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転生魔狼の異世界冒険  作者: はすか
盗賊討伐編
12/33

首領と殲滅

 

 盛大にお酒を飲んで宴会をしている盗賊たち。

 見張りを置いていたせいか誰も警戒をすることなく無防備な状態で飲み食いをしています。

 まあ、この辺りは盗賊が出てから商人や冒険者もあまり通らなくなりましたからね。

 しかし、流石に人数が多いですね。普通の盗賊なら十人程度の人数なんですが、盗賊『団』と名乗るだけあって五十人以上は居ます。



「流石に数が多いのう」

「だな。これは骨が折れそうだ」



 お二人も同じ意見のようです。

 しかし、相当自分の腕に自信があるようですね。この人数を前にしても怖じ気づいた様子は微塵も見られません。

 それにしても、この人数は面倒ですね。

 ……そうだ。



「あの、これ使ってみますか?」



 相違って私が二人に見せたのは赤く光るビー玉程の大きさの玉です。

 これを見た二人は私が何をしようとしているのかを察したようで、ニヤリと笑います。

 ボルスさんは盗賊顔なので似合いますね。子供が見たら泣きそうな顔です。



「成る程、爆裂玉か。確かにこれなら半数以上は初手で潰せるのう」

「しかし、いいのか?これ結構金かかるだろ」



 爆裂玉とは、魔石に火属性の爆発系の魔法を付与した魔道具です。地面に叩きつけることで爆発を起こすことができます。

 爆発の規模は魔石の純度や魔道具を作った人の技量で変わります。

 私は神様からもらった[魔道具作成]のスキルのせいか質の良いものをたくさん作れますが、普通は一つ作るのにも大変な手間がかかります。



「別にいいですよ。こういった物は出し惜しみしないようにしているので」

「それなら、使わせてもらおうかの」

「なら、俺が投げつけよう。この中じゃ俺が一番力がある」



 爆裂玉は地面に叩きつける力が強ければ強いほど爆発の威力が強くなります。

 確かに子の三人のなかならボルスさんが適任ですね。



「よし。行くぞ!」



 そう言ってボルスさんが爆裂玉を盗賊達に投げつけます。

 ちゃんと盗賊達が集まっているところ目掛けて投げつけています。私が渡したのは三つでしたがこれで半分以上は爆発に巻き込まれて死に、残っている盗賊も爆発の余波で何人かが負傷しています。

 流石にここまで来ると私たちも見つかってしまいます。

 早速数人が武器を手に私たちに近づいてきます。



「それじゃ、怪我せんようにな」

「誰が一番奴等を倒すか、競争しようぜ」

「競争はしません。お二人も気を付けて」



 ボルスさんのことは無視して盗賊達を見据えます。

 爆裂玉に巻き込まれていないのは大体二十人程。今の音を聴いて誰も来ないところを見ると、盗賊達はここに居る人達で全員みたいですね。



「へっへへ。まだちっこいが結構かわいいじゃねぇか」

「こりゃあ楽しめそうだな」



 この二人は馬鹿なんでしょうか。

 もう半分以上が死んでいるのにここまで余裕でいられるなんて。

 まあ、頭がよければ盗賊になんて身を落としてなでしょうけど。



「腕や足の一本は我慢しろよ?その後は気持ちよくしてやるからよ」



 下卑た笑みを浮かべて私に近づいてきます。

 私は人化の術で十五歳のときの肉体ですが、見た目だけだとそれよりも幼く見られてしまいますので、彼らもそんな私を見て侮っているようです。

 まあ、そんなところが命取りですよ?


 私はそんな彼らに接近します。

 流石にそんな状況になれば彼らも武器を構えます。

 二人とも鉄製の両刃の剣を握っています。

 数の利は盗賊側にあるのですが、私は特に焦ることはありません。

 というのも、二人は私のことを殺すつもりはないせいか殺気があまりないからです。

 まず間違いなくこの戦闘の後で私を犯そうと考えているからでしょう。

 しかし、戦闘の時に殺す気がある攻撃と殺す気がない攻撃。どちらが厄介かと問われれば間違いなく前者です。



「止まれ!止まらねえとッガ!」



 そんな中途半端な考えだからこそ守りも甘く、すれ違い様に抜刀術の要領で首を切り裂きます。

 上手く血管を切り裂けたのか、血が止めどなく溢れてきます。

 少し首を押さえた後、男は床に崩れ落ちるように倒れます。



「な!てめえ、何をする」

「何をするって、武器を持ってる上に私のことを犯そうとしてくる相手に何もしないわけないでしょう」

「うるせえ!もういい、てめえは殺す!」



 そう喚くと男は剣を私目掛けて振り下ろしてきます。

 私はその攻撃を真っ向から受け止めます。


「な!?そんッグェッ! 」



 私みたいな子供に受け止められるとは思っていなかったのか、驚いた顔をして固まってしまう男。

 私はそんな隙を見逃さず、がら空きの腹に蹴りを叩き込みます。

 きれいに鳩尾に入ったようで胃の中の物を吐き出しながら、地面に蹲っています。

 私はそんな男に止めを刺そうと刀を持つ手に力を込めますが、ふと考えてナイフで男に傷をつけます。

 私が持っているナイフには切れ味をよくする付与だけでなく、切りつけた相手を麻痺させる魔法が付与されています。

 別に殺すのを躊躇った訳じゃありません。一人くらい生かしておいた方が後々都合が良いかと思ったからです。

 主に財宝の隠し場所を確認したり、他に仲間が居ないかを確認したりするためにです。



「さてと、あと残っているのは…」

「おらあぁっ!!くたばれっ!!!」



 咄嗟に後ろに跳ぶと、さっきまで私が立っていた場所に大きな斧、俗に言うバトルアックスが叩きつけられます。

 叩きつけられた地面は大きくへこんでおり、今の一撃の凄まじさが伝わってきます。



「てめえ等、いきなり襲ってきやがって。この卑怯物が!」

「卑怯者って、盗賊やってる人に言われたくないんですけど」



 基本盗賊なんて殺す、奪う、犯すと散々悪いことをやってますし、馬車なんかを襲う時なんて、それこそいきなり襲っているでしょう。

 馬車にたいして「この後あなた達を襲いに行きますよ」なんて言うわけないですし。

 しかし、目の前の男にはそんな理屈は通用しないようです。



「てめえ等、俺等が『ドラゴンの爪』だと知ってんのか?」

「ドラゴンの爪?」


 ドラゴンの爪といえばこの国が誇る最強の傭兵集団だったはずです。

 この国は他国に侵略をすることはここ数十年はありませんが、他国から侵略をされそうになったことはあります。

 そんな時に戦争に参加する戦力は三つ、国の兵士・冒険者・そして傭兵です。

 ただ冒険者はたとえ国であろうとも支配下に置くことは禁止されているので、ギルドに依頼という形にはなりますが。

 ドラゴンの爪はかなり古くからこの国で傭兵家業を続けてきており、戦力はもちろん国や国民からの信頼も厚くあります。



「何がドラゴンの爪じゃ。お主はすでに傭兵団を抜けておる身じゃろう」

「あ、終わったんですか。早いですね」

「あんな奴等、ワシの敵ではない」



 ディアさんが戦っていた場所を見ると五人の男たちが倒れています。

 五人とも首が切り落とされているので間違いなく死んでいるでしょう。

 強いとは思っていましたが、正直考えが甘かったですね。冒険者に例えるなら、まず間違いなくAランク並みの力を持っています。

 まあ、今は目の前の男に集中ですね。



「この男、元はドラゴンの爪の一員だったんですか?」

「あぁ、一応はな。じゃが、行動に問題がありすぎて傭兵団を脱退させられたんじゃ」

「問題って?」

「聞いているだけでも、恐喝・器物破損・殺人未遂・強姦未遂。あげれば後十個近くは挙げられるぞ?」

「なるほど、それは脱退させられるわけですね」



 さすがにこれは酷すぎますね。なまじ市民からも信頼があるだけ大変だったでしょうし。

 しかも、こうして盗賊行為をしているんですからよっぽどでしょう。



「っけ。あんなところ元々願い下げなんだよ。強え奴は自由に過ごしていいもんだろうが。それなのにあいつ等は弱い奴等相手にあろうことか下手に出てやがった。うんざりだったんだよ!弱い奴は強い奴のために尽くすもんだろうが!!強者こそが正義なんだよ!」



 めちゃくちゃですね。この男は助け合うという考えが頭の中にないようです。

 男が信じているのは弱肉強食。強者であれば何をしても許されるというものです。

 それに加えて自分の力を信じて……いや、妄信しているから尚更性質が悪いです。



「……ディアさん、ここは私にやらせてくれませんか」

「む?こいつは流石に一人では辛いと思うぞ?ボルルはまだ終わりそうにないからワシ等二人で同時に相手をしたほうが確実じゃが」



 確かに、この男は強い。こうして話をしている時でも私たちを見据えて、不意打ちを警戒しているようです。

 流石に盗賊団の首領を名乗るだけあります。

 しかし、私はこの男の考えが気に入らないのです。

 自分だけが特別だと思っているこの男が。


 私は神様からチートとも呼べるスキルを貰いこの世界に転生してきました。

 普通なら私は選ばれた人間だと考えてもおかしくはなかったでしょう。

 しかし、フォレスの街の人達と関わるうちに、私は何も特別ではないと感じることができました。

 私の持っているスキルは確かにチート級ですが、それでも出来ないことはあります。そして、その出来ないことを簡単に行う人がいることも知っています。


 だからこそ自分だけが特別で、自分以外は格下であると言っている目の前の男が許せないのです。



「……止めても無駄そうじゃな。なら、存分に戦え」

「ありがとうございます」

「小娘が、調子に乗ってんじゃねえよ!」



 盗賊団の首領は私の事がよほど気に食わないのか、全力でバトルアックスを私めがけて叩き付けてきます。

 もう捕らえて慰み者にするという考えはないようです。

 しかし、小娘だと侮っているのでしょう。攻撃は一撃で決めるために全力で打ち込んできています。

 つまりは、避ければ残った体は隙だらけというわけです。

 だからこそ、ギリギリのところで首領の攻撃を避けます。

 その時に刀で相手のバトルアックスを受け流し、軌道をそらすのを同時に行います。


 これはかなり技術がいる技ですが、私の持っている〔武の才能〕のスキルと今までの戦闘経験のおかげで難なくこなす事が出来ます。

 そして、がら空きになった腹部を切りつけます。

 金属製の鎧を着ているため一刀両断とはいきませんが、深く切りつけられたためか血が溢れ出してきます。



「ッグ!このやろう!!」

「あなたはさっき『強者こそが正義』だと言いましたよね?」

「当たり前だろうが!気に入らない事があれば脅して言うことを聞かせる。それでも言うことを聞かねえなら、殺せばいいんだよ!」

「とんだクズですね、あなたは。なら私があなたより強ければ、私が正義なんですね?」

「ふざけるな!強いのは俺だ、お前じゃねえ!」



 自分の強さを信じすぎるあまり、今の状況も見えていない。

 これは、弱肉強食でもありませんね。ただの駄々をこねる子供です。



「なら、証明してください。今ここで」

「クソが。調子に乗ってんじゃねえっ!」



 今度は出鱈目にバトルアックスを振り回してきます。

 いや、ちゃんと私の腕や頭、首をいったところを正確に狙っているので、出鱈目ではありませんね。

 しかし、出血のせいか動きが鈍くなっています。

 さっきは武器をしっかりと扱えていましたが、今は武器に振り回されているような感じです。

 これは、もう終わりですね。



「さようなら」

「あ?」



 私はあえて真正面からバトルアックスを受け止め、そのまま受け流します。

 そして、その勢いのまま両腕を切り飛ばします。

 振った勢いが残っていたのかバトルアックスは数メートルは離れた壁に飛び、減り込みます。柄の部分に首領の両腕が残ったまま。

 そして、そのまま私は首領の首を切り落とします。

 首領は首は呆けた顔のまま胴体と別れを告げます。



「これで、終わりですかね。ディアさん」

「あぁ。そうじゃな。ボルスも終わったようじゃしな」



 ディアさんは刀に触れていた手を下ろします。どうやら私が不利な状況になったら助太刀に入ろうとしてくれていたようです。

 こうして、盗賊討伐は一先ず終わりを迎えました。



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