇改善に努めた結果、ゆっくりとですが変わっていったそうです。

 こういった実績があるからこそ、転移者や転生者は優遇されているそうです。



「でじゃ、獣人の国では青髪の獣人は神獣の化身だと言われておってな、青髪の獣人は全員が王城に集められるんじゃよ」

「全員ですか?」

「全員じゃ。とは言っても、親とも自由に会えるし王城で仕事もできるらしいからの。不満があるもののほうが少ないじゃろうな」

「確かに、王城で働けるのならこれとない大出世ですからね」



 平民が王城に勤めるなんてことはまずありえませんからね。

 その子供も親も不満はないでしょうね。……よほどの親ばかでない限りは。



「お前さんが獣人の国の外で生まれたのならこの場にいることも納得できるんじゃが、それにしては獣人の国のことを親から聞いていないことは不自然じゃの」

「親は私が物心つく前に死んだんですよ。だからでは?」



 誤魔化しては見ましたが、ディアさんの目は私が話した内容が嘘だと分かっていると言っているように、まっすぐと見てきます。



「フェリルよ。お前さんは転生者じゃないのか?」

「……面白い冗談ですね」

「こんな冗談はワシは言わんよ。別に言いふらそうってわけじゃないじゃがな」



 私はディアさんの目を見つめます。

 ディアさんも私の目を見つめており、二人して見つめあうような状態になります。

 暫く見つめ合い続けていましたが、これ以上誤魔化しても無駄だと悟りました。



「はぁ。負けましたよ。認めます。私は転生者です」

「……そうか」

「どうしたんですか?」



 私が転生者だと分かったというのに、ディアさんの表情は晴れません。

 むしろ、難しい顔をしてしまします。



「いやな、お前さんが転生者だとすると色々とおかしいことがあるんじゃよ」

「おかしいこと?」



 ディアさんは少し目を瞑って考えた素振りをした後、私の方へ体を向けてきます。

 私も思わず、作業の手を止めてディアさんと向かいあうようにします。



「フェリルよ。お前さんは転移者と転生者の違いが分かるか?」



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